ドキドキ!? 魔法少女ライフ!
1
「はい! 今日はこれで終わり! 各自しっかりと勉強しておくよーに!」
俺の一言で、目の前で机に向かっていた女子小学生の一人は大きなため息をつく。
そして、彼女は目を閉じて大きく背伸びをしたのだった。
まるで子猫のような猫撫で声を発しながら、その少女は、今度は腑抜けた声を発した。
「ふへぇ……やーっと終わったあ……」
そそくさと勉強道具を片付け始める女の子。
彼女は勉強中に見せていた重たい目なんか忘れたみたいに、ウキウキとした表情を見せている。
「……君は俺とのお勉強がつまらないのかな!?」
「うん。あんまり面白くない」
「お前な……勉強というものはそういうものなんだぞ」
「えー、教え方が下手くそなだけなんじゃないのー?」
「うぐっ……お前な……!!」
「でもね、勉強は勉強でも、私、あの勉強なら興味あるなー」
「ほ、ほう? それは何だ?」
彼女は俺に対してジト目で見つめ始める。
その動きで、彼女のトレードマークである小さなポニーテールが揺れた。
まだあどけなさが残っている女の子が睨みつけても怖くない。
というか、少しだけ可愛いと思ってしまう自分がいる。
しかし、そんな可憐な表情を見せている少女の口からとんでもない言葉が発せられるのだ。
「イ・ケ・ナ・イお勉強♪ もちろん、
「
「えー、だって年そんなに変わんないじゃーん」
「高校生と小学生くらい年の差があるわっ! 俺とお前だと七・八歳くらいは離れてるはずなんだぞ!!」
「これがオトナの世界だったら三十路と二十歳の恋みたいなもんじゃない。安心して! そんなに変わらないよ! 年の差年の差!」
「大人と子どもは違うんだよ!!」
「へー。……これを見ても、かな?」
そんなことをしても俺には無意味だ。無意味だが、目線はどうしても
それでなくても、彼女の健康的なふとももが八割型見えてしまっているのに。
つまり、デニムスカートは短く、下半身を守る役割をまったく果たしていないのである。
しかし、めくり方のせいで、中はまだ暗闇に満ちていたのだった。
これもいつものお遊びだ。
彼女はいつも先生の俺をからかって遊んでいる。
最初出会った時、彼女は俺にガムをくれた。
ボトルガムじゃない、長方形型のガムが何枚か入っているやつだ。
俺は無意識にそのうちの一枚を取ろうと手を伸ばした。
すると、俺の親指の爪が悲鳴を上げた。
そう、俺はガムパッチンに引っかかったのだ。
それ以来、引っかかりやすい人間だと思われたのかこういう遊びを平気でするようになったというわけだ。
「止めなさい。まったく……」
「残念でしたー、このスカートはズボンになってるんですー」
クククッと小馬鹿にしている表情を見て、やはりこの子は色々と疲れると思った。
態度もそうだが、仮に教えに来ている自分を呼び捨てするとは……。
本来なら怒ってやりたいところだが、最近は少し叱っただけでも親からのクレームが凄いということであまり怒らないようにするのがセオリーとなってしまっている。
勉強するようにと怒っただけで、次の日から職がなくなっていたという怖い噂を友人の友人から聞いたこともある。
くうう……、俺にもう少し威厳があればなあ……!
そんな俺の様子を見かねたのか、もう一人の女の子が彼女を制止し始めた。
暴れ馬と言っても過言でない
彼女を象徴している長い髪は、絹の糸のようにサラサラと彼女の動きに反応していた。
「
諌める少女には逆らえないのか、
「ぶうー、
「せ、先生なんだから当たり前だよ……」
「
「な、何を……?」
「スカートめくり」
「それは私たちがやられる方じゃないのかな……?」
「おっ? やって欲しいのかな
「嫌に決まってるよー……」
何を言っているのかと、
勉強が終わっても、数十分はこうしたやり取りがあるのはいつものことだった。
性格が正反対の二人が、どうして一緒に勉強を受けているのか。
俺には知らない世界が二人の中にあるのだろう。
小学生なんてそんなものなのかもしれない。
まあ、こっちは二人の成績が上がればいいだけだしな。
幸い、二人の素質は十分あるようで、俺が家庭教師についてから成績は上がっている。
「
「何だ
二人の関係が何であろうと気にする必要はないってわけd――ぶっ!
一人夢想しているうちに、
なんと、
彼女は所々にフリルが装飾されているワンピースだった。
だから、スカートの部分が膝下まで来ている。
もちろん、見たくて見たんじゃない。
見えてしまったのだ。彼女の純白の……。
「きゃああああ!」
顔を赤らめさせて、
それから、涙目で俺を見つめ始めた。
「
「えっ!? いやぜんっっぜん見てない! 神に誓うよ!!」
いたたまれなくなって、俺は
先程も考えたが、そもそも何で彼女と
どう見ても仲良くなるタイプ同士じゃないだろう。
そんなに嫌なら付き合い止めればいいのになあ。
「
「え? 何言ってんだよ彼女のは――っ!」
俺はそこで口をつぐむ。
恐ろしい少女だ、
まるで探偵みたいに、敢えて間違っている情報を提示することで相手のミスを誘う。
こういうことがあるから、彼女はまったく侮れない女の子なのだ。
ニヤニヤとした表情を崩さない
俺が見ていたという事実を知っている。
「やっぱり、見てたんですね先生……! 酷いです。幻滅します!」
「見たんじゃない!
「安心して
「変なことには詳しいんだなお前は……」
く、またしても
自分の不甲斐なさをあざ笑うかのように、琴未は俺に頭を差し出しながらはしゃいでいる。
「えへへっ、偉いでしょ。ほめてほめてー」
「誰がほめるかっ! ちゃんと
「ちぇー……。ごめんね
憎まれ口を叩きながらも、
どんなに悪ふざけをしていても、俺が叱ったら彼女はそれに従ってくれる。
最近にしてはまだいい子なんじゃないかと思う。
……そもそも、その悪ふざけがなくなればいいと思うが。
彼女も優しすぎるとは思う。
だけど、その優しさが
二人の微笑ましいやり取りを眺めながら、俺は勉強道具を持ってきていたカバンにしまい込んだ。
いつまでもここで時間を潰しているほど、俺はヒマじゃないのだ。
「ちゃんと復習はしておけよ」
「はーい。
「何言ってるのか大体理解できる自分が悲しいよ……」
こんなに俺に対してバカにした態度をしている
だが、一応先生として見てくれているのか、
「じゃ、またな」
「
Tシャツの上からデニムのジャケットを羽織っている
本当に俺のことを見下しているのなら、お見送りもないはずだ。
多分、ガムパッチン含めた行為はあの子なりのスキンシップなのだろう。
そう思うと、彼女も可愛く見えてくるじゃないか。
……そう思ってないとやってられないというのもあるが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます