【8】

 「卒業式だよ、卒業式」

 「ああ、答辞な。あれはヤバかったよな。泣きじゃくちゃって全然何云ってっか解んなかったもんな」


 「しかも序盤中の序盤だったもんな」

 「出だしの〝うららかな〟の時点でもう涙声だったもんな」


 「ただでさえ聞き取れねぇのにな」

 「アッチェレランドとデクレッシェンドに涙声が加わったら余計に何云ってるか解んねぇよな」


 「アッチュレ? ディクレ? な、何? 何て?」

 「てか、あいつよく生徒会長やってたよな」


 「肩書きだけだよ。いっつもマーミヤンがあいつのケツ拭いてて、実質、マーミヤンが一番働いてたらしいし」

 「やっぱな」


 「しかもちょいちょい学校サボるし、寝坊で遅刻するし」

 「生徒会長なのにな」


 「そんな奴が答辞読んだと思うとムカつくよな。しかもあんな泣きじゃくって」

 「何の涙だよって話だよな」


 「生徒会長やってたとは云え、あいつに答辞やらせるなんて、なかなか攻めた人選だよな」

 「チャレンジャーだよな、先生も」


 「ホント、選考基準、生徒会長ってだけだよな」

 「始業式の有様を見たのによくあいつにさせるよな、あんな大役」


 「不自然なぐらいほぼ毎回定例会の途中にトイレ行くし、よくプリント失くすし、あくびしてたらしいな」

 「よくマーミヤンに怒られてたよな」


 「どっちが会長なんだかって感じだったよな」

 「大分序盤から立場逆転したよな」


 「てか、始めから解り切ってただろ。あいつの性格上、人の上に立つのに向いてねぇんだよ」

 「性格っていうか、それは技能じゃないのか」


 「まぁ、そうだな。そういう性格だからしょうがないで片付けていいレベルじゃないよな。社会に出たら大体の環境でリーダーシップは必須能力だからな。人を引っ張る力がある奴は社会で通用する力もあるわけよ」

 「社会に出てねぇだろ、お前」


 「まぁな。内定貰ってたのに残念だよ。ホント、許せねぇ。ところで、マーミヤンもフラれたの知ってるか」

 「あいつもか。誰に」


 「緋山」

 「へぇー、緋山か」


 「緋山って生徒会の書記やってたろ? 一緒に生徒会やってくうちに惚れて一ヶ月ぐらいでコクったらしい」

 「で、フラれたわけか。その後の生徒会活動、地獄だっただろうな」


 「序盤も序盤だからな。死ぬ程気まずかっただろうな」

 「傷心中だしあいつもサボりたかったけど会長がサボり魔だからサボるにサボれなかったんだろうな」


 「よく耐えたよな、あいつ」

 「ホントだよな」


 「俺なら無理だわ、絶対」

 「自信あったんだろうな」


 「てか、あの決勝はマジで悔しいわ」

 「激戦だっもんな」


 「あと一点だったのによう」

 「ずっとデュースだったもんな」


 「長期戦だったな、あれは」

 「ホント、ドラマみたいだったよな」


 「主役は俺等じゃなかったみたいだな」

 「てか、お前って、小っちゃい頃、運動音痴だったよな」


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