第24話

【3日目】


「認める、わ、キスだけなら、いいわ」


 アリシアが折れた。


「ああ、アリシアさん、ありがとうございます! 大好きなヤリス君が目の前で他の人が1つになる行為を見続けるのはつらかったでしょう! やっと少しだけでも折れてくれましたね! 偉いです!」


 テスター先生が鎖に繋がれたアリシアを抱きしめる。


「アリシアさん、ヤリス君とのキスはしていい、間違いありませんね?」

「分かったわ」

「邪魔や暴力はやめてくださいね。強いアリシアさんが本気で魔法を使えば弱い私にはひとたまりもありません」


「分かってるわ」

「では私とキスをしてください」

「どうしてそうなるの?」


「噛みつかないか確かめます」

「……分かったわ」

「いただきます」


 テスター先生がアリシアから生命力を吸い取った。

 2人がキスをする光景に興奮する。


「噛みつかなくて偉いです。ヤリス君、アリシアさんに吸血をお願いします」

「いいよ、吸って」

「あむ、ちゅぱ、あふ、はうん!」


 鎖に繋がれたまま血を吸うアリシアにドキドキする。

 アリシアはどんどん血を吸っていく。


「ふぁ、ちゅぱ! ちゅん、ぐぽお! はふう! はう! はあ、はあ、はあ、はあ」

「はい、ヤリス君の濃厚すぎる生命力を吸い酔った状態のまま私とヤリス君を見てください。今から先生とヤリス君でキスをします。ヤリス君、アリシアさんのすぐ前まで来てください」


 アリシアは頭を横に傾けたままとろんとした目で俺を見つめる。


「ヤリス君、こっちを見てください」


 俺とテスター先生が向かい合う。


 テスター先生の誘うような言い方で体が熱くなる。

 アリシアの後はテスター先生の連続攻撃、きつい!


 ガチャン!

 鎖の音が気になってアリシアを見ようとするとテスター先生が俺の頭に両手を添える。


「ダメですよ、私を見てください。ヤリス君は今から私にキスをするんです」


 自分の股間を押さえる為に意識を集中すると不意打ちのようなキスが始まった。

 キスが始まるとテスター先生は舌を入れてきた。


 ガシャンガシャン!


「舌を、入れないで!」

「ん、くちゅ、はあ、はあ、キスなら怒らないと言いました。約束が違いますよ?」

「ずるいわ! 私の時は入れないでおいて今入れるなんて!」


「くちゅ、ちゅぱ! はあ、はあ、したかったからです。ヤリス君とシタかったからです。雰囲気はあるでしょう、何度もキスを中断させるのは良くありません」

「ずるい、ずるいわ!」


「羨ましければ2人ですればいいんです。その怒りの感情は羨ましいからは始まります。先生は皆に怒りや嫉妬ではなく真似をして高めていく存在になって欲しい、そう願っています」


 一見いい風な事を言っているけどこの状況で言うテスター先生の言葉はおかしい。


「私はサキュバスのスキルを持っています。どうすればヤリス君が気持ちよくなるか分かります。知りたくありませんか?」

「な、なんで、そんな、話」


「興味は無いんですか? ヤリス君を気持ちよくしてあげようとは思わないんですか? 自分さえよければそれでいいんですか? 自分が独占すればそれで良くてヤリス君が良くなることは考えないんですか? みんなを助けるより独占が大事、そういう意味で取っていいですか?」

「そ、それは……」


 うわあ、テスター先生が強い。

 思いっきり話を逸らしている気がするけど強すぎる。


 テスター先生は俺の血でアリシアを酔わせている。

 そして拘束3日目だ。

 アリシアの思考力を弱らせたうえで話を逸らしている。

 なんだろう、指導じゃなくて拷問テクに見える。


 アリシアに苦痛は与えていない。

 でも快楽とお預け、そしてアリシアをワザと反応させる行動で追い詰めている。


「私が教えます。ヤリス君が気持ちよくなるディープキスを」

「……」

「ヤリス君、アリシアさんとキスをしましょう。ただしディープキスですよ」

「アリシアさん、ヤリス君を導いてくださいね。大丈夫です、私が教えますから。覚える事でヤリス君が気持ちよくなります。アリシアさんがヤリス君を気持ちよく出来ます」


 こうしてディープキス指導が始まった。



 ◇



「良く出来ました。アリシアさんもヤリス君も偉いです。アリシアさんのリングはもう少し譲歩してくれれば外す事が出来ます。今日は気をつけて帰ってください」


 テスター先生が笑顔で俺達を見送った。


 家に帰るとアリシアが口を開けた。


「アリシア、どうしたの?」

「テスター先生に丸め込まれたわ!」


 気づいた!


「そうだね、でも言う事を聞かないと異端者にされて奴隷にされてしまうかもしれないから、ああするしかなかった。それによく考えたらテスター先生が指導をする事を国が容認、いや、裏で指示されているんかもしれない」


 アリシアが俺の手を握った。


「……シテ」

「え?」

「ヤリスについたテスター先生を私で塗り替えて!」


 俺はアリシアを引き寄せてベッドに向かった。

 アリシアを脱がせて跨らせた。



 ◇



 チュンチュンチュンチュンチュンチュン!


 2人、生まれたままの姿で同じベッドで目覚めた。

 そして一緒にシャワーを浴びて食事は摂らず、身だしなみだけ整える。


 2人で学園に向かう。


「アリシア先輩、ついでにヤリスもおはよう」

「ついで言うな、おはよう」


 数日前も同じことがあった。

 話しかけ方がワンパターンではあるけどどうしてもアリシアと話したいんだろう。


「……アリシア先輩が、きれいになった上でまた更にきれいになった気がする」


「……気のせいよ」

「そ、そうですか」

「そうよ。学園に行くわ」

「あ、足を止めてすいません」

「いいわ」


 アリシアがいつもよりも速足で歩きだす。

 アリシアが俺の手を強く掴んだ。



 学園の教室に座るとヨウコがいた。

 テスター先生もいて、見張っている。

 アリシアが約束を守れるか見ている!


「先生は信じていますよ。ヤリス君とヨウコさんがキスをしてもアリシアさんは怒らないと、学園に来てすぐに毎回生命力を供給してくれると信じています。ヨウコさん、キスをしましょう」


 ざわざわざわざわ!


 アリシアに付けられたままの両手両足のリング。


 いつも来ないはずのテスター先生。


 クラスメートもただならぬ雰囲気を感じて俺達を見る。


「アリシア、キスはOKだから」

「……分かってるわ」


 アリシアはいつものように俺のYシャツを脱がせる。

 そして俺の首筋に噛みついて血を吸った。

 いつもと違うのはアリシアが後ろから俺に抱き着いた事だ。


 クンクン!


 ヨウコが俺とアリシアの匂いを嗅いだ。

 そして俺の唇にキスをする。


「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」


 クラスから歓声が聞こえた。

 前からはヨウコ、後ろからはアリシアが抱き着く。

 


「ああ、いいですよ、アリシアさんは皆にも分けてあげられて偉いです。ヨウコさんもキスを出来て偉いです。ヤリス君も、シテくれて、本当に偉いです」


 テスター先生が俺を見ながら舌なめずりをした。


 そのしぐさがやけに妖艶に見えた。

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