さあ、夢は終わりだ
「いくら
「……元気そうだ。やはりこの世界は合っているみたいだ」
えっ。やっぱりあいつがここに
姉はウクレレもどきを振り回し、突きつける。
「私はおまえなんて知らん!」
「そりゃそうだ。知り合いではないからね」
「……す、すとーかー……」
「そういうものでもない」
にこやかに
「閉じ込めるにはこの世界は小さすぎたみたいだからね。元気な時のあなたが、こんなに世界を探るとは思わなかった」
「生きていくには知ることが必要だ」
「…………」
青年は、静かに目を細める。
「ちがう。『生かす』ために、
「…………」
「だがそれは、
短く
遠い遠い記憶の中で、母親に無理に
「体調が悪いみたいだよ」
あれには驚いた。ただ
同じように、姉は今。
「おまえの
そう言い切った。
知り合いではないと言い、知らないと言い切ったのに。
姉と手を
金髪の男が目を見開き、震え、顔を引きつらせる。
「しね!」
男の声なき攻撃は、影を
姉の肉体が見えない弾丸によって傷つき、血がそこから
「なんてことを……! 一度たりとも、そんなことはしなかったじゃないか! シュテルン! どうして!」
「『たった一度』でいい」
「弟を殺せばまた」
「
「狂ってる……一度のために、彼女を犠牲にするなんて!」
俺は、振り向く姉を見つめることしかできなかった。ゆっくりと、上半身を起き上がらせる。
なんで。
姉ちゃん、
「だいじょぶだいじょぶ。これは『夢』だから」
「ゆめ……?」
本当に、夢?
だって普通に生活をしていた。走れば息切れして、おなかも
夢というには、リアルすぎる。
目の前の、頭を
「姉ちゃん……ほんとに、夢? 起きたら、どうなってる……?」
こわい。こわい。だって、さっき。
「草スープは
「…………」
「太陽は
「どこから夢……? 最初から? どこが夢……?」
ゆめだったらいいなんて、誰もが思うことだ。そうであればいいのにと願うことも多い。
でも、これが、こんなことが、ゆめ?
じゃあ俺は眠っている? これは目覚められる夢? この世界を幻というには、あまりにも現実的すぎないか? じゃあ今日が夢? そういえばあの金髪の男はどこにいった? 今日だけが、ハリボテみたいな、どこか
ほんとうにゆめ? 服に広がるそれ、血じゃないの? 今日だけが夢?
ゆめって、どんなものだっけ? 現実となにが違うんだ? 現実ってなにを
姉が気を失うようにこちらに倒れ込んでくる。ヒッ、と小さな声が出た。抱きとめるけど、こんなに人間て…………重いっけ?
「ね……な……」
うまく言葉が出ない。姉はまったく動かない。それなのに、俺の手は血でべっとりと汚れている。どんどん、なんか冷たくなっていないか? 血って、こんな、べちゃっとしてた……?
いやだ。こわい。こわい!
涙が
こんなの、いやだ。ゆめなら、夢なら、本当に夢だというなら……!
「さあ、もう夢は終わりだ。
合図のように、俺は大きく息を吐き出し、
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