第22話 腹式呼吸を決め込んで
「ちょっと二人に聞きたいことあんだけどさ。」
「どうしたんだクラス長、珍しい。」
クラス長は神妙な顔つきで両肘を仲田の机に乗せると、珍しく話の先導を切る。
二人は異様な雰囲気につばを飲み込み、質問を聞く体勢を整えていく。
「もしもカラオケで高い声が出なかったときなんだけどさ。」
「...へ?」
仲田と二釈は不意打ちを打たれたような表情で質問を整理すると改めてポカーンと口を開ける。
「二番でオクターブ下げちゃうのがハズいみたいな話?」
「そうそう!その状況がもし起こったらどうしてる?」
カラオケが好きな仲田と二釈に対してどうしても気になっていたらしく、化学のノートを一枚綺麗にちぎるとメモの準備を始める。
「俺は一回更に高い声出してごまかしてる。」
「高い...え、高い声?」
「そう、あえて更に一回上げてミスることでその後のオク下げの違和感を無くす。」
ずっとうっすら恥ずかしい気持ちになる位なら、一瞬めっちゃ恥ずかしい思いをすればいいという理論らしい。
「まあ俺ってさ、素直に謝るタイプじゃん?」
「確かに言わなかったらずっとうっすらモヤモヤするけど。」
「そう、一瞬恥ずかしくても謝った方がいいんだよ...だから謝れ。」
「なんでだよ。」
勉強になったとメモをして二釈の意見を聞く。
「俺も誤魔化しで言えば、でっけえ声出すかな......。」
「なるほ....てか二釈のでっけえ声あんま聞いたことないな。」
「まあ、カラオケのために溜めてるからな。」
「そうなん?」
ボソボソ喋る理由があっさり判明したクラス長は一瞬びっくりしたが、デカい声自体のメリットを聞く。
「喉が開くみたいなのを聞いたことがあって、ほんとか知らないけど......。」
「でも歌えてんなら本当なんじゃない?」
「プラシーボって大事よ、だから謝れ......。」
「マジで関係ねえだろそれは。」
クラス長は感謝をすると、二人の方法を理解して次のカラオケに向けて練習をすることにした。
「てか、クラス長はどうしてんだ......?」
「え?俺は普通に歌いきれるけど。」
「は?」
仲田と二釈は頭を掻きながら顔を合わせ、クラス長の口を開けたアホ面を見つめる。
「え、じゃあなんで聞いてきたの?」
「だから言ったじゃん、"もしも"の話だって。」
「めっちゃ謝れ.....。」
放課後カラオケの点数でボコボコにした二人だった。
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