第33話

 俺はテスター先生から女性と1つになる技を教えてもらった。

 人によって感じ方は様々で好みが違うようなので多くの人とたくさんの経験が必要らしい。

 それでも俺はベッドの上での技量が上がった。


 地下牢の罪人はだいぶ減ったと思ったがすぐに新しい罪人が運ばれて来てテスター先生の魔法で自白剤を使われたように容疑を認めていく。

 それでも更にテスター先生と1つになってその罪人を減らしていった。


 しばらくすると文官の男が言った。


「ヤリス君のパレードを行います」

「……え? 何のですか?」


「ほっほっほ、ヤリス君は控えめな部分があると聞いていましたが全くその通りですな」

「いえ、本当に何もしていませんよ」


「何を言いますか、テスター先生に魔力を供給し続けた結果王都の治安は劇的に向上しました。罪人の自白が進めば犯罪に協力していた組織のアジトが分かり次の罪人を捕まえそのサイクルを回す治安の向上が期待できます」

「それはテスター先生の魔法が凄いんです」


「その魔力を供給したのはヤリス君です。更にです、アリシアさんとヨウコさんに魔力を供給、正確には生命力の供給ではありますが同じことですな。ともかくです、2人に生命力を供給する事で民のけがを治しました」

「間接的にはそうかもですが、3人がいてこそ出来る事でした」


「ほっほっほ、それはそうですがハイン君の言うように起点はヤリス君です。更に敵国の剣聖にして知将でもあるアンカー・ソードマスターを倒しましたな」

「ん? 何がですか?」


「おや? 兵士救援の際に倒した将は剣聖アンカー・ソードマスターですぞ?」

「えええ!」

「更にその剣聖アンカー・ソードマスターをパンチで気絶させる腕前、技量の差が無ければできない芸当だとハイン君からの報告を受けています」


 パンチで倒したのがバレてる!


「つまりですな、ヤリス君は3人に生命力を供給し、敗走兵を勝利に導き、剣聖を捕縛しました」

「ハインの指揮が良かったです」

「ええ、もちろんそれもあります、ですが主役はヤリス君です」


 まずい。

 俺強いムーブをしてしまっていた。

 そう言えばハインが敵将の名前を聞いても答えなかったし、俺にアドバイスをしようとする言葉をピシャンと止めていた気もする。

 ハインにやられた!


「では、行きましょう。半裸で」

「え?」

「半裸は勝利の象徴です。寒いですか?」

「いえ、寒くはないですけど、人前で半裸はちょっと、あれかなーと」


「大丈夫です、ヤリス君のたくましい体は女性を惹きつけるでしょう、さ、行きますぞ」


 そういう問題か? とも思ったけど言われるがまま半裸になった。

 俺は半裸で屋根のない馬車に乗った。

 左右にはアリシアとヨウコが乗る。

 そして前をハインが歩く。

 道の横にはたくさんの人がいて歓声を上げる。


 これ、おかしくない?


「ヤリス、ほら、歓声にこたえて、手を振りなさい」


 道の横から女性が声をあげる。


「きゃー! ヤリス様ああ!」

「結婚してえええ!」

「たくましいお体! 素敵です!」

「こっち向いて!」


 俺は半裸で手を振った。

 歓声が増した。


「治療してくれてありがとう!」

「さすが戦士見習いだぜ!」

「学園にいるのにもう活躍して、凄すぎるわ!」


 だがその歓声が突如悲鳴に変わった。


「「きゃああああああああああああああ!」」


 剣を抜いた女性が屋根から降りてきたのだ。


「ヤリス! 殺す!」


 女が剣に魔力を纏わせて振った。

 斬撃が俺達3人をめがけて迫る。


「ふん!」


 俺は手に魔力を込めて斬撃を叩き落とした。


 悲鳴がまた歓声に変わる。


「魔法剣を叩き落とした!」

「ありえねえ!」

「これが冬でも半裸で修業し続ける男の力か!」


 まだ倒していない。

 あの魔法剣をみんなに使われれば人が死ぬ!

 俺は構えた。


「く! 防がれたか! ならば至近距離で斬撃を叩きこむまで!」


 女性がジャンプしながら剣を振りかぶって斬りかかろうとしてきた。

 俺はジャンプして女性の腕を掴んだ。

 そして地面に投げる。


 ドッゴーン!


「ぐはあああ!」


 女性が地面に叩きつけられて気を失った。

 石畳が割れて轟音を発生させた。


「あ、やってしまった」


 まずい!

 これはモブプレーが出来ない。

 ごまかしきれない!


「さすが戦士見習いだぜ!」

「凄いわ、地面の石畳が粉々よ!」

「しかも危険な殺人鬼から街を守ってもいる!」


 気絶した人は誰も殺してないよね?


「パレードをこのまま続けます! 罪人を拘束して城に運べ!」

「「了解です!」」


 女魔法剣士が縛られ、2人の兵士に捕まれその周りを兵士が取り囲んで去っていく。


 パレードが続いた。


 さっきより歓声が増している。


 モブも、モブでいるのももう無理だ。


 

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