20
豪華な夕食を終えた後はお風呂の時間が待っている。
これで早めに上がるのは不味いだろうな……。
俺には
それをおろそかにはできない。
……しかし、
これは恐らく
「……これが
初めて、俺は
小学生の体で更に女の子。
この華奢さで怪物と戦ってきていたのだ。
ポニーテールはお風呂に入っているので崩している。
そのせいで、彼女の硬い髪質の髪の毛が肩までかかっている。
「考えると……これで血だらけになってたのか……」
とっさに考えた作戦だったが、今思うと失敗かもしれない。
彼女の可愛らしい体が傷ついてしまったのだから。
体は治っていても、俺の記憶が、心がちゃんと覚えている。
「これからはなるべく傷つかない作戦でいかないとな……」
その時、お風呂のドアがガラッと開け放たれる。
そこには裸の
彼女は俺が目の前にいるにも関わらず、その裸体を晒している……って当たり前か。
今の俺は
俺は
それから、湯船へと体を浸からせた。
ここは俺から言うしかないのだろうか。
でも黙っててもどうしようもないしな。
「……今日はごめんね、
「どうして?」
「だって……血だらけで倒れちゃってたから……」
「謝ることじゃないよ。
「
「…………」
「今日ね、ミリカと戦った」
「そっか。それで……」
「……ミリカ、私のことを才能ないって言ってた」
「……うん」
「……私、才能ない?」
「そんなことないよ。私は
幼なじみだったのか。
それで、今は身分が違うと。
仲が良さそうなのに、
そして、やっぱり
幼なじみがこんなにも信じているんだから……。
「――
「へっ?」
「ほら、早くお風呂から上がって」
「う、うん」
唐突に、
俺はそれに従うしかなく、頷いてお風呂から上がって
「どうかな
「うん……気持ちいいよ」
これが数十秒続くのかと思っていた俺に衝撃の出来事が走る。
背中から、スポンジとは違う感触がしてきたのだ。
生暖かく、とても気持ちのいい温度が背中を浸していく。
それが人の温もりだと気がついた時には、
彼女の頭が俺の頭に乗っかかる。
その体勢で、
「……私ね、知ってるよ」
「え!?」
一瞬、心臓が止まるかと思った。
だが、
「……修行止めて帰りたいんでしょう?」
「ど、どーして?」
「最近の
「そんな……」
「
今の
今、
……正直、迷った。
これで俺は元の体を取り戻し、ハッピーエンドを迎えるだろう。
だが、もしこれで本当に元の世界に帰ったら二人はどうなる?
「
「……きっと、資格剥奪、かな。それと……」
妙に口ごもる
だが、今のお風呂での会話から察することはできる。
身分の低い
それは
そんな監視役の彼女が、
彼女は
永遠のお別れになってしまう。
それが、今の
あいつは、
それは
それが、才能あるなしの問題で苦悩してしまっている。
そのせいで
ここで俺が言ってしまえば、きっと俺は普通の生活に戻れるだろう。俺だけは。
でも、二人は違う。
少なくとも、
だったら、俺がやることは一つしかない。
「……
「
「その答えはちょっと待っててほしいな」
「え?」
「……確かに、帰りたいって気持ちがある時もあったよ。でも、今は違うの。……強くなりたい」
「
「あのね、私が強くなった姿を見せたい人がいるんだ。それは身近にいるんだけど、どうしようもなく自信がない人なの。他人に迷惑ばっかりかけて、それでいて反省もしない……でもそれは仮の姿。本当は人一倍寂しがりで自分の力を信じられない人」
「そ、それって……」
俺は
さっきしてもらったお返し。
「ヒーミーツ。でも、
「ねえ……なら、まだ帰らないの?」
彼女は決意していたのかもしれない。
俺は
「こんな暗い話は今日だけ。明日からはまた笑って過ごそうよ。
「……ん。うん……!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます