第6話

【アリシア視点】


 私はヤリスから視線を逸らして黙ってシャワー室を出ようとした。

 ヤリスはとても男らしい体をしていて弟のように接してきたヤリスがいつもより大きく見えた。

 上半身は前から見ていたけど下半身も思ったよりも大人だった。


 まだ心の準備が出来ていない。

 明日、明日にしよう。


 私はシャワー室の扉に手をかけた。

 その瞬間にヤリスが後ろから私に抱き着く。


 お互い生まれたままの姿。


 今までないほどの肌のふれあい。


 そして後ろから抱き着かれて後ろからヤリスのオスを無視できないほどに感じる。


「はあ、はあ、まだ、洗っていないよね?」

「魔法できれいに出来るわ」

「アリシア、前言っていたよね? 気持ちいいからシャワーを浴びるって」


 後ろから感じるヤリスのオスが更に膨れ上がる。

 ただでさえ無理をして入ったシャワー室。

 私の高鳴る鼓動は更に激しさを増していた。


「今度は俺が洗って気持ちよくするから、アリシアは俺を洗っていいけど自分の番になったら逃げるのはダメだよ」

「し、仕方、無いわね、洗われるくらいなら」


 私はヤリスの前に座ろうとした。

 その瞬間にヤリスの手が私の後ろを撫でる。


「ふぁ! や、ヤリス、いたずらはダメよ」

「アリシアが言うの?」


 さっきまで私がヤリスを洗うのではなく気持ちよくさせていた。

 言い返そうとして何も言えない事に気づいた。


「座って」


 ヤリスの手が私を洗う。

 背中、腕、頭、顔、どれも思ったよりも、悪くない。

 ヤリスは丁寧に私を洗った。

 素手で洗ってはいたけど、洗う事に集中していた。



「次は足も洗うね。こっち向いて」

「あ、足はいいわ」


 ぐるん!

 ヤリスは私を抱いて方向転換した。

 向かい合った私は女の部分を隠す。


 ヤリスが私の足を洗う。

 指の隙間に指を這わせて私の顔を見る。

 私は無意識に自分の口を必死で押さえていた。


「アリシアって足が弱いよね? くすぐったい?」

「ふー! ふー! ふー! ふー!」

「口をそんなに抑えなくてもいいのに、次は脚」


 ヤリスの手が足からひざ下までを洗い、そして太ももに伸びた。

 ヤリスの洗う手つきが変わった!

 私の顔を見ながらヤリスは私が反応する撫で方を探っている。


「も、もういいわ」

「ダメ、全部洗わないと」

「太ももは、あああ!」

「内太ももがくすぐったい?」


 私は両手に力を入れて口を抑えた。


「ダーメ、股を閉じないで、指が入らないから」

「太ももは、も、もういいから!」

「ダーメ」


 太もものたどり着く先、私は自分の股間を見た。

 ここだけは耐えられない。

 向かい合ったヤリスに、あそこを洗われる顔を見せるわけにはいかない。

 漏れ出す声を聞かせるわけにはいかない。


 ヤリスの手が上に伸びてくる。

 

 内股の上に伸びてくる。


 私は片手で股を押さえる。


 ヤリスの手が当たる瞬間に、ヤリスの手が止まった。


「次は立って」


 助かった。

 あと少しの所で助かった。

 ヤリスは私に気を使っている。

 私は立ち上がった。


 向かい合った状態からヤリスに後ろを見せるようにターンした。


 これなら顔を見られなくていい。


 何とかなる。


 後は声を我慢すればいい。


 ヤリスが後ろから抱き着いた。


「次は残った部分を洗おう」

「……ふぇ?」

「洗う所を最後に残しておいたんだ」


 私ははっとした。

 ヤリスはデザートやお肉を最後に食べる。


 私は気を使われたわけではなかった。


 ご馳走を最後に残すのと同じ、


 私が、洗われていないのは?


 私は胸や股を見た。


 ヤリスの手が私のお尻に触れる。

 私は不意打ちのようなヤリスの手に体が反応して跳ねた。


 ヤリスのご馳走、私の弱い部分しか残っていない。


「ま、待って、待っふぉん!」



 ◇



 私は私のすべてを洗われた。


 腕を押さえると声が出そうになり自分の口を塞ぐと洗われ放題になった。

 たった2つの手だけでは守り切れず追い詰められた。


 ヤリスの力は強くて体力では絶対に勝てない。


 後ろから抱き着くように洗われ続け、私はお姫様抱っこをして貰いながらシャワー室を出た。


 生まれたままの姿で体を拭いてもらい髪を乾かしてもらった。


 ヤリスが私の部屋に私を運ぶ。


「はあ、はあ、ちょっと、激しすぎ」

「そうかな?」

「そうよ、明日も学園なんだから、もう休むわ」


「あれってまだ準備運動だから」

「……え? え?」

「最期までスルって言ったよね? いいって言ったよね?」


「洗われて記憶が飛んでいるの」

「大丈夫、記憶が飛んでてもいい。疲れたらたくさん血を吸っていいから」


 うそ、今この状態で最後までシテしまえば!


 体が熱くなった状態で最後までサレてしまえば!


 ヤリスに聞かせたくない声を出してしまう。


 体が反応してしまう。


 見せたくない女の顔を見せてしまう。


 ヤリスが私をベッドに寝かせた。


 無防備に上を見上げる私の上にヤリスが覆いかぶさろうとする。


「待って、まっへ!」


 ヤリスと私は1つになった。


 長い夜が、始まる。


 そう思った。

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