【7】

 「で、どうなったの?」

 「次の日、将斗が島塚に怒られた」


 「えっ、何でバレたの?」

 「字でバレたらしい。あいつ、字汚いじゃん」


 「あはっ、確かに。将斗君の字って独特だよね」

 「〝あんなミミズがもがいてる様な字を書くのはあんたしかいないでしょ〟って云われたらしい」


 「あはっ、ミミズがもがいてる様な字って」

 「あとあいつ、チョーク塗りたくった黒板消しドアに挟めてクラスの奴を真っ白にしたり、座ろうしてる椅子を思いっ切り引いたり、浣腸したりしてた」


 「うわ、急に昭和初期」

 「あんな馬鹿ばっかりやってる生徒会長なんかいないよな」


 「えっ、将斗君って生徒会長だったの?」

 「あれ、云ってなかったっけ」


 「ホントに生徒会長だったの?」

 「うん、あいつ、生徒会長の挨拶とかスピーチの時、毎回笑い取ろうとしてたけど、尋常じゃなくスベってたよ」


 「何だか将斗君らしいね。どんな事云ってたの?」

 「ものまねとか、下ネタ入れたり」


 「下ネタは絶対ウケなきゃ駄目だよね」

 「下ネタでスベるって最悪だよな」


 「ものまねはスベったらそれはそれで面白そうだけどね」

 「大体、学校で下ネタってハイリスク過ぎるよな」


 「ホントだよ」

 「しかも一か八か系の下ネタじゃなくて、置きに行った系の下ネタでスベってたからな」


 「何、置きに行った系って。学校で許されるレベルの下ネタなんかないでしょ」

 「で、毎回怒られてた」


 「そりゃそうだよ」

 「でも、懲りずにまた下ネタ入れるわけ」


 「無駄に鋼のメンタルだね」

 「スベり過ぎて、スピーチって云うより弔辞読んでるみたいな空気になってたよ」


 「そりゃ、お葬式みたいにシーンとしちゃうよね」

 「で、大学の文化祭で毎年、修真と漫才やってたけど、毎年スベってたよ」


 「漫才? 修真君と?」

 「〝シューマサト〟っていうコンビ名でやってた」


 「〝シューマサト〟……。成程ね。〝シューマサト〟……。云いたくなるね、〝シューマサト〟……」

 「何年も前の時事ネタ入れたり、意味不明なギャグを唐突に入れたり、ギリギリのラインの下ネタ入れたりしてたよ」


 「また下ネタ入れたの? 何で懲りないの? 高校時代に痛い目見たのに。全然失敗から学んでないじゃん」

 「失敗を生かせって話だよな。ホント、滅茶苦茶つまんなかったよ」


 「てか、修真君が漫才やってたのが衝撃的過ぎるんだけど。あの大人しめの修真君が」

 「片っ端から断られて修真に行き着いたって感じ」


 「片っ端から? 修真君が第一希望じゃなかったんだ」

 「うん、第十二希望ぐらいじゃない?」


 「すごい妥協されてる」

 「俺等三人も誘われたし」


 「へぇー、誘われたんだ? まぁ、確かに、高校時代の惨劇を目の当たりにしたしやりたくないよね。修真君はどうしてオファー引き受けたんだろう」

 「五万円に釣られたらしいよ」


 「五万円? 高額じゃん。そんなにやりたかったんだ」

 「ずっと断られてたからすげぇ熱烈にオファーしてて、挙句にギャラ提示したわけ。で、皆は大ブーイング」


 「確かに、ギャラの事は最初から云って欲しかったよね」

 「で、それから毎年、文化祭が近くなると、将斗のオファーを蹴った奴等の逆オファーが将斗に殺到したわけ」


 「あはっ、そりゃそうなるよね」

 「でも、〝もう修真と契約したから〟っつって毎年修真とやってた」


 「気に入ったんだね、修真君が」

 「滅茶苦茶スベってたけどな」

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