【6】

 「将斗君ってハロウィンの時いっつもコスプレして来てくれてたじゃん?」

 「うん、毎年やってたな」


 「すごく嬉しかったなぁ、あれ」

 「毎回大笑いしてたもんな」


 「うん、すごく励みになったよ」

 「トイレかどっかで着替えればいいのにな、あいつ」


 「ホントだよね。何もコスプレして来なくてもね、嬉しかったけど」

 「アホだよな、あいつ」


 「あはっ、面白かったよねぇ、あれ。私、毎年楽しみだったもん、〝今年は何かな〟って」

 「コナンの犯人とかな」


 「そうそう、黒い全身タイツ姿でね」

 「あと、ブックオフのキャラクター」


 「そうそう、白い全身タイツ姿でミトン手袋つけて本持ってね」

 「あと、クッパにやられたマリオとかな」


 「そうそう、あれは将斗君の代表作だよね」

 「マリオはベタだけど、腕に包帯巻いて、松葉杖まで使ってて、滅茶苦茶笑ったよな」


 「ホント可笑しかったよね、あれ」

 「あともう一つ何だっけ」


 「映画泥棒」

 「あっ、そうだ。ビデオカメラ被ってたやつか」


 「そうそう、あれもすごかったね。段ボールでよくあんなの作れるよね」

 「てか、いくらハロウィンとは云え、よくコスプレしながら電車乗れるよな」


 「コスプレしてる時は流石にタクシーじゃない?」

 「コスプレして電車に乗る事が恥ずかしいと思ってる奴はコスプレして来ないだろ」


 「あはっ、確かに」

 「タクシーだったら運転手がかわいそうだろ」


 「えっ、何で?」

 「変なコスプレしてる見知らぬ奴と二人っきりにされた運転手の気持ち考えろよ」


 「あはっ、確かに。コナンの犯人だと特に怖いね」

 「あいつは基本、羞恥心が皆無だからコスプレしながら電車とか乗れちゃうんだよ」


 「凌汰君達のコスプレも見たかったなぁ」

 「絶対嫌だ」


 「でも、毎年、将斗君一人だけってのが何か、シュールで面白かったなぁ」

 「そうだろ? 俺等もそう思って毎年断ってたわけ」


 「毎年誘われてたんだ?」

 「必死に誘われてたよ」


 「やっぱり流石の将斗君も一人じゃ恥ずかしかったんじゃない?」

 「羞恥心とかあんのかな、あいつにも」


 「将斗君って学生の頃もあんな感じだったの?」

 「悪さばっかりしてたよ」


 「えっ、グレてたの?」

 「いや、いたずらばっかりしてたって事」


 「ああ、そっちね。びっくりしたぁ」

 「あいつ、よく先生に怒られたよ」


 「へぇー、例えばどんな事して?」

 「メントスコーラとか」


 「メントスコーラ? 教室で?」

 「そう、あいつ、メントスコーラのパイオニアを自称してたからな」


 「あはっ、ホントにそうなのかな」

 「それはないだろうけど、俺も含めて誰も知らなかったからさ、クラスの皆が集まって大注目。都会から田舎に来た転校生みたいになってたよ」


 「あはっ、ウケる」

 「で、思いっ切りコーラが大噴射したところで先生に見付かって怒られたわけ」


 「あはっ、そりゃ怒られるよね」

 「で、YouTubeとかTikTokで誰かがメントスコーラやってんの見付ける度に怒ってた」


 「〝これ、俺のパクリじゃん〟ってよく云ってたよね」

 「毎日の様にメントスコーラパトロールしてたよな」


 「そうそう、してたね。他にはどんないたずらしてたの?」

 「清元っていう、すごい口うるさいオッサンの先生がいてさぁ、将斗が結構標的になっていちゃもんつけられてたわけ。〝髪切れ〟だの、〝ワイシャツのボタンは一番上まで閉めろ〟だの、〝目つきが悪い〟だの」


 「理不尽だね、ひどい」

 「で、腹いせに、清元と偽ってキモいラブレター書いて、島塚っていうオバサンの先生の靴箱に入れてた」


 「復讐になってんのかな、それ」

 「復讐の仕方があいつらしいよな」


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