24
彼女はホッと一息ついていた。
コンパクトの方は無事だったようだけど、
俺は体を縮こまって怯えている
一体何に怯えているのだろう。
「大丈夫?
「……あ……あ」
「
俺の声にやっと反応してくれた
「こ、
「何かあった?」
「……か、鏡に……」
「うん……」
「あ……いや、やっぱり見間違いだったかも」
「え?」
「ご、ごめん
唐突に表情を変えた
彼女はらしくない言い訳をしながら、コンパクトを持っている
彼女はコンパクトよりも
確かに、
彼女が人から借りた物を投げ捨てるような女の子には思えない。
少なくとも、数日過ごした俺には。
だけど、本当に何かを見間違えたのかもしれない。
寝不足で幻覚を見た可能性だってある。
だから、俺は
だけど、
それはある休み時間のこと。
俺は
朝の出来事なんぞすっかり忘れてしまった俺たち三人は、呑気にお喋りをしながらトイレへとたどり着く。
……その間のことはあまり語りたくないのだが、とにかく用を済ませたということだ。
そうなれば当然向かうのは洗面台である。
そして、洗面台には当たり前の如く鏡が壁に張り付けられている。
コンパクトのような小さな鏡じゃない。小学生の肩より上は造作もないくらい大きな鏡だ。
先に手を洗っていた俺は、
「ふー……せっかくだし、待ってておくか」
「あ、ごめん
「え? ううん、全然待ってないよ
先に出てきたのは
すっきりとした表情を見せながら、彼女は手を洗うために洗面台へと近づく。
……気にしているわけではなかった。
その時だけは、俺は
だから、彼女の表情にも気づけたんだと思う。
「――っ!?」
「
そのせいで口に加えていたハンカチを落としてしまったが、彼女はそれを意に介さない。
彼女は恐怖に満ちた表情と共に、口をパクパクさせていたのだ。
「
俺はすぐに
彼女が恐れているのは鏡だ。
だからすぐに鏡を睨みつけた。
……そこには、
「あ……あ……」
「ねえ
「こ……
すっかり怯えきった表情の
もう一度鏡を見た俺だったが、彼女が恐れているモノを捉えることができない。
一体、彼女は何に怯えているというのだろう。
映っているのはさっきと変わらず
「……? 何も映ってないけど……」
「え……? ほ、本当に言ってるの?」
「……うん」
俺の困惑している表情に気がついたのか、
そしてすぐに首を横に振った。
恐らく、自分がウソをついていると思われていると判断したのだろう。
だが、そんな青ざめた顔を見れば
むしろ、
その事実だけで俺は背筋が寒くなるよ。
「違う……違うの! 私、ウソなんてついて――」
「大丈夫だよ
パニックになって指を指しながら否定している
とっさに、俺は彼女を抱きしめた。
小学生をなだめるために、彼女の背中を優しく擦ってあげる。
今は同じ小学生だが、心は男子高校生だ。
これくらいの心の余裕は見せておかないとな。
「こ、
「よしよし。大丈夫だよ。大丈夫」
「うぅ……」
耐えきれなくなったのか、
すすり泣いて、しゃっくりを繰り返す
いつの間にかトイレから出てきていた
考えが追いついていないのだろう。
俺は
「え? 鏡に何か映ってるの?」
「うん。
友だちの危機だからか、
恐らく、俺と
というか、それしか考えられない。考えたくない。
お化けは嫌だ。
「……鏡には何も感じない」
「そうなの?」
「
「え? わ、分かった」
鏡のツルツルとした肌触りが直に伝わり、ひんやりとして気持ちいい。
だが、それくらいしか俺には分からない。
苦笑をしながら、俺は
「アハハ……私には分かんないや」
「そっか。でも
「でも、だとしたらどうして
「それは分からないけど……」
魔法という超常現象を扱える
どういう意味なのだろうか。
「そうだ! ねえ
「な……なに?」
嗚咽を交えさせながら、
俺の胸に顔を埋めていた
「今日、
「どうして……?」
「決まっているよ。鏡に見えた『何か』について教えてほしいんだ」
「……私のこと、信じてくれるの?」
「うん。友だちだから。ねっ、
同時に
そのタイミングで、俺は力強く頷いた。
心強い二人に気圧されたのか、再び泣き出してしまったのだ。
「あー
「
「分かってるよ。
この場の雰囲気を和ませるためか、
いつもは弄られる側なのに、彼女が
それからも、
「何か、変わったね
「え!?」
「何驚いてるのー? あ、別に悪い意味で言ったんじゃないよ! ただ……ちょっと頼りがいがあるなって思って……」
「そ、そうかな!?
「なんかね……大人になったなーって思って……」
マズい……!
あまり頼りがいのあるところを見せてもダメなのか……!
でも、今日みたいに小学生が泣いている姿を見過ごすのも嫌だしなあ……。
加減が難しいと思う今日このごろである。
「う……ごめんね二人とも。ありがと……」
ようやく泣き止んだ
「気にしないで。困った時はお互い様。でしょう?」
「……ふふっ、まさか、
「そ、そう? 意外に思っちゃう?」
「……うん。まあね」
そう言って
目は真っ赤に腫れてしまっているが、彼女の表情は落ち着きを取り戻しつつあった。
「落ち着いた?
「
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