第35.5話 エピローグ(文化祭編#14(終))
「二人ともー、余韻抜けねえよー。」
「クラス長...彼まだ言ってるよ......。」
「もう一週間たってんだけどな。」
長く思えた文化祭からあっという間に一週間と少しが経過し、十一月前というのにもかかわらず未だに余韻が抜けない仲田と、それにつき合わされるいつもの二人。
「俺は急な仕事のおかげでそんな余韻ないな。」
「まあ、あれを最後まではよう頑張ったわ......。」
「でもDVDめっちゃよかったよ。」
気にしていたはずの画角は実際見て見るとビックリするくらいブレブレになっており、見たクラスメイト全員が最終的に気持ち悪くなったため、呪いのビデオを撮った男としてしばらくネタにされていた。
「...にしても最後のシーンは良かった!」
「あぁ、自撮りをしてるのを遠くから移すみたいなね。」
「最後の落ち方と言い、あそこは映画だったな......。」
仲田はあの時自分のカメラで写真を撮りたかったと悔しそうな表情を浮かべながらスマホを取り出し、ロック画面に設定した集合写真を二人に見せつける。
「三人くらいしか映ってねえじゃねえか。」
「元は横画面だからな。」
三分の一しか映っていないロック画面を開けると、ホーム画面はもう三分の一が現れるがどちらの写真にも仲田の存在はいない。
どうしてかと不思議に思えたが、クラス長は何かを思い出してハッとするとメッセージアプリの画面を開く。
「アイコン!」
「そう、正解!」
「そいえば許可とりに来てたな......。」
今までずっと自分の幼少期をアイコンにしていた仲田だったが、この写真をもらってからすぐ二人への許可をもらい、クラス長と二釈の三人が映った部分の写真をアイコンに変えた。
「てかアングル的に俺の自撮りになってるけどいいの?」
「俺のとこに矢印と名前書いとくか。」
「プリクラかよ。」
「ガタガタの太文字でな.......。」
「じゃあプリクラじゃねえか。」
一人だけ異様に熱が抜けない仲田は二人の冷静な表情に見つめられたまま、自分がマイノリティだと分かっているうえでこの画像の良さを話し続ける。
「てか、二人はしてないのかよ。」
「いや、そんな恥ずかしいし......。」
「二釈の言う通り、そこまではしないよ。」
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数日前の二釈
「えーっと...この大きさで......。」
数日前のクラス長
「うわー...こっちもいいけどな...」
二釈は買ってからずっと変えていなかったパソコンの背景に、クラス長はコンビニで印刷した写真を雑貨屋まで持って行き、この写真に似合うフォトフレームを朝から晩まで探して日曜日を丸一日潰すくらいには好きであった。
「ま、余韻抜けるまでこの話するけどよろしく。」
「これは長引くぞクラス長.......。」
「まあ、文化祭だからしゃーないよな。」
いつも通りの風景、いつも通りの生活。
早めの暖房、弾む会話で芯を温める彼らの生活はまだまだ続く。
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