第25話 カンバンサン(文化祭編#3)

ガンマンイラスティック選手権が行われている裏側で彼らもまた、仕事を始めていた。

「クラス長、俺なにやればいいのー?」

「あ、えーっと遊部くんは...」


「私はなにするの!」

「あ、えー柴北さんちょっと待って!」


「明日の時間割変更なんだっけ?」

「仲田くん...じゃねえや、関係ない話挟むな!」


クラス長というネームバリューに五人は全体重を預けられていた。

看板チームに必要なものはもちろんダンボール。

入り口の上に貼りつけるアーチ状の看板と、プラスアルファなにかパネルのようなものを作りたいということでクラス長は持ってくる人を二人決める。


「じゃあと遊部くんと仲田にしようかな。」

「おっけー、行こうか遊部あそべ氏。」

「いっちょやったりますか仲田先生。」


関わるのは今日が初なのにもかかわらず、二人は持ち前のコミュ力で颯爽と教室を出る。

そんなノリ任せチームを横目に、残りのメンバーでパネルの構想を考える。

「あっ尾辺くん、手上げてる。」

「はぃ、いちど黒板にアーチを描いてみるのはどうでしょうかー?」

「おー確かにね、そうしようか。」


クラス長は腕を大きく伸ばしながらアーチの形を黒板に描き、中に"射的"という文字を入れる。

「ちょっと余りが出来るな、どうしようか。」

「なんか左に一言添えてみたら?」


柴北はそう言って立ち上がるとアーチの余りに文字を書き入れていく。

「外れたら全額返金!」

「嘘かくなよ!信じたらどうすんだよ!」


下唇を突き出して席に戻る柴北と入れ替わりで尾辺が立ち上がると、また左側に一言を添える。

「普通に銃刀法にかかっていますぅ。」

「かかんねえよ!ただの割り箸鉄砲だぞ!」


二人の軽いノリで始めたボケの連鎖によってだんだん黒目の動きが忙しくなってくる一人の生徒


「伊須さん!マジで乗らなくていいから気にしないで!」

「けどもうそろそろ結果残さなきゃ...!」


必死になりながら頭を働かせるが、残酷にも時間は過ぎていく。


「ただいまーっと。」

「え、二人早くない?」


遊部は両手で大きな一枚のダンボールを抱え、仲田は使えそうな小物の入った段ボールを二段抱えて持ってきた。


「仲田っちの足で一瞬でしたわ。」

「遊部っちょの運ぶ力も凄かったっちょ。」

「もう親友の領域じゃん。」


そんな会話をしながら机をどかし、広くなった空間に広げた大きなダンボールになぜか少しだけクラス内に歓声が沸く。

「とりあえずアーチ状に切るために下書きするか。」

「俺やるよ。」


遊部は親指を立て片目で空間にアーチを想像すると、一度頷いて鉛筆を取り出した。


「もう職人じゃん。」

「遊部っちょ器用らしいのよ。」

「まあ、公民館のイベント手伝いとかでこういうのよく作ってたんだよ。」


そう言いながらカッターを取り出して上から綺麗に切っていくと、下書きから一切はみ出ることなくお手本のような看板を作り上げた。


「クラス長、もうこれでよくない?」


「ダメだよ、ただの綺麗な段ボールだからそれ。」

仲田は柴北のように下唇を突き出し、自分の持ってきたダンボール箱を開封するやいなや大きなマーカーを大量に取り出す。


「クラス長、とりあえず白色に塗る?大きい紙巻く?」

「あー、塗んのめんどくさいし紙巻くか。」

「バカ野郎!」


クラス長の怠惰的な発言に仲田は白のマーカーペンで思いっきり小突いて黙らせる。


「面倒ごとすんのが文化祭委員の面白い所だろ!」

「まあ、そうだけど...じゃあ聞くなよ...。」


みぞおちをさすりながら立ち上がったクラス長は軽い謝罪をして白のマーカーを取り出した。


「あとな、大きい紙なんてねえんだよ!!」

「本当に聞くなよじゃあ!!」


クラス長はみぞおちを小突き返し、うつ伏せになった仲田はその勢いのまま白色で塗り始めた。


これから始まる看板制作、六人は順調に進ませられるのだろうか。


「...ねえ、伊須ちゃんどうしちゃったの?」

「遊部さん、どうし...」

「射的の横...射的の横...」

「まだ考えてたのかよ!!もう終わりだよ!!」


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