第19話 追放された戦士たち
「...課題終わんねえよ~。」
クラス長と二釈は仲田の課題をひたすらに待っていた。
掃除の終わった教室でゆっくりする二人を羨ましながらスラスラと答えを写していく。
「答え写しはクラス長として見過ごしていいのか.....?」
「まあ、犯罪じゃないから。」
極論を叩きながらスマホで買った漫画を読むクラス長とクソゲーを攻略している二釈。
「クラス長なに読んでんの?」
「話したら課題集中できなくなるだろ?」
「...そうだが?」
クラス長にしては珍しく冷たい表情で首を横に振ると、仲田は下唇を出しながら課題に戻った。
「俺のゲームは聞かなくていい....?」
「んー、どうせなんかいっぱいタップするゲームでしょ?」
「そうだが.......?」
仲田は興味なさそうに現代文の漢字をひたすら書き続ける。
チクタクと流れる時間、漫画もゲームも一旦休憩するほど暇になった二人は教室の後ろのロッカーにもたれる。
「そんで結局なに読んでたの.....?」
「あぁ、なんか追放されたキャラが無双するみたいな。」
「なんか、珍しいというか意外だな......。」
「あー、初めて読んだよ。」
仲田は後ろでワイワイしているのを羨ましそうにしながら下唇を噛み腱鞘炎に耐えながら漢字を書き続ける。
外は昼の一番明るかった時を越え、一日の終盤へ向かっていく。
「ちょ、パーティ追放されたいから役やって。」
「おお、いいね.......。」
謎のコントインをし始める二人の姿を見てしまったら絶対混じってしまうので振り返らないようにひたすらページをめくる。
「長暮、お前は追放だ......。」
「え、ちょっ待ってください!」
「お前の代わりはもう呼んである、行け.......。」
「そ、そんな...。」
グルグルと右手首を回し、一回背中にもたれる仲田。
一度深呼吸をしてまた机に向かう。
ガラガラとなる扉
教師とかではなく二人がきっとコントの道具として使っているだけ。
「...クソ、俺はどうしたら。」
「よう、見ねえ顔だな......。」
「こ、こんにちは。」
漢字を書き終え、カバンの中から化学を取り出した仲田は答えを開いてまたシャーペンを動かす。
「俺、パーティを追放されちゃって。」
「・・・俺もパーティ追放されちゃった......。」
「え、お前もそっちやんの?」
開くページはどれもこれも
"若干習った気がするけど、全然わかんねえや"
みたいなものばかり。
自分の世界に頑張って入り込みただただ書き進めながら少し気になる後ろの会話にも耳を傾ける。
「アタシもよ......。」
「え?」
「おいどんも追放でごわす......。」
「え、全員追放?てか三役もやんの?」
淡々とこなす二釈の演技力は違和感をすり抜けて仲田の耳元へ土足で入り込んでいく。
「みなさんそれぞれの職業は?」
「おいどんはプチ回復でごわす......。」
「...なるほど。」
"ぜってえパワー特化のバカにしろよ"というツッコミを心で抑える。
「アタイは召喚師よ......。」
「お、強そう。」
「召喚師を召喚するの....。」
「なるほど。」
"ひと手間いんのかよ"
「俺は能力上昇要因だ......。」
「え、大事じゃないですか。」
「視力を七あげれる......。」
「おお、いいね。」
"そりゃみんな追放されるわ...てかツッコめや!"
ボケを全部スルーしたクラス長に少しだけムカつきながらも進む話を耳で追いながら化学を終わらせる。
「俺らなら、魔王倒せますよ。」
「ちなみにお前の能力は......?」
「俺は、えーっとあのー...えっとね。」
仲田は椅子を後ろに引き、振り返り超高速でダッシュをして化学の答えでクラス長の頭を叩く。
「準備しとけや!!!」
「いってーな!」
「二釈の大喜利三連発フル無視しやがって!」
「仲田、集中して課題に.......。」
痺れを切らした仲田の前身を片腕だけで止める二釈はそのまま席へ戻して座らせた。
「てかまだ全然あるじゃん.......。」
「嘘だろ仲田。」
「そ、それはお前らが気になることするからだろ!」
外には部活を終え廊下を歩く生徒が現れ始め、その波に流されたまま一人の教師がクラスに入ってくる。
「おいお前らまだ教室いたのか。」
「はい、仲田の課題が......。」
「もう時間、仲田は早く持ってけ。」
絶望的な表情をする仲田を真ん中に、三人は教室を追放されたのであった。
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