29
俺たち三人は着替えを持ってくるために一旦家へと帰っていく。
そういえば、
多分、この家に入るとそんな疑問が消え去ってしまうのだろう。現に俺もそうだったしな。
今まで疑問に思ったことはないんじゃないか? 俺の記憶からかき消されているかもしれないけど。
玄関で靴を乱暴に脱ぎ捨てて、俺はすぐに
「さて、さっさと準備しなきゃな……」
部屋に入って、俺は適当なリュックを探す。
それはクローゼットの中にあった。女の子らしいピンク色を基調としたリュックだった。
俺はその中に次の日の授業道具や着替えなどを無造作に入れていく。
どうせがさつな
「っと、よし! 行くか!」
リュックに明日を詰め込んだ俺は、
「遅いよ
「えぇ!?
「早くないよ。
俺でさえ少し早いかもと思ったのに、
彼女は仁王立ちで俺こと
彼女は限定商品が残り少ない時の焦りのように、しきりに飛び跳ねて俺を呼んでいる。
仕草は可愛らしいが、そこまでお泊り会が嬉しいのだろうか。
……いや、小学生は嬉しいのかもしれない。
小さなイベントでも、小学生の感覚からすれば天変地異が起きるほどの衝撃。
そんな新鮮さが小学生の特権かもな。
「むぅ……」
「ほら、早く行くよ二人とも」
いつになく
彼女は冷静に俺たちを諭し、先に玄関から出て行く。
鍵がしっかりと閉まっていることを確認して、俺たちは
向かうはずだったが、それは一人の来客によって一度ストップすることになった。
「あれ?
「あ。
「え……? ど、どうして……」
遠くに見える人物。それは俺自身だった。いや、俺の姿を借りた
何で今さら
俺の記憶を有効に使っている
「三人揃って今日はどうしたんだい?」
「今日は
「へえー……それは凄いな。誰が言い出したんだ?」
「
彼女は
そうか。彼女としては認識がないのに名前を知っているのを不快に思っているんだ。
おい
「
「どうしたんですか?
「いや、珍しいと思ってな。こういうのは
「
「……いや、
「え?」
らしくない言葉を吐いた
その彼女の顔に気がついたのか、
「――あ、ああ! すまない
「そうですよ! 私はいっつも信じてるんです。
何で
俺は
「
「うん、分かった。じゃあまたよろしくお願いします、
この場に残っているのは
「……どうしたんだ
「ただ
「俺はただ
これは本当だ。これ
その思いが俺の脳内にひらめきを作り上げたんだ。
でも、
「……嘘」
「嘘じゃない。知ってるか
「え?」
「だけど、
「そんな……そんなことって……」
「それとな
「な、何よ……?」
「まだ自分の可能性を否定するんなら、俺が違うって証明してみせるぜ。魔力のない俺が、この体でな」
「む……無理に決まってるじゃない! 私より魔法も使えない。魔力だってないのに!」
「……だからこそだよ。そんな俺が努力して強くなれば、お前だって才能が関係ないって気づくだろ?」
「……っ」
何か言いたげに唇を噛む
その後は何も言わないで俺に背を向けて走り去っていくだけだった。
待ってろよ
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