23
「
「へ? どしたの
「さっきからこっちをジロジロと……」
「あ、違うんだよ
「この間の体育前の時間といい……そんなに私を見て何を企んでいるの?」
「た、企みなんてそんなまさかー!」
「どうせ
「ちょ、ちょっと
そして、俺の体を弄り始めたのだ。
その彼女の弄り方が妙にこそばゆく、俺は意図せずに笑いだしてしまったということだ。
随分クールだと思った
そこは年相応という感じなのだろうか。
彼女の知られざる一面を垣間見て、かわいいと思ってしまった。
それよりも、だ。
もうすぐ、俺は死んでしまうかもしれない。
笑いに次ぐ笑いで、今の俺は呼吸困難なのだ。
ハヒューといった呼吸にならない呼吸をしながら、俺はまだ大爆笑してしまっている。
なぜこうして冷静に状況を説明できているのか。
それはもちろん、三途の川が見えているからだよ。
「き、
「へっ? あ、ちょっとやりすぎた」
「っ……! っ……!!」
それから、自分の周囲にある空気を全て吸い尽くすくらい大きな深呼吸を繰り返していた。
し、死ぬかと思った……!
道路に向かって目を強張らせている姿はまだ二人には見えないだろう。
しかし、俺は感じている。
今の
彼女としては行き過ぎた悪ふざけだと思っているようで、あまり本気の謝罪ではなさそうだった。
「ご、ごめんごめん
「もー、ちゃんと謝ってよ
「う……分かったよ。
俺が必死に酸素を取り込んでいる間で、
別に俺としては問題ないんだが、
本気の怒りではないが、どちらかと言うと諌めているような口調だ。
これにはさすがの
彼女は俺の肩に手をかけて申し訳なさそうにトーンを下げた声を発したのだった。
「ごめん
「だ、大丈夫だよ
それから三人は学校に向かって歩き出す。
ここで立ち止まっていたら遅刻してしまうしな。
すっかりいつものテンションに戻ったようで、
その中で、
「でもさ
「うーん……」
「どしたのさ?」
「言ってもいいのか悪いのか……」
「何を言われようとも、私は気にしないよ。ほら、言ってみてよ」
「今日ジロジロと見てた理由はね……。
「うん」
「昨日はよく眠れた?」
「ねむ……って、まあちゃんと寝てたけど?」
「そっか。実はね、
「え……? それ本当?」
「本当だよ。確か……
捜索に時間はかからず、
小学生が持つに相応しい、可愛らしい装飾がされているコンパクト。
キャラクター物の何かなのだろうか。それとも、こういうデザインが巷で流行っているのか。
女の子の流行に疎い俺にはよく分からないな……ってか、俺はこの間まで男だったんだから当たり前だっての!
その後で、彼女は俺に目を合わせてくれた。
「はい、
「ありがと。ほら、
俺に指摘されたことが本当かどうかがとっても気になっているようで、俺から受け取ったコンパクトですぐに自分の顔を確認していた。
コンパクトに映された自分の顔を見て、
それが彼女のクマをより一層際立たせてしまうのにも関わらず。
「……本当だ。いつの間にこんなクマが……」
「本当に眠れてるの?」
「うーん……よく寝てるはずなんだけどなあ……」
「自分ではよく寝ているつもりでも、実際には眠れてないってのもよくある話だけどねえ……」
「そういうものかな?」
腑に落ちないような表情でコンパクトの中の鏡と格闘している
そんな
それは彼女が突如目を強張らせたからだ。
「っ――!?」
驚いた拍子に、
コンパクトは蓋を閉じながら地面へと落下していく。
地面に激突したコンパクトはプラスチック特有の軽い音を奏でながらその外観を傷つけていった。
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