第23話 カラフルスクランブル (文化祭編#1)

授業を終え、久々のクラス委員会へ向かう長暮と瀧田。


「久々で緊張するね、クラス長。」

「おう、なにされっか分かんねえしな...。」


前回受けた辱めを思い出したクラス長は、上手く表情を作れないままクラスに入っていった。


「失礼します...。」

「あ、また最後かも...?」


余計なことを言う瀧田を制止しようとフッと睨もうとするが、委員会担当の見栄山と目が合いニヤリとされたクラス長はおとなしく席に着いた。


「はい、じゃあ長暮君号令。」

「はい...。」


慣れない挨拶を終え、話のフェーズに入る見栄山。

遠くを見るとまたあの時の三年生と目が合った。


「という感じで文化祭準備を明日から各々で進めてもらいます。」

10名の生徒が準備授業を終え、久々のクラス委員会へ向かう長暮と瀧田。


「久々で緊張するね、クラス長。」

「おう、なにされっか分かんねえしな...。」


前回受けた辱めを思い出したクラス長は、上手く表情を作れないままクラスに入っていった。


「失礼します...。」

「あ、また最後かも...?」


余計なことを言う瀧田を制止しようとフッと睨もうとするが、委員会担当の見栄山と目が合いニヤリとされたクラス長はおとなしく席に着いた。


「はい、じゃあ長暮君号令。」

「はい...。」


慣れない挨拶を終え、話のフェーズに入る見栄山。

遠くを見るとまたあの時の三年生と目が合った。


「という感じで文化祭準備を明日から各々で進めてもらいます。」


クラスから十名の生徒が実行委員となって始める文化祭。

それぞれがワクワクを胸に秘めながらその日の委員会は終了した。


「はい、長暮君号令。」

「あ、そうか...起立。」


完全に疲れ切ったクラス長の元へ走ってくる三年生。

「うい、お疲れ!」

「あ、どうも...」


前の委員会、そして体育祭の時も優しくしてくれた彼に久々会えたことが嬉しく少しニヤけながらグータッチを返す長暮。


「...あっ!?」

「びっくりした...どうしたの瀧田さん。」


珍しく驚いた瀧田の声に連鎖して驚くクラス長。

そんな瀧田は三年生の前に立つと口を押えながら頭を下げた。


陽下ひのしたさんですか!?」

「え、なに?俺っち有名人なの?」

「あ、あの甲子園予選決勝見ました....!」


陽下は瀧田のキラキラした目に笑いながら頭をポリポリ掻く。

「いやー見られてたんだ、ハズかしいね。」

「いや!感動しましたよ!」


真っすぐに感想を伝える瀧田にどんどん恥ずかしくなって顔を見られなくなってくる陽下は急いで長暮の方を向いて誤魔化す。


「そうだ!体育祭の棒引きよかったな!」

「あぁ、ごめんなさいあんな応援くれたのに....。」

「いやいや、最後の覚醒みたいなやつカッコよかったよー。」


瀧田さんは陽下の会話を待つ後ろの二年を見てハッとする。

「あの人遊撃手ショートやってた人じゃ...!?」

「え、あぁどうも...。」

「...あぁ、上影かみかげ!どうした!?」



瀧田の真っすぐな愛にまたもタジタジになる後輩を見てられなくなった陽下は急いで後輩を連れて教室を出た。


「なに、あの人たち甲子園出てたの?」

「甲子園の予選!クラス長見てないの!?」

「ご、ごめん...」

「まあ、負けちゃったけど...でも惜しかったんだよ!?」


あまり見たことない瀧田の感情に少し押され気味になるクラス長はさっきの二人の気持ちが若干分かった気がした。



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次の日の帰り、集まった十人の生徒。


「はい、じゃあ一応初回なので出欠とります。」


「まず遊部くん。」

「ういーっす。」


「伊須さん。」

「はい!」


「尾辺くん。」

「はいはーい。」


「柴北さん。」

「はーい!」


「白佳くん。」

「...はぃ。」


「仲田、二釈、俺、んで。」

「おいおい!ちゃんと呼べよ。」

「いつものメンツだから、じゃないのよ......。」


「湯瑠川さん。」

「はいっ。」


「宵川さん。」

「はい。」


慣れない十人のメンツに、いつもならしない緊張をしながら話を続けるクラス長。


「何か質問がある人がいますか?」

先陣を切って手を挙げる仲田に、なんだよと少し顔を歪めながらクラス長は彼を差す。


「副クラス長はいないんすかクラス長!」

「はい、それ委員決めの時にも話したんですけど、彼女は部活があるのでこの十人になってます。」


「俺らがまるで暇人みたいじゃないか!」

「遊部くん、やめてください。」


「まず何を作りますか?」

「柴北さん、それは後で話すのでちょっと一回」


「えっとー...バナナはおやつに入りますかー?」

「あ、尾辺くん、それ全然関係ないです。」


どうやらみんな各々エンジンがかかっているようで、それぞれの色をこの教室に馴染ませようと必死になっている。


「とりあえずこの一年二組は射的になりましたので、まずポスターと入り口に置くでっかい看板を作ります。」


「私、ポスター書きたいかも。」

「私も書きたい...」

「うーん、じゃあ湯瑠川さんと宵川さんにしようか...他描きたい人いる?」


「俺、描きたい......。」

「...っ。」

「じゃあ白佳くんと二釈の四人でそれぞれポスター二種類作ってもらおうか。」


慣れてきたクラス長の捌きっぷりに少しだけもの寂しさを感じる仲田と、さっきのワチャワチャにうまく入れなかった伊須は自分自身に少しだけ苛立った。


「じゃあ、えっと...始め!」

「そんなんで始めるんだ。」


これから始まる文化祭準備のあれこれ、クラス長は捌ききることが出来るのだろうか


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