【3】

 「ずっと、ありさをさんぽにつれてってやれなくて、つらかったよ」

 「おれも、あるきたがってるおまえをみるのもつらかったよ」


 「ごめんね、ありさのさんぽ、まかせっきりにしちゃって」

 「なぁに、気にすんな。おれ、何回もさぼってんだから」


 「あっ、そうだったね。あんた、ふゆのさむい日はぶるぶるふるえて、いつまでもあるかなかったもんね」

 「おまえ、ふゆの日はいっつもはしゃいでたよな」


 「わたし、ゆきだいすきだもん。ゆきの上あるくのたのしいからさ、ゆきがつもったらすごくうれしいの」

 「よく、ゆきにかおうずめてたよな」


 「ゆきまみれになるのすきなの」

 「わからないなぁ、ぜんぜん」


 「あんた、これからはふゆもおねがいね、さんぽ」

 「おう、まかせろ。これからはちゃんと、ゆきつもってても、さむくても、おれがありさをさんぽにつれていくから、しんぱいすんな」


 「ホントにぃ?」

 「ホントだよ」


 「おねがいね? ありさのさんぽ」

 「おう、まかせろ」


 「ありさ、いっつもわたしに、〝ぜったいによくなるからね〟っていってたじゃん?」

 「おまじないみたいに、しょっちゅういってたよな。〝今ちょうしわるいだけだから、そのうち、よくなるからね〟って」


 「もう、よくならないから、こころがいたかったんだよねぇ」

 「たぶん、ありさもわかってたんじゃないか」


 「えっ、どういうこと?」

 「わかってたけど、みとめたくなかったんじゃないのか」


 「そっかぁ、いっつも、なきそうなこえでいってたもんね」

 「〝だいじょうぶ〟って、じぶんにいいきかせてたんだろうな」


 「そっかぁ」

 「毎日ないてたぞ。〝もうこれからはじゆうにあるけるから、ほっとしてるぶぶんもあるけど、でも、つらい〟って。しばらく、ぬけがらみたいになってたし」


 「そうなんだぁ。わたしは今、おともだちとあそんだりして、たのしくくらしてるから、だいじょうぶだよって、ありさにいっといて」

 「おう、わかった。いっとくよ」


 「ひであきのこともたのんだよ」

 「おう、まかせろ」


 「ありさのあかちゃんの子もりも、たのんだよ」

 「まかせろ」


  「つぎにきたときにあえるの、たのしみにしてるね。ありさにも、ひであきにもあいたいし」

 「またこいよ」


 「うん、またくるね。もし、ありさがわたしにきがつかなかったら、ありさにおしえてあげてね?」

 「おう、わかったよ」


 「あんたがこっちにきたときは、わたしのおともだち、しょうかいするね」

 「おう、たのしみにしてるよ」


 「げんきでね」

 「おう、げんきでな」


 「ありがとね、ぽんきち」

 「おう、ありがとな、りり」



 「どうしたの、ポン吉? 尻尾なんか振って。あっ、綺麗だね、お日様」


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いつかまた、光の幕を伝って。 来栖 煌羽 @kk-op-ki

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