【8】
「せっかくだから年替わりでやって四人制覇すれば良かったのに。大学も丁度四年間なんだし」
「俺は絶対嫌だ」
「五万円でも?」
「うん、嫌だね」
「人前に出るの得意でしょ」
「勝手が全然違うだろ」
「そうなんだぁ。てか、ホント、修真君が漫才って全然イメージ出来なぁい」
「あの修真がハイテンションで突っ込むわけ。最初の一くだりは普段のあいつとのギャップで大ウケだったよ」
「ハイテンションツッコミかぁ。全然想像出来ないなぁ、修真君のハイテンションツッコミ。フリが利いてるから皆笑うんだね」
「そう、漫才でウケる為に一年間、テンションをあっためてんじゃないかって皆に云われてたし」
「あはっ、だとしたらすごいけどなぁ」
「でも毎年、その最初の一くだりがピークなわけ。あとはただただ失速していく一方。ずっと下降線」
「あはっ、最初だけなんだ」
「段々、面白くなさが逆に面白くなってきたよ」
「見たいなぁ、二人の漫才」
「五人でカッコ良く決めた後に壮大にスベりやがって」
「あっ、五人は五人でやったんだ?」
「うん、せっかく盛り上げたのに台無しだよ」
「世界観が崩れたって感じ?」
「そう、もう事故だよ、事故」
「せめて順番が逆だったら良かったのにね」
「ホントだよ。最悪な締め括りだったよ」
「二人の漫才が大トリだったんだ」
「そう、何故か毎年」
「毎年?」
「うん、毎年、後味が悪いわけ」
「あはっ、確かに後味悪いね、最後にスベられたら」
「俺等の反対を押し切る熱量と漫才が釣り合ってないんだよ、毎年」
「やっぱり皆、止めてたんだ?」
「止めるよ、そりゃ、あんなスベってたら。でも、今回は大丈夫って毎回云うわけよ」
「で、スベるんだ?」
「そう、その自信はどっから来るんだか」
「見たいなぁ、二人の漫才」
「ホント酷かったよ」
「てか、修真君、優しいね。皆が必死に止めるぐらいスベってるのに毎年一緒に漫才やってくれるなんて。それとも、将斗君に洗脳されてった感じ?」
「いや、あいつは五万円が原動力で漫才やってただけ。優しさでも洗脳でもないよ」
「五万円欲しさにハイテンションで突っ込んでたのかな」
「銭ゲバだからな、あいつ」
「えっ、そうなの?」
「知らなかった? あいつ、金の為ならなんだってするよ」
「えっ、そうなの?」
「行列代行頼まれたり」
「行列代行?」
「うん、ビリヤードサークルの先輩に頼まれて、新しいゲーム機の発売日に朝から並んでたらしいよ。ゲーム機代と報酬の五千円持って」
「んー、もうちょっと欲しいな、私なら」
「妥当じゃないか」
「だって、朝早く家出て、長時間拘束されるんでしょ? もうちょっと欲しいよ」
「じゃあ、いくらならやるんだよ」
「やっぱりゼロもう一個つけてほしいね」
「高っ。自分の分も買えるな」
「あはっ、確かに。買えちゃうね」
「あとあいつ、年賀状代行とかもやってたよ」
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