28
疑ってかかっている
それから、恥ずかしい変身の呪文を
その瞬間に広がる光の球。それに包まれる俺の体。中でのお着替えタイム。
あっという間に、俺は魔法少女に変身完了していた。
「これが魔法少女。
「へ……へっ!?」
「クラスのみんなには内緒にしておいてね? ……恥ずかしいから」
「あ……あ……」
口をパクパクとさせながら目を異常なほど擦っている
目の前で起こった出来事が信じられないのだろう。
俺だって最初は信じられなかった。いや、信じたくなかった。
他人と体が入れ替わるなんて、あり得ないと思っていた。
そんなのは、同じ学校の猫かぶり女子生徒に告白したら神と戦っていたか、神社で転げ落ちるか、隕石が日本に落ちない限りないと思ってたから。いや、そんな稀なシチュエーションはないか。
とにかく、
彼女は依然として驚きを示している。
「
「そうよ。これはほんとーの出来事なのっ」
この間に否定されたことがよっぽど不服だったに違いない。
俺のような高校生ならあれこれ理屈を付けたりするだろうが、そこは想像力の豊かな小学生。
彼女はすでに何となく受け入れ始めていた。
「へー。じゃあ
「いや、実はあまり守って――むぐっ」
「うん! ちゃんと守ってるんだ! 夜中は三時に起きて退治に行ったり、長くツラい修行をこなしたり、それはもう過酷で過酷で……」
「
そして、ただ突っ立っている俺の手をギュッと握ってくれたのだ。
「人知れず頑張ってたんだね。ごめん、正直言うとちょっと見下してた」
「ちょ! 酷いな
「だからごめんって!」
「まあ、いいけど……。じゃ、話を戻そうか。お願い
「分かった
「うん」
「その男に
「操られている……?」
「そう。
「それが私だって分かる理由はあるの?」
「その子……名前はミリカって言うんだけど、私たちを知っているようだったの。でも、この世界にいる魔法少女は
「そっか……」
「ごめん、知らないうちに私……二人を傷つけてたみたいなんだね」
「謝らなくてもいいよ
「
優しい
それでも
「ありがとう
「兆候はない? 例えば頭が痛くなるとか急に眠くなるとか……」
だけど、彼女が言った言葉は謝罪だった。
「うーん……全然覚えてないよ。兆候といっても、本当に分からない」
「そっか……」
「
「いや、まだ手はあるよ
「それは……?」
「ずっと
「……うん。それは確かにそうだね。そうすれば
「いい案でしょ?
俺は
だって、彼女はとっても澄んだ表情で俺を見つめてくるのだ。
こんな純情な目を持った彼女に、俺は現実を突きつけることができるのだろうか。
そんな心の葛藤に喝を入れてくれたのは
「
「え? いや、ストーカーじゃないよ
「何か違うような……」
……そっか。あの手ならいけるかもしれない。
何となく納得していない
俺は彼女を納得させるために、ある提案を言葉にした。
「
「え? 最近はずっと家にいないよ」
「だったら泊まってもいい?」
「泊まる?」
「そうそう。今日は三人のお泊り会。それなら抵抗はないでしょ?」
「……うん。それならいいかな」
俺の提案に
ストーカーと言えば聞こえは悪いがお泊り会となると話は別だ。
いつもは大人びている
「
「そうだね。あ、
「どうして?」
「私たちがいない時にミリカになったらもったいないからね」
「そっか。そうだね」
そんなこんなで、三人の小さなお泊り会は幕を開けたのだった。
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