【11】

 「まぁ、流石にパパには負けるけど」

 「あと、小さい頃も怖い夢見たとか云ってよく泣いてたし」


 「そりゃ、小さい頃だもん。怖い夢見たら泣くでしょ」

 「あと、ソフトクリームの上が落ちて大泣きした事もあったし」


 「えっ、覚えてない」

 「私と二人でママにお金貰ってアイス買いに行って、莉那がお店出てソフトクリームの蓋開けた直後に上のとこを道路に落としたの」


 「えっ、そんな事あったっけ」

 「うん、丸ごとべとって」


 「そりゃ泣くよね、小さい子が、買った直後のソフトクリームの上のとこ落としたら」

 「小さい子っていうか、そん時、莉那、小二だからね。ソフトクリームの上のとこ落として泣いていい歳じゃないでしょ」


 「いや、泣くでしょ、小二がソフトクリームのの上のとこ落としたら」

 「いや、ソフトクリームの上のとこ落として泣いていいのは五歳まででしょ」


 「知らないよ、そんなルール。てか、私、ホントにソフトクリームの上のとこ落としたの? 全然覚えてないんだけど、そのエピソード」

 「落としたよ。で、私が半分あげるまでずっと泣いてたんだから」


 「その節はどうも」

 「あと、どっか出掛けると大体迷子になるし」


 「そうそう、よくはぐれてたよね、私」

 「そうそう、じゃないよ、全くぅ。水族館とか動物園行っても莉那の捜索に大半が潰れてたんだからぁ」


 「それは申し訳ない」

 「で、一時間も二時間も捜し回って、やっと見付けたら、泣きながら私に抱きつくわけ。いっつも。泣きたいのはこっちなのに」


 「世話の焼ける子だったんだね、私」

 「デパートとか行っても、莉那の捜索班と買い物班に分かれてたんだから」


 「班って、どう振り分けてもどっちか一人じゃん。三人なんだから」

 「あんたが突っ込むな」


 「はーい」

 「ママも結構方向音痴だよね」


 「確かに。私の方向音痴はママに似たんだね」

 「おっきいお店に行った時はママもあたふたしてるよね」


 「そうそう、地図読めないし」

 「運転してる時、ずっとナビに抗ってるよね」


 「初めて行く場所は大体途中で投げやりになるよね」

 「そうそう、昔は目的地に辿り着くのに本来の所要時間よりかなり余計に掛かってたよね」


 「すごい遠回りしたり、ぐるぐる同じとこ回ったりするもんね」

 「ママの車に乗ると疲れるよね」


 「そうそう、私達がナビ見て軌道修正しないといけないからね」

 「教官みたいね」


 「そうそう、ママが運転してる時の教習所感ったらないよね」

 「ママ、運転してる時、いっつもおどおどしてるもんね」


 「確かに。パパは運転上手だよね。スムーズで滑らかな感じ」

 「いや、パパが上手なんじゃなくてママが下手なんだよ」


 「そっか、パパは普通なのか」

 「そう、パパは普通」


 「云われてみればそんな気がする」

 「むしろ下手よりだよ、パパは」


 「えっ、そうなの?」

 「うん、下の上と中の下を行ったり来たりって感じじゃない?」


 「そうなの?」

 「パパの運転技術はママに霞んでるだけ」


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