第42話

 朝、ヤリスのクラスでは学園に現れない2人の事が話題になっていた。


【ヤリスのクラス、モブ男視点】


「なあ、知ってるか? アリシアさんが毎日ハーレム調教を受けているらしい」

「嘘だあ」

「ホントだって、テスター先生が調教をしているらしい、テスター先生に聞いたんだ、本当だから」

「じゃあテスター先生は何て言ったの?」


「うん、俺が調教をしているのか聞いたらはいと言った。で、アリシアさんが王の命令を無視してハーレムを邪魔して大臣の説得まで断って淫紋を付ける事になったそうだ」


「わあ、淫紋、でも、うん、王命を断わって力があるのにみんなの為に動くヤリス君を邪魔し続ければ、無くはない、かな」

「てか、ヤリスは生命力供給の役目があるから良いとしてアリシアさんは5日間学園に来ていない。5日間テスター先生の調教を受け続けているんだ」


「実際にアリシアさんはテスター先生の指導でも折れず、王命に背いて色んな人が説得の為にアリシアさんの所に行っていた」

「完全にアウトだよな。邪魔すればこの国の人が死ぬ損害を出す可能性もある」


「それとさ、ヤリスが剣聖をワンパンで倒して、剣聖がヤリスが主なら奴隷になると言ったみたいだ」

「それは私も聞いた」

「俺も聞いた、てか今王都ではその噂で持ち切りだ。それに牽制の孫、超絶美人魔法剣士がヤリスの奴隷になったらしい」


「何だろう、ヤリスは力を隠してるっぽい感じが前からあったもんな、なんて言えばいいんだろう、走っている時に余裕で流して走ってる感があるんだよな」

「それは私も思ってたよ」


「淫紋奴隷化、やっぱ、シテるんだよね?」

「シテ無いわけが無い。しかも王命でだ」


「うらやまいい、でも超絶美人って言ってもアリシアやヨウコ、テスター先生より美人ってあるか? 無いだろ、あのレベルはそうはいない」

「でも美人らしい」

「見てみたいよな」


「ヨウコちゃんは最近生命力を吸って無いけど大丈夫?」


 ヨウコがコクリと頷いた。


「魔法を使わずに消耗しなければしばらく持つのが亜人スキルだ」

「いいなあ、キスだけでもしたい」

「誰と?」

「ヨウコとキスしたいなあ」


 ヨウコは首をフルフルと横に振った。


「はっはっはっは、振られたな」

「冗談で言ったでしょ?」

「いや、こいつは冗談っぽく言ってあわよくばスル奴だ」


「お、おい、アリシアさんとヤリスが来るぞ! 後ろにはテスター先生もいる!」


 ガサガサ!

 みんなでヤリスの机から一定の距離を取った。

 そして横目で3人を見続けた。


「さあ、ヤリス君、ヨウコさんとキスをしましょう」


 ヨウコがヤリスとキスをして生命力を吸い取る。

 一見クールだがキスの時は野性的になるヨウコを見てドキドキする。


「次は私も貰います」


 テスター先生がヤリスとキスをして生命力を吸い取る。

 テスター先生のキスもいいが、尻をこっちに突き出す姿勢に興奮する。

 いつかテスター先生の個人レッスンを受けたい。


「アリシアさん、いつものように吸いましょう」

「はい」


 アリシアさんが血を吸っていく。

 あの上品なしぐさで服を脱がされたい。

 出来ればベッドの上でだ。


「はい、吸血は終わりです、アリシアさん、みんなの前で指導の成果を見せてください」


 アリシアさんが服をたくし上げる。

 するとへその下に淫紋が輝く。


「私はヤリスの調教で淫紋を付けて貰いました。原因は私が王命を破り、王政の邪魔をしたことです」


 クラスメートが騒ぎ出した。


「え? アリシアさんがおとなしい」

「本当に、調教を受けたんだ!」

「はあ、はあ、興奮する」

「淫紋、俺も主になりたい」

「羨ましすぎる」


「アリシアさん、ヤリス君のハーレムを邪魔しますか? しませんか?」

「しません」

「アリシアさん、ヤリス君と他の女性が1つになったとします、どうしますか?」

「温かく、見守ります」


「アリシアさん、自分の言葉で言ってください」

「ヤリスはハーレムを作るべきです、ヤリスは私1人では支えきれません。たくさんの女性がヤリスのハーレムに集まるべきです」


 またクラスメートが騒ぐ。


「嘘、あのアリシアさんが絶対言わない言葉だよ」

「うんうん、いつもならヤリス君の手を握っただけで怒るのに」

「はあ、はあ、調教、アリシアさんの、調教にムラムラする」


 ガラガラガラ


 1人の超絶美人が入って来た。

 顔、体、すべてが整い剣を装備している。


 あまりの美人さに皆が驚く。


「あら、クコロさん、どうしました?」

「今からヤリスは戦士見習いではなく戦士になる。ヤリス、テスター、アリシア、テスターは王城に来てくれ、今から式を行う」


「急ですね」

「ああ、ヤリスの件はスピード感を持って進める意向が決まったようだ、ヤリスは圧倒的な成果を出しているからな」


「納得です、さあ、行きましょう」


 美女軍団が教室を出て行った。


「本当に、超絶美人だね」

「クコロさん、奴隷の指輪を付けてたよ」

「まじかあああ、羨ましいわあ」


「それを言うと、ヤリス君みたいに頑張りましょうしか返ってこないよ」

「だよなあ、冬でもYシャツだけで、生命力を吸われまくって、代償を負ってあそこまで行くんだよなあ」

「死んだ方がマシだと思える苦しみをずっと続ければみんな戦士や魔導士になれるんだろうな、でも、ハーレムの為に……苦しいのはきついぜ」


「俺達一応は学園生だから、他の同年代や兵士よりは努力してると思うんだ、でもこの程度じゃダメなんだろうな」


 学園生はエリートだ。多くの者が勉学であれ戦闘訓練であれ何かしらの努力はしている者が多い。

 でもヤリスの努力は普通じゃない。

 そう言えばヤリスが1年の時はいつも調子悪そうにしてたなあ。


「俺も、もう少しだけ頑張ってみようかな、スキルを発揮してみんなに貢献してさ、で戦士になりたいわ」

「私も、もう少し頑張って魔導士を目指そうかな」


 



