第15話
次の日、学園に来るといつもと様子が違った。
テスター先生(サキュバス先生)が前に立つ。
1時限目から3時限目まで全部議論だ。
後ろには王様や文官が会議の視察をしている。
今日は黙っていよう。
変な事を言ってはいけない。
俺は元日本人なのだ!
黙って意見を言わないのは得意である。
右を見るとアリシアが座っている。
アリシアが参加したいと言ったらOKが出た。
昨日は強制退場だったのにどういう事?
左を見るとヨウコが凛とした表情で座っている。
サキュバスのテスター先生を見つめる。
学園を卒業後先生になって今は19才。
ピンク色の髪をショートカットで切り揃え、赤い瞳をしている。
頭からは羊の角がクルンと巻いている。
整いすぎた体、仕草、表情、すべての要素が男を誘惑しているように見える。
テスター先生も亜人系スキルでエロい事をすれば生命力を吸収でいるらしい、と言っても女子生徒からキスで生命力を分けてもらうにとどめているようだ。
19才で王の視察がある授業の先生を任せられるなんて、相当優秀だな。
アリシアが俺の腕をグイッと引いた。
「ちょっと、いやらしい顔になっているわ」
アリシアの方を向くと後ろにいる王様から鋭い視線を感じた。
王様を見るとにこにこ笑っていた。
気のせいか?
「ヨウコもヤリスに近すぎるわ」
ヨウコが真顔で俺を見た。
クンクン!
ヨウコが俺の匂いを嗅ぐ。
その後アリシアの匂いを嗅いだ。
「な、何よ」
ヨウコの顔が少し鋭くなった。
その表情何?
怒っているのか考えているのか分からない。
ヨウコは俺とアリシアを交互に見た。
そして視線を前に戻した。
表情はいつもの凜とした表情に戻っている。
まさか、昨日もシタ事がバレている!?
いや、でも昨日だって2人シャワーを浴びた。
何も匂いは残っていないはずだ。
ヨウコを見ると真顔だ。
ヨウコの事が分からない。
「ヤリス君、アリシアさん、ヨウコさん、始めますよ。静かにしてください」
「はい、すいません」
俺は素早く謝る。
そう、俺は元日本人。
どうでもいい事はとりあえず謝って済ませる!
「では議論のテーマを発表する前に皆さんの認識を確認します。この国、グロース王国は才ある者は民の為にその力を使うべき、そういう考えがあります。ヤリス君、違いますか?」
「才ある者は民の為にその力を使うべきです!」
としか言えない。
この考え方に反論すれば『自分の事しか考えてないの?』とか『じゃああなたはどういう考えですか?』となるだけだ。
この国は『1人は皆の為に』と考える思想が強い。
日本とは違う。
「ありがとうございます。そうです、子供でも知っています。才ある者は民の為にその力を使うべきです。たとえ才が無くても野菜を作ったり加工したり、教師をしたり孤児院のシスターをする事で国を豊かにすることは素晴らしい事です。もし誰かがサボってズルをしようとすればまた1人、10人と仕事をしなくなり国が傾きます。ヤリス君、違いますか?」
「先生の言う通りです!」
何で俺だけ?
何で俺だけに言ってくる?
いや、待て、俺は資本主義の考えを持った異端者でもある。
自分だけ適当に生きる目的がバレている!?
まさか、バレてないよな?
自分の欲の為にお金を稼いで自分の為だけに使う、この国でそれは異端者だ。
この国はそういう事を本当に許さない。
大雑把な国の法をみんなの善意で回している。
「では、テーマの前にハイン君前へ、ハイン君の演説が素晴らしかったので是非みなさんにも聞いて欲しいのです」
ハインが前に出て演説を始めた。
「結論から言おう、私の友ヤリスは戦士をなりハーレムを作るべきだ! これが私の主張だ! 何故なら……」
今回もその話かあああああああああああああああああ!
◇
パチパチパチパチパチ!
後ろから声が聞こえる。
文官が王に話をする。
「さすがイーグルアイ家ですなあ」
「ええ、堂々とかつ大胆な主張と繊細な説明でした」
「ヤリス君の強い治癒力アップで亜人スキルをもった者とハーレムを作り国を繫栄に導く、面白い考え方ですな」
「ええ、すでにアリシア、ヤリスの2人で実践済みである点も見逃せません。ヤリスがアリシアを回復させてアリシアが初級ではあっても治癒魔法を何度も使うそのサイクル、ハーレム繁栄がうまくいけば素晴らしいです」
「今回のテーマ、素晴らしいの一言」
モブの治癒力アップは本来なら目立たないはずだった。
ハインが覆した!
普通サッカーではサポートは目立たずシュートを決めた選手が目立つ。
俺の計画ではアリシアが目立って済む話だったはずだ。
ハインは丁寧に丁寧に主軸は俺である事を説明しサポートである俺に光を当てまくった。
だが、まだ何とかなる。
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