【2】

 「そうそう、あと、みんなでうみにいったりして、たのしかったよね」

 「おまえ、ずっとおよいでたよな」


 「うん、わたし、およぐのだいすきだもん。あんた、ずっとこわがってたよね」

 「こわがってねぇよ」


 「こわがってよ。なつなのにぶるぶるふるえてたじゃん」

 「おれにとってはさむかったんだよ」


 「そんなわけないでしょ。てか、おふろの時だってすごいこわがってるじゃん。なんでこわがるの? うみだって、おふろだってあんなにきもちいいのに」

 「いや、こわがってねぇよ。おれはみずがきらいなんだよ」


 「だから、こわがってるからきらいなんでしょ?」

 「おまえだって、かみなりなったらこわがるだろ」


 「かみなりはこわがるでしょ、ふつう」

 「まぁ、ひであきもこわがってたしな」


 「たしかに、こわがってたね、おおごえだして。でもさぁ、ありさが、ひであきにであってよかったよね。ありさがたのしそうだもん」

 「そうだな。何人かうちにきたけど、ひであきがいちばんいいやつだよな」


 「わたしも、ひであきがいちばんすきかも。ふたりはいま、おしごと?」

 「ありさ、あかんぼううむらしいぞ」


 「えっ、あかちゃんうむの?」

 「うん。どんどん、ありさのはらがでっかくなってて、何日かまえから、にゅういんしてる。おれ、ありさとひであきから、こもりまかされてんだ」


 「ありさが、おかぁさんかぁ。りっぱになったね」

 「で、あさ、ひであきのでんわがなって、もうすぐうまれるらしくて、ひであきはあわてて出ていったぞ」


 「へぇー、もううまれたのかな?」

 「どうだろうな。ふたごらしいぞ」


 「えっ、ふたご?」

 「なまえは、たみおと、かずとし、だってよ」


 「あれ? ふたりとも、まえにうちにきた人とおんなじなまえじゃない?」

 「そうなんだよ、へんだよな。ふたりでかんがえてたよ」


 「へぇー。あいたいなぁ、ありさのあかちゃん。ありさにも、ひであきにもあいたいし」

 「ところで、おまえ、今はもう好きなだけあるけるのか」


 「うんっ! いっぱいあるけるよっ! ほらっ! こんなかんじっ!」

 「すごいな、おい。そんなに走り回れんのか」


 「あと、こんな事もできるし」

 「おっ、とびはねたりもできるのか」


 「そうなのっ! 昔に戻ったみたいでしょ?」

 「ホントだな。ずっとねたきりだったのにな」


 「そうっ! ずっとねがえりもうてなかったからさぁ、あの時はつらかったけど、今は前みたいにあるけるようになってすっごくうれしいの」

 「〝あるきたい、あるきたい〟ってずっといってたもんな」

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