第5話

 4時時限目が終わり家に帰るとアリシアを降ろす。


「お疲れ様、食事はどうする?」

「俺は、いいや」

「そう、私もいいわ」


 俺は自分の空腹すら治癒出来る。

 食べてもいいが食べなくてもいい。

 アリシアは吸血さえしていれば食べなくて大丈夫だ。


「アリシア、先にシャワーをどうぞ」

「ヤリスが先に入って

「ん? 分かった」


 少し会話に違和感を感じたけど俺はシャワーを浴びに行く。


 シャワーを浴びながら考える。

 最近の俺はどんどん性欲が上がって防御力が弱くなっている。


 対して子供の頃は可愛いだけのアリシアだったが成長するほどに魅力が増していき今やその魅力は極まる所まで到達し非の打ちどころがない。

 アリシアの攻撃力は上がり続けている。


 と言ってもアリシアの裸を見た事は無い。

 俺はスキルが磨かれ能力値が上がった事でアリシアの裸体イメージを服の上からでも出来るようになってしまっている。


 他にもアリシアが『暗くなった』だとか『夜になった』と言うだけで一緒にスル妄想を膨らませてしまう。

 俺、ヤバい奴じゃん。


 そう考えると俺とアリシアは何も起きないんだろう。

 俺は妄想の中だけでアリシアを抱いている。

 現実とファンタジーの境界がごっちゃになってしまっている。


 俺が転生できただけでラッキーなファンタジーだ。

 これほどにないまで健康な体なだけでラッキーなファンタジーだ。


 それだけじゃない。

 エリートが通う学園に通えている。

 卒業すれば働く場所には困らない。

 美人なアリシアと一緒に住んでいる。

 そう、これ以上のファンタジーが起こると思ってはいけない。


 リアルを思いだせ。

 父は母が浮気をして別居しそれでも母にお金を払い続けていた。

 相手が浮気しようが離婚の話し合い中だろうがお金を払い続けるルールらしい。

 性欲は母に似て鈍感さは父に似ている、それが俺だ。


 この世界は日本よりギスギスしておらず優しいように見える。

 それでも俺が結婚に向くとは思えない。


 目立ってはいけない。

 日本で目立った人がどうなったか見てきた。

 有名人がうっぷん晴らしの生贄になっていた。

 起業家が潰されていた。

 寄付をした人が叩かれていた。

 少なくとも日本で目立ち上に行く事にメリットはない。

 金持ちだけど普通の家に住んで金持ちであることを隠す。

 日本においてはこれが正解だ。


 この世界は日本とは違う。

 そう考える事もあった。

 でも上にいる文官や王は忙しそうで食事をしていても構わず部下が相談に来るらしい。

 戦士や魔導士の称号を持つエリートは毎日のようにモンスターを倒しに行って大変そうに見える。


 俺は近くにいる人だけを救えればいい。

 国を変えるのはハイン、ああいう人間なんだろう。

 俺はモブでいい、モブがいい。


 コツコツコツコツ!


 アリシアが来た。


「ごめん! シャワーが長くなった。今あがるから」


 布の擦れる音が聞こえる。

 まるでアリシアが服を脱いでいるように、いや、妄想に違いない。

 でもこの気配は明らかに服を脱ぐ音。

 ゴクリ!


 落ち着け、脱いでタオルを巻くんだろう。

 早く上がろう。


 ガチャ!

 アリシアがシャワールームの扉を開けて入ってきた。


「……え?」


 振り返ると生まれたままの姿のアリシアがいた。

 想像した通り、完璧なプロポーションだ。


 シャワールームに入った後も俺に迫ってくる。

 俺は思わず後ろに下がるがアリシアが逆壁ドンをした。


 アリシアの胸がぷにゅぽよんと揺れた。

 そして前のめりになりながら俺の顔を見上げる。


「渡さないから、あの子には渡さないから!」

「な。何の話?」

「ヨウコはダメよ!」

「えええ、急に」


「……私が洗ってあげるわ」

「もう、洗い終わったから」

「私が洗うわ」

「……はい」


 アリシアの体を見て洗ってもらいたい欲望に負けた。

 俺はアリシアに背を向けて座る。

 アリシアはスポンジではなく手で撫で回すように俺の背中を洗った。


「く! ちょっと」

「なに?」

「いや、今手で触られると、色々まずいから」


「大きくなるのをずっと我慢していたのよね?」

「な!」

「分かるわよ、我慢しなくていいわ。私が気持ちよくしてあげる」

「……」


 アリシアが俺の体を洗う。

 バレていたのか。

 瞑想をしよう。

 心を落ち着ける。


 だがアリシアは抱き着くように俺の胸や胸やお腹、太ももを洗い出す。

 当然そうなればアリシアの立派な胸のふくらみがぽよん! ぷゆん! ふにゅん! と当たる。


 これはファンタジーじゃない。

 リアルなぽよん! ぷゆん! ふにゅん! を背中に感じる。


 更にアリシアの洗い方が洗う為じゃなく気持ちよくするためにやっているのではないかと思えるほど撫で回してくる。


 朝から我慢し続けている。

 俺は目を閉じて瞑想で呼吸を整えた。


「それ、やめて」

「ちょ! どこ触って!」

「やめなさい」

「アリシアがやめて」


「その呼吸法はやめなさい」

「あ、ちょっと! 本当に駄目だから」

「腕を掴まないで、まだ洗い終わっていないわ」


「アリシア、逆の事をやられたら嫌だろ?」

「いいわよ、私が洗い終わったらね」

「え? いいのか? 全部スルけど」


「ええ、でも、これが終わってからね。習っているのよ。男と女がどうすればいいか。どうすればヨクなりやすいか」


 アリシアの手が俺を責めた。


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 俺はアリシアの手でイッタ。



 ◇



 アリシアは手で俺を気持ちよくしながら何度も話しかけてきた。


『ヨウコはダメよ。気持ちよくなるのは私とだけ』


『クラスの子もダメ』


『ヤリスが気持ちよくなっていいのは私とだけ』


 俺はマーキングをされるようにアリシアの手で気持ちよくなった。


 背中から感じるアリシアの柔らかいぬくもり。


 耳元でささやく声。


 優しく撫で回す手。


 すべてが俺を狂わせた。


「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、まさか、ここまで、してくる、なん、て。はあ、はあ」


「ヤリス、少しは発散できた?」

「出来たけど、まだ足りないから」

「そ、そんな、まだ、こんなに大きいの!」


「アリシア、今度は俺からスルから」


 アリシアが俺から目を逸らした。


「はあ、はあ、ダメ、目を逸らさないでね。洗い終わったら洗っていいって言ったよね? 全部スル。いいって言ったよね?」


 アリシアが何も言わずにシャワールームの扉に手をかけた。

 逃がさない。

 俺は後ろからアリシアを抱きしめる。


 股間がアリシアに当たる。

 それでもかまわず抱きしめた。


「はあ、はあ、アリシアはまだ、体を、洗っていないよね?」


 俺は、もう負けている。

 

 俺は自分の理性に負けている。


 もう止められない。

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