第49話 消えないボカシ

学年末テストを無事終え、肩の荷が俺達は三月のやわらかな日差しを浴びながら昼の時間を楽しんでいた。


「仲田と二釈さ、一枚撮るからこっち向いて。」

「おいクラス長、どうしたんだよ最近。」

「ん、なにがだよ?」


最近、クラス長は何かにかこつけて使い捨てカメラで写真を撮る。

飯の時間や授業終わり、学校の帰り校門の前などとにかくいろんなところでとにかく使い捨てカメラを取り出しては写真を撮る。


「いやそのカメラ持ちだして、先生も何も言わないし。」

「...え、なにがだよ?」

「なんでそんな写真急に撮り始めたんだ?」

「...なーにーがーだよ。」

「そのなにがだよってやつやめろ!」


パシャ

また一枚写真を撮った。


「まあ...あと少ししたらわかるよ。」

「なんだよそれ。」


ここ最近、クラス長には珍しく男女関係なく積極的に話しかけに行って何かをメモしてはこの使い捨てカメラで写真を一枚撮っている。

でも全貌は一切話さず、クラス長にしては珍しくずっとぼかして誤魔化して流してくる。


「まあ仲田もよく言うけど、青春って大事だからさ。」

「は、はぁ。」

「一年最後にみんなとより深く仲良くなりたいってな。」

「クラス替えないから二年でも仲良くできるじゃないか。」

「......ほら、思い付きを先送りにして良かったことなんてないだろ?思いついたら行動しないとさ。」


クラス長.....もしかして転校するのか?

そうだ、よくよく考えたら少し前に一緒に帰れてない時間があった......!


瀧田と二人で帰りを促していたから...次のクラス長をどうするか的な話とかいろんな手続きを見られないところでやっていたんだろう。


にしてもよくそんないつも通りの顔でいられるなコイツ.....。

まあ、きっとそれも俺たちが心配しないようにとクラス長なりの気遣いなんだろう。


「......どうした、仲田。」

「いや、なんでもない...一緒に三人で写真撮ろうぜ。」

「あ、たしかに自撮りしてなかったな。」


クラス長はヘヘッと言いながら笑うと、俺と肩を組み自撮りをした。

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三日後、いつも通り六時間目の退屈な六澤の授業が始まる。


「はいじゃあ授業を始める前に長暮、前へ。」

「...はい。」


クラス長はガタッと立ち上がり、強い一歩を繰り返しながら教卓の前に立つ。

「えーみなさん、最近カメラを沢山回してたと思います。」


この雰囲気と空気感......嫌な予感が的中しそうだ。

「ていうのも実は少し裏で担任と瀧田さんと話していたのですが。」


...だめだ、涙が出そうだ。

でもアイツは俺らのために平然を装ってたんだ、俺だけ泣くなんてそんなことは出来ねえ。


「......なんか、モザイクアートを作ろうって。」


.......え?


「ということで一年の最後、六澤先生となんかやりたいって話になったので最近いっぱい撮った写真で各々に聞いてメモした好きな食べ物のモザイクアートを作りました!」


クラス長はジャーンと言いながら楽しそうな表情で自分の好きなミートソーススパゲッティのモザイクアートを見せる。


「えーっとじゃあ名前呼んでくから遊部君から順番に取りに来てください!」


え、なに転校無い感じ?

あ、え、これ思ってたの俺だけ?


「なあ二釈、クラス長転校する雰囲気出てなかった?」

「え、なに言ってんだ仲田.......。」

「あ、え、マジで俺だけ?」

「多分アイツ転校するなら真っ先に言うよ.......。」


え、俺がアイツの言葉を大きく受け止めすぎてたの?


明らかになんか転校する雰囲気あったよな。

...それとも後で言うのか?これ配り終わったら言うのか?


「おーい仲田!早く取りに来て!」


モヤモヤが止まんなかった俺は急いで席を立ちクラス長の元へ駆け寄る。


「はいチキンバーガ...ってなんで泣いてんの?」

「クラス長....転校しない?」

「え、なにがだよ、する訳ねえじゃん。」

「.....あぁ、良かったあぁぁぁ。」


安堵と間違えてた恥ずかしさで瞼に浮いてた涙がこぼれてしまった。

モザイクアートは良いから恥ずかしい俺の顔にモザイクをかけてください。
















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