【8】

 「そう云えばパパって、私達の誕生日は毎年、学芸会とか運動会とかのビデオ流してたじゃん?」

 「あったね」


 「あれ苦痛だったね」

 「苦痛だったね」


 「何周もしてたもんね」

 「そうそう。で、毎回大泣きだったもんね」


 「よく同じ映像であんなに泣けるよね」

 「ホントだよね」


 「私が徒競走で思いっ切りズッコケたところなんか何度観た事か」

 「ああ、あれね。あれは見事なズッコケっぷりだったよね。ホント、毎回笑ったなぁ」


 「酷ぉい。あれ、ゴール手前でズッコケて負けたから暫く皆から責められたんだから」

 「完全に、昔の四コマ漫画の四コマ目のズッコケ方だったよね」


 「酷ぉい」

 「で、パパはそれ観て何故か泣いてたよね」


 「あっ、そうそう、〝頑張れー、頑張れー、莉那、頑張れー〟ってね。あれで泣くのパパぐらいだよね」

 「あと、ダンスは二人共、絶望的だったよね」


 「そうそう、二人揃ってセンスゼロ」

 「パパ譲りだろうね。パパもママも踊ってんの見た事ないけど、パパ、絶対ダンス下手じゃん」


 「確かに。絶対パパのⅮNAだよね」

 「ドジだもんね、パパ」


 「ホントにドジだよねぇ」

 「不器用だよね」


 「〝ド〟がつく程の不器用だよね」

 「あんまり〝不器用〟に〝ド〟がつくイメージないけどね」


 「前、DIY始めようとしたけど全然駄目ですぐ挫折したよね」

 「そうそう、ただ木材を破壊して終わったよね」


 「ママがすぐに諦めて棚買いに行ったもんね」

 「薄々そんな予感はしてたけど、予想を遥かに下回る不器用っぷりだったよね」


 「私達があんなに止めたのにね。あと、料理も全然駄目だったよね」

 「そうそう、玉子焼きは殻だらけだったし」


 「ハンバーグは丸焦げだったし」

 「チャーハンはねちゃねちゃしてたし」


 「あれは酷かったねぇ」

 「ダンス下手なパパがすごい想像できるよね」


 「うん、あんなドジで不器用な人がダンスだけは出来る訳ないもん」

 「そう云えばさぁ、パパ、前に一回、私の誕生日だったかな、ママが出産する時のビデオ流そうとしてたよね」


 「あったねぇ、そんな事。〝茉耶が産まれる瞬間のビデオだぞー〟ってね」

 「ママ、必死に止めてたよね」


 「そりゃ、必死になるよね、両家のお爺ちゃんお婆ちゃんがいるんだもん。私もママの立場なら絶対に嫌だぁ」

 「私も嫌だぁ。ママならいいけど、パパには見られたくないし、旦那さんの両親なんかあり得ないし」


 「無神経過ぎるよね、パパ」

 「ところでさぁ、パパとママって何処で出逢ったんだろう。知ってる?」


 「あれ、聞いた事なかったっけ、二人の馴れ初め」

 「うん、聞いた事なぁい」


 「二人が大学生の頃に合コンで知り合ったらしいよ」

 「へぇー、そうなんだぁ」


 「で、パパがママに何回も何回も猛アプローチしてママが折れたんだって」

 「てか、ママって合コンなんか行く人だったんだぁ。意外」


 「全然興味なかったけど、人数合わせで仕方なく行く事になったんだって」

 「成程ね、それなら納得」

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