 みんながヤリスの事を努力し続けていると勘違いしていた。




【ヤリス視点】


 王がキリッとした顔で紙を読み上げる。


「ヤリス、そなたは剣聖を打ち倒し奴隷にした、この事により多くのモンスターが狩られた。その事によって肉や素材の納品が大幅に増え、更に国内の移動、その安全度が増し、民の死亡率だけでなく不安を解消した」


 剣聖おじいちゃんはかなり優秀だ。

 最初は全員まとまって動いていたけど、途中から先に斥候を出して部隊を分散させて広範囲のモンスターを狩るようになり、土地勘が出てくると更に効率を増した。

 そして敵国から優秀な兵士とその家族を引き抜いて更に部隊が大きくなっている。


 この事によりこの国グロース王国は戦力アップ、敵国ハートブレイクは兵力ダウンだ。

 剣聖の部隊は敵国の兵士と戦わない、でもモンスターを狩るだけで今までモンスターを狩っていた兵士が敵国との戦争や治安維持に回された。

 つまり戦争の兵力が間接的にアップしている。


 剣聖は敵国ハートブレイクで多くの兵を育てていたようだ。

 育てた兵士から剣聖は父のように思われているらしい。

 更にこの国の王は受け入れた兵士とその家族を他の兵士達と同じように扱った事も兵士を呼び込む事に一役買っている。


 剣聖は兵士関係なく皆に剣技を教えた。

 敵国と剣の型は全く同じではないが似ている部分が多い為剣聖の指導は好評だ。


 剣聖は安全アップ、兵力アップ、訓練アップ、兵士の引き抜き、あらゆることをやっている。

 てか全部剣聖が凄いんだよなあ。


「更に、テスター先生に生命力を供給する事で囚人の尋問速度が大幅に改善された。この事により盗賊の素早い捕縛を実現し、王都の治安を大きく向上させた」


 うーん、これはテスター先生のサキュバススキルのおかげだと思う。


「更に更に、アリシア、ヨウコ両名に生命力を供給する事で王都にいるけが人を癒し、人材の労働を助けた」


 これはアリシアとヨウコが回復魔法を覚えたからだ。

 2人とも優しいんだよなあ。


「最後に、クコロ・ソードマスターは王都を巡回し民の困りごとを吸い上げ、それにより治安の向上に努めた。クコロがあまり寝る事無く動き回れるのはヤリスのおかげだ」


 俺とスル事で一定時間ではあるけど睡魔の状態異常を回復する。

 クコロは俺とスル事で1日3時間寝るだけで済むらしい。

 この前俺の発射したあれを『聖なる純白』とか言って買いに来ようとした人がいたけどあれはホラーだった。


「よってヤリスに戦士の称号を授ける」


 パチパチパチパチ!


「これからも、たくさんハーレムを作り、皆を助けてくれ」

「はい!」


「ふう、儀式は終わり、頼んだよ」


 王は気が抜けたように言った。


「はい!」

「うん、頼もしいね。人の目は気にせずに全力で動いていいからね、それとたくさんの女性を何度も抱いて何回も回復させてね」

「はい!」


 王が俺の肩に手を置いた。


 この言葉は『手を抜くなよ』と言っているようにも聞こえる。


 儀式が終わると4人が後ろをついて街を歩く。

 みんなが後ろにいる美女4人を見て振り返る。


「おい、すげえ美人が揃って歩いてるぜ」

「まじだ、すげえ、アレが噂の英雄エムスマイルの生まれ変わりか!」

「ハーレムいいよなあ」


「でも、冬でもYシャツ1枚、何度も血と生命力を吸われまくる魔力タンクでもあるんだ」

「普通の人には出来ない道を歩んでるよね、苦しいのは無理だなあ」


 何やら俺の話も聞こえてくる。

 学園に戻るとクコロが去って行こうとする。


「クコロさん、待ってください」

「む?」


「今日の夜、みんなでヤリス君と1つになるお祝いをしたいです。ヤリス君、シタいですか? それとも今日はやめておきますか?」

「シマす」


 あんなに気持ちいい事、我慢できない。


「ヨウコさん、一緒にヤリス君と気持ちよくなりませんか?」


 ヨウコはアリシアの顔を見て首を横に振った。


「あら残念、アリシアさんに気を使っていますね。今日はアリシアさんがヤリス君と他の女子がするのを目の前で見て我慢できるか確かめる目的もあります。アリシアさんは来てくださいね」

「分かったわ」

「そういう事なら、協力しよう」


「はい、決まりです。誰も来ない、声の届かない部屋で楽しみましょう」



 俺は結婚をしない主義だった。

 でも、俺は皆の魅力に負けている。

 気持ちいい事を、俺は我慢できないようだ。

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