17
……
才能なんて……そんなの関係ないじゃないか。
多分、
だから、こんな世界でも
「ハァ……間違っちまったかな」
今更ながら、俺は後悔している。
もう少し優しく語りかければ良かっただろうか。
相手はまだ小学生なんだもんな。
強い口調で言うより、まずは冷静に諭せれば良かったんだ。
「本当に元に戻れなかったらどうしよう……」
一時の感情だと思いたいが、
小学生の手前、かっこよく言い放った俺だったが、普通に考えてみれば
彼女は
仮にも小学生なのだから、友達との別れは最小限にしたいと思う年頃のはずだ。
……ここまで考えて難だが、俺ってカッコ悪いよなあ。
「しょうがない。帰るか」
今日はひとまず
そう思って俺は河川敷の地面より腰を上げる。
そういえば、普段の俺と同じように股を広げて座ってしまっていたがはしたなかっただろうか。
妙にこちらを見てくる人々が多いなとは感じてはいたが……。
その人々は見てかなり落胆していたのもあった。
それは俺がスカートっぽいデニムのズボンを履いていたからだろう。
良かったあ。本物のスカートを履かないでおいて。
というか、そういうところまで気を配らないといけないのか、女の子は。これから気を付けないとな。
そう思いながらも、俺は道路に向かって歩き出そうとしていた。
しかし、それは地面を貫いた弓矢によって遮られる。
「っ――!?」
思わず立ち止まった俺は、すかさず弓矢が放たれた方向に目をやる。
すると、そこにはミリカがいた。
空中に浮かんでいる彼女は、昨日と変わらないセーラー服を身にまとっている。
さらに、ボブカットの髪型も健在で、それも相まって俺への鋭いまなざしも一層強く見えた。
もう一度俺は地面の方に目を向ける。
すると、弓矢は消滅していた。
残っているのは地面の小さな穴とそこから湧き出ている煙だけだった。
もちろん、俺は彼女に激高する。
あと一歩進んでいたら、俺は弓矢に貫かれていたのだから。
「おい! 危ないじゃないか!! 敵対してるからって幾らなんでも――」
ミリカという少女は、無言で弓矢を放つ。
今度は、俺の横の地面が弓矢によって抉られていた。
矢の放たれてくるスピードはとんでもない速度だ。
常人が見切って回避できる速さじゃない。
だが、弓矢の速さよりも衝撃的なことがある。
それは、ミリカが
アイツ、魔法少女じゃない時の俺を狙ってくるのか!?
魔法少女は変身前と変身後の姿が同じでも気づかないんじゃないのかよ!
そんな文句を言ってても、ミリカは俺を射抜くために弓を構えてくる。
「……ミリカ。どうしても俺と戦うのか?」
「ええ。あなたを完璧に叩きのめして、才能のない自覚を持ってもらうためにね」
それは、ミリカから何か吹き込まれたためなのだろうか。
いや、二人は知らないって言ってる。それは絶対にない。
どちらにしても、俺はこの体を守るために変身するしかない。
ミリカと戦わなければならない。
「さあ、早く変身しなさい
何故だ……。
何故、
確かに、アイツは人の気持ちも考えないで迷惑を起こすことも多い。
でも、ちゃんと叱ったら謝るいい子じゃないか。
ミリカの目は違う。
そんな
もっと深い、恨みの感情が見えている……!
俺は緊張で口の中に溜まったつばを飲み込んでから、変身の呪文を唱える。
恥ずかしさはある。だけど、自分を鼓舞するのにこの呪文は必要だった。少なくとも、今の俺には。
球体の中に取り込まれ、服を着せ替える。
エンジェルロッドを手に持った瞬間、球体は破裂して散り散りになった。
そこから現れる俺。
ミリカは不敵な笑みで弓を構えていた。
彼女のほほ笑みの意味は分かる。
このエンジェルロッドでどうやって彼女と戦えばいいかということだ。
完全近距離であるこの武器に対して、彼女は遠距離と近距離にも対応できる弓だ。
だが、このまま黙っていたら的になるだけ。
今は動いて考えをまとめるしかない。
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