第18話

 アリシアが退場して休憩が終わると2時限目が始まった。


 テスター先生は俺の目の前に立って顔を近づける。

 俺の手を両手で優しく握ったまま話を始めた。


 顔が近い。

 胸が当たっている。

 吐息がくすぐったい。

 マジで興奮してしまう。


「ヤリス君、私はヤリス君を信じています。アリシアさんの事は理解します、しかし、その障害が排除されれば問題は何も無くなります。素晴らしい道徳心を持ったヤリス君ならみんなの為に生命力を供給してハーレム婚をする。違いますか?」


「あ、あの、近いです」

「近いとかそういう話はしていません。ヤリス君ならハーレム婚に協力してくれますよね?」


 話を逸らす。


「そ、その前に僕は、戦士ではありません」

「ええ、ですが仮に戦士になれるのならなってくれますよね? もし戦士ならみんなに生命力を供給してくれますよね? 違いますか?」


 テスター先生が離れない。

 く、こうなれば違う軸で!


「あの、きれいなテスター先生が近くにいると緊張してしまいます」

「まあ、ありがとうございます。で?」


 テスター先生は更に俺に近づいて密着する。


「……で? と言うのは?」

「協力してくれますね? 違いますか?」

「あ、あの、少し、混乱を、して、いまして、検討を、させてください」


 テスター先生の胸が押し付けられる。

 テスター先生はキスをするほど俺に近づく。


「何を検討するのですか? ヤリス君が亜人スキルをもった女性とハーレム状態になる以外で何かいい案はありますか? あれば言ってください。大丈夫です、失敗しても罪に問われる事はありません。人は皆どこか不完全です。ヤリス君にすべてを押し付ける事はしません」


 そう言いながらテスター先生は胸を押し付けてくる。

 く、胸に思考力を奪われる!


「それに生命力が不足する亜人の方にヤリス君が生命力を供給してみて、ヤッテみて、試してみて、問題を洗い出す事の方が結果は早いと私は思います。議論より実践シテみて、後は文官の方、様々な方が知恵を授けてくれます。しかもです、その為の議論が今始まろうとしています。ヤリス君はヤッテみて手探りで協力しながら進めてイク事だけでいいんです」


 実践した方が早い、しかも今から議論する。

 逃げ道が潰されている。

 いい案が何も浮かばない。


「はいと答える以外の選択肢はないと思います。違いますか?」

「は、はい、違い、ません」

「ふふふ、ハイン君、進行をお願いします。ヤリス君、偉いです。勇気をもってよく言ってくれました。偉い偉い」


 テスター先生はアリシアの席に座りつつも俺の頭を撫で回す。

 そして体を撫で回し続けた。


「ああ、偉いです、偉いですよお」

「テスター、先生、集中、でき、ません」

「いいんですよ。今日は偉かったです。もうハリス君に任せましょう。もう疲れなくていいんです」

「くう、ちょ、あああ!」


 テスター先生は俺の胸、太ももまで撫で続け体を押し付ける。

 俺の思考力を奪う、目的か!

 くそ、興奮する!

 触り方がうますぎる!


 俺はモブではなくなってしまうのか!

 アリシアだけじゃなく、ヨウコにもキスで、ヨウコを見た。

 くそ、ヨウコが可愛すぎる。

 唇に吸い込まれそうになってしまう。


 モブで結婚が向かない俺はハーレム婚をする事になるのか!

 く、ハインの言う事が全く頭に入ってこない。

 テスター先生に俺は完全に抑え込まれていた。



 ◇



「ヤリスは戦士見習いとして試験的に戦士扱いにする。王よ、この制度をどう思うだろうか!」


 ハインの言葉で議論が終わった事を知った。


 王を見ると一瞬目が鋭くなった。

 そして笑顔になる。


「い~よ!」


 王はやり手だ。

 あの笑顔は演技。

 そしてテスター先生はずっと俺の体を触り続けていた。


「はあ、はあ、はあ、はあ、あの、全然、内容が入って来ません」


 先生が俺の耳に口を近づけて囁く。


「いいんですよ、座っていて偉いです。でも、こっちの方は立ってきちゃいましたね?」

「く!」


 テスター先生が立ち上がった。

 そして大きな声で言った。


「2時限目で議論が終わっちゃいました。3時限目からヤリス君、ヨウコさん、そしてアリシアさんで話し合いをしたいと思います。どうでしょうか?」


 テスター先生が王を見た。


「い~よ!」

「行きましょう、実施授業の開始です」


 く、実施授業だと!

 何が始まってしまうんだ!

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