第36話 漢字検定

「クラス長ってさ、鳳梨ほうり知ってる?」

「鳳梨...ほ、鳳梨な...おん、おーん。」

「知らないじゃん。」


昼飯に食い忘れていた三十円引きのコンビニスイーツをほお張るクラス長の肩を叩くと、さっきスマホで覚えた知識を披露したそうにウズウズしている仲田。


「二、二釈は知ってる?」

「鳳梨?俺はアレルギーだな.....。」

「おお、わたくし仲田もアレルギーでして。」


鳳梨を理解している二人は意外な共通点に驚きながら、なにか分かっていないクラス長の顔をマジマジと見つめる。

どうやら昨日のテレビ番組でやっていたらしく、ゴールデンタイムからこの時間帯までずっと言うタイミングを伺ってウズウズしていたらしい。


「ちょっとどっちかヒント。」

「明るい色の果物だな......。」


二釈は漢字を見せながら薄めのヒントを出すと、数少ないくらい果物を頭の中で弾きながら頭を抱えて悩ませている。


「えー、まず暗い果物ってなんだ...?」

「巨峰とか消えるじゃん。」

「巨峰は普通に巨峰だろ。」


漢字を見つめてもなんにも思いつかないクラス長。

苺、林檎、柚子に桃.......。

大体思いついてもちゃんと漢字があるので逆に漢字の無いフルーツもあまり思いつかないクラス長は、最終ヒントを仲田に求める。


「酢豚に入ってます。」

「いや、仲田...それは出し過ぎだよ......。」

「そうよ、さすがに分かっちゃったよ。」


「シークワーサーね。」

「...え?」

「酢豚にシークワーサー入れんの......?」


二人は思わぬ回答に顔を見合わせる。

自分のクラスをまとめてきたリーダー的存在が、酢豚にシークワーサーを入れて食べる人間だったということに驚きを隠せず、なんならこんな人間に指揮をとられていたのかと思うと若干怒りすら沸いてきた。


「クラス長はさ、酸っぱい料理に酸っぱい果物入れんの?」

「酸味強い奴が大皿になれないよ.......。」

「えぇ?うちの県だけ?」


二釈は今後の付き合いを考える中、仲田はクラス長の間違っているのに飄々とした顔を見て一瞬顔をしかめる。


「ちょっと待て二釈...コイツふざけてるぞ。」

「え.......?」

「...バレたか。」


クラス長は悔しそうな顔で自分の太ももをペチっと叩き、漢字で書かれた鳳梨の上にパイナップルと書くと、あたかも最初から分かってた顔でドヤ顔をするが、酢豚のヒントを出されるまで正直全く分かっていなかった。


「...はー、良かった。」

「クラス長辞任させるとこだったわ......。」

「重すぎんだろ。」


クラス長は変なことをするもんじゃないなと二人に申し訳なくしながら、仲田はパイナップルをカバンから取り出すとに正解の商品として渡す。


「おう...じゃあ全部あげる。」

「なんでまるごと持ってきてんだよ。」

「教科書ボコボコになってたじゃん......。」


一気にがヤバい奴になってしまった仲田、冗談ではない顔をしながら二人は彼との付き合い方を考えることにした。


「あとごめん、俺もアレルギーだわ。」



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