第24話 ガンマンイラスティック選手権 (文化祭編#2)

「さ、なにを描きます......?」

全く関わりの無い四人は、くっつけた四つの机に向かい合わせて座る。

二釈と白佳、宵川と湯瑠川のそれぞれ男女コンビにとりあえず分かれ、一応テーマと世界観だけ決めようと話し合うことになったらしい。


「射的だから、なんかガンマンみたいなキャラとかいたらいいけど......。」

「...そうだな。」

「そ、それがいいかもですね。」


物静かなグループなため、珍しくも二釈が回す担当になっている。

このグループは良くも悪くも意思がないので、誰かが喋ればその通りにスルスルとことが進んでいく。


「えっと、なんかそれぞれキャラ描いてみます......?」

「ガンマンイラスティック選手権しましょうか。」


宵川はそれっぽいネーミングの選手権を口に出しながら自分のメモ帳をちぎると、四人にそれぞれ配った。


「既存のキャラとかパロディは控えようか。」

「オリジナル...わたし描けるかな。」


白佳と湯瑠川はすぐにシャーペンをノックして描き始め、二釈と宵川は頭の中でまずイメージをし始める。


「お祭りとパン屋の棚の三段目は治外法権ですからね。」

「パン屋に仕掛けるなよ......。」


宵川はハッとしてイラストを描き始めると、二釈は周りのスピードに焦り一気に描き始める


「..............。」

黙々と書き進める二釈、実はイラストが描けるわけではない。

なんとなくポスターの方が楽かものイメージでこっちのグループに入ったが、全然イラストは描けない。

なので誰よりも先にイニシアチブを取りに行って、あくまで審査する側みたいな雰囲気でいこうと心に決めていた。


「うーん、これって別にモンスターとかでもいい?」

「うん、私も人ではないよ。」

「私は人だけど...大丈夫かな。」


人型、モンスター、二釈はそんな次元に立っていない。

彼らがイラストだとしたら俺は文房具屋の試し書きだとだんだん心が押しつぶされそうになってきた二釈はヤケクソになりながらイラストを描き始めた。


「...よし、ここはこうして。」

こんな感じで余裕感を出している宵川だが、彼女もまたイラストが描けるわけではない。

メモ帳の準備や会話を仕掛けてくる感じで余裕感を見せているが、これは自分だけ上手くなくてもそこまでの会話の雰囲気やセンスある風の上手い風にごまかそうという作戦である。


「なんか...あれれ。」

まあなんとなくさっきからの雰囲気から分かると思うが、湯瑠川も描けない。

上手く描けるのはウサギの顔だけ。

頑張って人型に挑戦しているが、服はカチカチな真っすぐ線で飛び出ている腕はきんぴらごぼうくらい細い。

ホラーゲームの小さい子が描いた設定の怖いイラストみたいな感じである。


「よし、俺は描けたぞ。」

「「!?」」

白佳のスピードに対し、後を追うように書き進めていく三人。


「えっと、誰から発表します......?」

「じゃ、俺から行こうか。」

「いや白佳くんは、最後がいいとおもいます!」

「たしかに湯瑠川さんの言う通りかも、なので宵川行きます!」


宵川は一番最初に机の上に紙を叩きつけ、見えたイラストをみて三人は目を丸くした。


「えっと...これは.......。」

「パンのガンマンで、名前は」

「あーだめだめ!」

湯瑠川は叩きつけられたその紙をサッと拾い上げると、名前を発そうとする宵川の口をその紙で強く塞ぐ。


「イラストもアウトだし、名前もきっとアウトだし。」

「そういうの無しにしようって言ったじゃない......。」


一旦心を落ち着かせ、次の準備をし始める三人。


「次俺行っていいか?あんま自身ねえんだけど。」

「待て...俺が行く......。」

「...わかったよ。」

強引に巨体の圧と喋り方でイニシアチブを奪い取った二釈は、ゆっくりと紙を真ん中に置きイラストを提出する。


「こいつの名前はピストリュー・ピストリア.......。」

「名前はいいんだけど、ピストルしか描いてなくない?」

「.........コイツの名前は」

「もういいよ!次!」


酷く落ち込む二人を横目にする白佳に上目遣いをして、先攻をもらおうとする湯瑠川。

「...いい?」

「ま、まあ好きにしろよっ。」


あっさりその雰囲気に負けた白佳の目の前にそっとイラストを置く。

「え、えーっと。」

「ごめんなさい、名前とかきめてなかった。」

「いや、そこじゃない。」


白佳は三人の紙をそっと横にずらし、自分のイラストを置いた。

「いやごめん、俺もみんなの事言えるほどのイラストじゃねえけどさ...。」

「「うっま!!!」」


深くかぶったテンガロンハット、少しだけボロついたスカーフを巻いた少年はホルスターから銃を取り出そうとしている。

...という光景が一瞬で分かるそのイラストにクギづけになった三人は驚いた表情で顔を見合わせてわけもなく大きくうなずいた。


「じゃあ俺と白佳様、宵川と湯瑠川チームで進めますか......。」

「ずるいです!」

「四人でやったらいいじゃないか!」

「お前ら落ち着け!」


三人の事をまとめようと必死に動く白佳を中心にポスター作りがとうとう始まった。


「...どうしたんだ?クラス長。」

「いや、白佳君の顔がまんざらでもなさそう過ぎたから。」

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