第9話

 美人サキュバス(テスター先生)がアリシアにキスをしながら魔法を使っている。

 アリシアは抵抗しようとするが力が抜けていく。

 クラスの男子全員がテスター先生とアリシアのキスを見つめながら顔を赤くする。


 2人の美人がキスをしている。

 育ち盛りの男には刺激が強すぎる。


「ふ、あふん、くちゅ! ちゅぱ、おん!」


 アリシアが俺に手を伸ばそうとして眠った。

 これはこれで理性を保つのに苦労する。


「キスで生命力を吸い取りながら弱らせつつ眠らせただけです、先生、アリシアさんがご迷惑をおかけしました」

「いえ、助かります」


 サキュバス先生がアリシアを抱いて後ろを向いて教室を出て行く。

 尻を振りながら歩くあの後姿をじっくりと見てしまう。


 俺は、耐えきった。


 アリシアに耐えた。


 ヨウコに耐えた。


 サキュバス先生に耐えた。


 俺は出来るんだ。

 耐えられるんだ。


 頑張った自分を、


 今だけは自分を褒めてあげたい。


「ホームルームを始める。話す内容は亜人スキルを持つ者の特性や特徴についてだ。1時限目の内容と繋がる為講義と思って聞いて欲しい」


 男の先生は落ち着く。

 自分自身と戦わなくていい。

 大分、収まってきた。

 息を整えよう。

 すーはーすーはー。


 ヨウコからいい香りが漂ってくる。

 ふっと横を見るとヨウコが真顔で俺を見ている。


 それ何?

 どういう感情?

 なんで俺をじっと見ている?


 い、いやいや、今は授業、授業に集中だ。

 ヨウコの唇を見てはいけない。


「皆も知っている通りスキルにはノーマルスキルとレアスキルがある。


「亜人スキルの特性を話す前にスキルの大別からだ。は大きく分けてノーマルスキルとレアスキルに分けられる。レアスキルは勇者・賢者・剣聖・亜人系もソレにあたる。つまり亜人スキルはレアスキルに分けられる」


 15才で固有のスキルを覚える。

 俺の治癒力アップの他に攻撃力アップ、炎魔法などがノーマルスキルでほとんどの人間がノーマルスキルだ。

 レアスキルは希少だったり重要度が高い物を国がレアスキルに定めている。


「亜人系のレアスキルはヨウコのように体の一部が変化する。その他の特徴としては瞳が赤く、何らかの方法で生命力を吸収でき、そして愛が強い」


 あくまで傾向の話で絶対そうとは言えない。

 だがアリシアを見ていると納得できる。

 愛が強ければ執着が生まれ感情が動く。

 でもサイコパスみたいな人間なら人が死んでも心は動かない。


「亜人スキルは皆の協力で生命力を吸い取れる環境においては何度も回復してスキルを繰り返し使用できるため急速に力を伸ばせる反面協力が無い場合弱って日常の活動も制限される」


 スキルは使えば使うほど強くなる。

 アリシアの場合俺から血を吸う事自体がスキルの使用となる。

 そして吸血で回復を包スキルを使い魔法を使いスキルを使う事でスキルと能力値が伸びる。

 疲れればまた吸血をするサイクルを繰り返す事でスキルも能力値もどんどん上がっていく。

 アリシアは学園期待のエースでもあるのだ。


「ヤリス、ヨウコに見とれていないで次はノーマルスキル、治癒力アップについて説明してくれ」


 教室から笑いが起こる。

 ヨウコに見とれていたのは俺だけじゃないのに、おかしい。


「は、はい! 僕のスキルでもある治癒力アップは傷を受けても状態異常を受けてもバフ以外のすべての状態を回復させます」

「うむ、空腹も、睡魔でさえも回復する。そして痛めつけられればスキルが発動しスキルも能力値も上昇していく。ヤリス、同じ治癒力アップのスキルを持ち英雄になったエムスマイルについて説明して見ろ」


 エムスマイル。

 この国では有名な英雄だけど本を読んで分かった。

 あれはただのドMだ。

 でも思ったことをそのまま言うわけにはいかない。

 だって英雄を侮辱するとかできないし!


「エムスマイル、彼はこの国を守った英雄です。15才でスキルに目覚めてから眠らず、食べず、休まずを心掛け、常に自分自身を痛めつけスキルを磨き続けノーマルスキルでありながら英雄に至りました」


「その通りだ。多くの者は自分の事は天才ではない、そう思っているかもしれない、だがスキルは努力で伸びる。所でヤリス、治癒力アップのスキルは生命力を吸われる事でも伸びる」

「……そうですね」


「ヨウコさえよければヤリスから生命力を吸わせてもらうのもいいだろう」


 クラスのみんなが俺を見た。

 そしてヨウコが真顔で俺を見る。

 ヨウコが何を考えているのか分からないが俺を見続ける。


 ヨウコはキスで生命力を吸える。

 ヨウコの唇がプルンとしていてみずみずしい。

 なんでこんなに、吸いこまれそうになるんだ!


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