第18話 休み明け、遠い目の三人
「おはよう二人とも。」
「おはよう、クラス長。」
「おはよう......。」
夏休みを終え、久々に会った三人は少しだけ大人になっていた。
それぞれ経験した濃い一日を噛みしめて、みんな自分が一番大人になったと思い込んでいる。
「夏の記憶ってさ、なんでこんな淡いんだろうな。」
「え.....?」
前髪をフッと吹き上げて二人から目線をそらして語る仲田。
クラス長は、その雰囲気に合わせてカバンを置き始めて口元に手のひらを当てる。
「毎日やってくる朝の光に人生を肯定されている気がしたよ。」
「なんか、カッコつけに寄りすぎてない......?」
二釈は遠い目をする二人を行ったり来たりで見つめる。
自分だけちょっと違うことに気づいた二釈の肩を組む仲田は、顔を隣に持ってきて話し始める。
「どーしたんだ二釈ぅ、そんな顔して。」
「いつもの顔だよ.......。」
「顔がまだ梅雨だぞー?」
「梅雨の顔って何だよ......。」
仲田の爽やかな雰囲気に困惑していると、追い打ちをかけるようにクラス長が反対側で肩を組む。
「...あぁ、えーっとあのー...なんだ。」
「思いついてから来いよ......。」
「...そうめんの手軽さに人生を肯定されている気がしたんだ。」
「マジでどういう意味なんだよ......。」
鐘が鳴り、席へ着く二人。
あまりにテンションが違う二人を見て、このままだったらどうしようかと不安になりながら朝の会を迎える二釈。
一番後ろで背の高い彼の視点からは沢山の人たちが見える。
課題を必死に終わらせる人
昼夜逆転の影響か、ずっと眠たそうにする人
窓の外を見つめ、自分の世界に入り込む人
それぞれが別々の夏を経験したのかと思うと、前でカッコつけていた彼らの気持ちもなんとなくわかる気がした。
あっという間にチャイムが鳴り、体育館シューズを準備するクラスメイト達。
「仲田、クラス長......。」
「どうした?」
「...演じるつもりだった夏の青春を実際に経験した俺ら、これは大人になるための大事な財産なのかもしれないな.......。」
仲田とクラス長は一度目を合わせ二釈の肩を持つ。
「...二釈。」
「...どーいう意味?」
二人に突如はしごを外された二釈は大きな腕で二人の首を絞めると、そのまま体育館まで連れて行った。
またいつもの日常がはじまる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます