第31話

【テスター視点】


 私はヤリス君の勝利を受けて会議に呼ばれた。

 すでにハイン君は素晴らしい報告書を作成しみんなの前で会議をし色々聞かれたようだ。


 ヤリス君は剣聖アンカー・ソードマスターを倒し圧倒的な成果を出した。

 その上で後日また会議があり私が呼ばれている。

 

 会議室には王の他に重鎮が揃う。

 王が柔らかい表情で話す。


「ハインの報告では剣聖アンカー・ソードマスターをヤリスが倒したようだね。しかも何度も吸血を受けた上で逃げる剣聖を追いかけて倒したんだってね。凄い能力だ。テスターはヤリスをどう国の為に役立てるのが良いと思う?」


 王の目が鋭くなった。

 この発言は重鎮に状況を分かりやすく説明している。

 その上でヤリス君をどう導けばいいか聞かれている。


 王は切れ者だ。

 今の私がもっとも良いと思う案を上げる。


「思いつく案は3つです。1つは捕らえた兵と犯罪者の尋問の為私が魔法をかけ、魔力が尽きればヤリス君の生命力供給で私の魔力を無限回復し、尋問を速やかに終わらせます」


 文官が声をあげる。


「罪人の数が多い、あの数を一気に処理できるのかね?」

「無限に魔力を回復? 信じられんな」

「そこまで生命力を吸われればヤリスが死んでしまうのでは?」

「だが出来るなら尋問の手間が省けその分兵を次の任務に就かせる事が出来る。王政の効率化となるだろう」


「う~ん、テスターは試した方が早い、そう思っているね?」

「はい」


 王は皆を批判しないように私に聞くことで会議をスムーズに進める。


「まずはそれを試してみてもいいでしょうか?」

「い~よ!」


 文官が王の言葉で皆が頷いた。

 分からない事はやって試してみる、この国ではよくやる事だ。


「次の案は、王の言うヤリス君をどう国の為に役立てるとは少し軸がずれるかもしれませんしうまく行くか分かりません」

「うん、言ってみて」


「はい、2つ目の案はヤリス君を讃えるパレードを開く事です、その事で剣聖アンカー・ソードマスターを救出しようとする勢力を炙りだす事が出来るかもしれません。ただこれはやってみなければ相手が出てくるか分かりません」


 今捕らえた剣聖を救出するため敵国の勢力が王都に入り込んでいる。

 パレードを開くとなればお祭り騒ぎの隙に敵の襲撃を誘う事が出来るかもしれない。

 他にも意図はある。

 王は私の意図を理解しているように見える。


「凱旋の際にパレードが出来れば良かったが、少し時期はズレる」

「理由などどうとでもなる。ヤリスは剣聖を倒した」

「だが、パレードはテスターの魔力無限回復の様子を見て決めた方がいいのでは?」


「皆さんの疑念は分かります、ですがやる価値はあります」

「テスターはパレードで剣聖を捕らえたヤリスが狙われる可能性もある、そしてヤリスなら死なない、そういう考えもあるよね?」

「はい」


「しかももしヤリスが狙われて無事奇襲を撃退すれば民はヤリスの事を認める。そうなれば今後ヤリスを国の為に役立てる際に民から嫉妬を受ける事無く話を進められるよね?」

「はい」


「うん、ヤリスの能力を信じられない者も多いかもしれない、テスターへの生命力供給、捕虜の尋問の進捗を見てからでもパレードの用意は遅くないね」


 王は私と話をしながら王が思う方針を伝える。

 

「最期に学園に転入してきたヨウコさんは高い能力が証明されました。ヤリス君とヨウコさんを組ませるべきです」

「い~よ!」


 この意見には反対が無いようで文官が頷いた。

 今回の会議は普段ヤリス君の事を知らない人にヤリス君の事を知らせるためのものだろう。

 ハイン君を呼んで会議を開いて次に私を呼んで会議を開いた。

 2回の会議でヤリス君の存在を周知してもらう、王はそのように考えている。


 更に私と話をする事で他の人間に厳しい事を言わないクッションにしている。


「すぐに進めてもいいでしょうか?」


「会議が終わったら進めて欲しい、その前に、みんな意見はあるかな? 一応尋問の成果を見て実際にやってみて皆には判断して欲しいと思っているよ? どうかな?」


 みんなが同意の言葉を発する。


「うん、決まり、すぐに動こう、王命ね」

「ありがとうございます!」


 私は王の書状を貰い会議室を出た。

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