第27話 テイマートレーナープレイヤー(文化祭編#5)
「ごめん!俺シュンちゃんと周る!」
「あ、え?」
「あぁ、俺も従姉妹が遊びに来るから......」
「おい!まじかよ!」
てっきり三人でまわるもんだと思っていたクラス長は彼らの言葉を聞いて突然焦り始める。
「せっかく涼しい季節になったのに汗かいてきたわ...。」
暑い日も徐々に減りようやく本格的な秋を迎えそうな十月、文化祭の開催までもうあと二週間を切り、どこのクラスも少しギアを上げ始めていた。
クラス長が教壇で大きなため息をつくと同時に開く教室の前扉。
その先にはまた知らない男が立っていた。
「失礼します。」
「...きみは広告部?だったら出禁だけど。」
「根に持ちすぎだよクラス長。」
前回の悲劇プラスさっきの事からか、クラス長の後ろには黒に近い灰色のオーラがモワモワと浮いているように見える。
そんな彼の詰め方に驚く別クラスの生徒は、オドオドしながらも自己紹介をする。
「えっと、生徒会の神岡です。」
「生徒会だぁ?
「すごい、だんだん敬語にしてった...。」
クラス長はペコペコ頭を下げながら使ってない椅子を二つ準備して教壇に椅子を置いた。
「お話というのはなんでしょうか。」
「あぁ、それなんですが...」
生徒会の神岡はカバンの中からプリントを一枚取り出すと、緊張しているクラス長に渡してここに来た説明をし始める。
「今年の文化祭は学年対抗の大会をします!」
「...大会?」
「あの、
「大会の意味は分かってるよ。」
天然なのか、いつも使っているボケなのか彼の真っすぐな瞳からはいまいち分からなかったが、彼はすいませんと小さく頭を下げると表情を改め、文化祭で行う大会の説明をプリントと見ながら説明を始めようとする。
「ゲーム大会?」
「..はい、こちらを使って。」
「え、なにこれ。」
神岡はカバンの中からゲーム機らしきものを取り出して、この物体の説明をし始める。
「このゲーム機の中には、この学校で作られた自作のモンスター育成ゲームが入っています。」
「へえー、すっげえな。」
数年前、この学校の
「どうやらプログラムも
「すげえけど...そんなん出来るもんなのか?」
人望の厚かったその男は、そのほかの部活や生徒会までも巻き込み、世代を跨いで開発し続けた歴史のあるゲーム機らしい。
「音楽は当時の軽音部、モンスターの絵は美術部とかに頼んだらしくて...」
「...え、じゃあこの機械自体もなんかで作ったってこと?」
「まぁ自分も最初は疑いましたが、実物として存在するので...。」
クラス長は神岡からそのゲーム機を借りてじっくりと見つめる。
「すげえ...処理研ってなんとなく個人主義なイメージあったんだけど...凄い人もいるもんなんだな。」
「まあ、"革命の始まりは無名の思い付きから"って言いますしね。」
「なにそれカッコいいな、誰の名言?」
「あぁ、自分がちょっと前に思いついた言葉です。」
クラス長は案外ボケてくる生徒会のムーブをとうとう無視し、全員の注目を集めて今の説明をもう一度する。
「このゲーム大会、出たい人いる?」
「.........。」
みんなキョロキョロしながら誰が出るかを伺う。
換気扇かなにかの起動音がやけに響いているように感じるクラス長はあの時を思い出して少しだけ膝がガクつく。
しかし今回に関しては仕方ない。
文化祭ムードになり始めている学校、大体の人間は何を見るかや誰と周るかを決め始めている。
「誰もでないなら、予定もないし俺出ようかな...。」
「...私、出たい。」
クラス長は下唇を突き出しながら、決めようとした瞬間に仕事場所から見えた華奢な右腕。
「生徒会さん...これってもし結果残したら目立てる?」
「あぁ、学校のホームページとかに乗るかもしれませんね。」
「やります!!」
不純な動機ではあるものの、闘志をメラつかせている彼女は神岡からゲーム機とその他周辺機器をもらい、彼と謎の握手を交わした。
「優勝しに行きます。」
「それはとても助かります。」
業務を終えた彼は生徒会らしく頭を下げると、両手で扉を閉めてクラスを去って行った。
「伊須さんってゲームするタイプだったんだ。」
「いや、友達の家でしかやったことない。」
「...え?」
「ねえ、これどうやったら光るの?」
そんなこんなで突如始まってしまった育成ゲームのプレイヤー育成計画。
電源ボタンの場所を探すのにも一苦労する彼女はまずモンスターを育てるところまで行くことが出来るのか。
「てか、俺マジで文化祭の予定ないじゃん。」
「ねえ、モンスターってなに?」
「それはゲーム知らないとかじゃないよもう。」
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