【3】
「へぇー。どんな人なの?」
「私生活では意外とがっつり奥さんの尻に敷かれてるらしいよ」
「へぇー。あのシブい感じで? 意外だねぇ」
「〝カミさんと僕のパワーバランスは十対ゼロ。カミさんが十で僕がゼロ〟って云ってた。意外だよね」
「ふふっ、十対ゼロって。完全なるかかぁ天下なんだね。〝僕とカミさん〟じゃなくて〝カミさんと僕〟って云うのがいかにもだね」
「確かに。〝カミさん〟を先に云う人って恐妻家かジェントルマンのどっちかって感じだよね。偏見だけど」
「てか、そもそも一人称が〝僕〟なのが意外だよね」
「そうそう。あのシブい感じなら〝私〟って云いそうだもんね」
「そうそう。あとねぇ、お酒は一切飲まいし、煙草も一切吸わないんだって」
「意外だねぇ、これまた」
「意外だよねぇ。イメージ的に絶対、ウィスキーと葉巻だもんね」
「ヴェリー酋長もシューマッハ総監ハードボイルドだもんね。あっ、〝ストックホルムな恋〟ってどうなったの? お蔵入りになっちゃった?」
「んーん、塚野美羽華ちゃんが代役みたいよ」
「へぇー。成程、美羽華ちゃんかぁ。ぴったりだね。美羽華ちゃんで良かったぁ。納得の人選」
「結構流行ったみたいだよ、あのドラマ。私は観られなかったけど」
「そっかそっか」
「刈谷倫斗さんの演技も好評で、見事にイメージを取り戻したらしいよ」
「あんな噂流れてたのに、良かったね」
「実際はどうなんだろうね。デマだったら可哀そうだよね。すごい叩かれたみたいだし。あっ……、ごめん」
「んーん、いいの」
「美羽華ちゃんって云ったら、やっぱり〝ちぐはぐ時雨〟だよねぇ」
「あれねぇ。あのドラマはホントに良かったよねぇ」
「美羽華ちゃんの演技が素晴らしかったよね」
「うん、素晴らしかったぁ。最終回の泣きの演技がすごかったぁ。同世代としてちょっと、嫉妬を覚えたもん」
「すごかったもんねぇ。美羽華ちゃんとは会った事ってあるの?」
「うん。お仕事で何回か一緒になったことあるよ。ちっちゃい頃はよくオーディションで一緒になってたし」
「美羽華ちゃんも子役上がりだったの?」
「うん。私と一緒で子役の頃は、クラスの後ろの席とかのちょい役で何回か出たぐらいで、本格的に出始めたのは高校生の頃ぐらいからみたい」
「〝太陽と向日葵〟の時からだよね。美羽華ちゃんが世に知れ渡ったのは」
「そうそう。あの時、美羽華ちゃんとは一緒のシーンなかったから全然喋れなかったんだよねぇ。台本合わせと打ち上げの時に見掛けたぐらい」
「浅草と名古屋だったもんね」
「あれ、ホントに浅草で撮ってたんだよ」
「そりゃそうでしょ。疑ってないよ」
「あと、美羽華ちゃんとは番宣とかでも一緒になった事あるし。あの、ほら、ドラマごとに別れてクイズとかゲームで競うやつね」
「ああ、改変期にやってる特番ね」
「そうそう。私、ああいうの緊張して駄目」
「私も。一堂に会してる感じがどうもねぇ。ちょいちょいバラエティに呼んでもらえるけど、〝うわぁ、芸能人だぁ〟ってなっちゃうもん、未だに」
「なるよね。周り皆芸能人だもんね。私、中浜ナナと共演した時、すごい緊張したの」
「えっ、中浜ナナさんと共演してたの?」
「そう、ドラマでね。ホント、貫禄の塊だったよ」
「へぇー、すごいね、中浜ナナさんと共演なんて。親子役?」
「んーん、私が受付嬢で、中浜ナナさんはお客さん役でゲスト出演」
「あっ、思い出した。〝格差な恋〟でしょ?」
「そうそう。新河玄さんが社長で、春山梨美ちゃん新入社員のやつ」
「あれねぇ、中浜ナナさんがゲスト出演って贅沢だよね」
「贅沢だよね。私との絡みは二、三回ずつラリー交わした程度だけど、すごい綺麗で緊張したぁ」
「オーラすごいよね、中浜ナナさんって」
「えっ、中浜ナナさんと会った事あるの?」
「んーん、ないよ」
「オーラ解んないじゃん」
「画面越しからも伝わるよ、中浜ナナさんのオーラは」
「いや、全然違うから、生中浜ナナさんのオーラは。ホント、ヤバいから」
「へぇー。やっぱ、生中浜ナナさんは違うんだぁ」
「当たり前でしょ。全然違うよ。ポンカンといよかんとはっさくぐらい違うよ」
「まぁまぁ似てんじゃん。てか、なんで三つなのさ」
「あと、〝セピア色グラフィティ〟の時は緊張したぁ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます