38
先に動いたのはミリカだった。
彼女は魔王へと弓矢を放つ。
でも、だからと言って
俺は……俺たちは
「アハハッ! エンジェルロッドでも浄化できない魔王の力……思い知ることね!」
魔王は高らかに笑うと、俺たちに向かって接近してきた。
彼女は地面すれすれに浮かび上がって、とてつもないスピードでこちらに来る。
俺とミリカは二手に分かれて魔王を捉える。
俺の方はエンジェルロッドをブーメランにし、ミリカは弓を構えて魔王の体に狙いをつけている。
さあ、どっちから始末してくる……!?
「小癪だねえ……! じゃあ、
一瞬ミリカの方かと思ったが、魔王は俺に迫ってくる。
そうだったな。まだ、こいつは俺を
最後までバレずにここまで切り抜けたことを素直に褒めたいところだけど、それは
そうだな。全てが終わったら三人でどっか飯でも食べに行こうか。最近の小学生は何が好きなんだろうな。
まさか……高級料理店とか言い出さないよな? バイトしてるって言ってもそれは無理だぞ。
「よそ見してる余裕があるのかなあ!?
「ああ。俺たちは絶対に負けないからな」
「大した余裕だね。でも無駄だよ
ブーメランの形から元のロッドの形に変更し、接近戦に対応する。
ただ、これは威嚇であって
魔王は手のひらから魔法を繰り出してくる。放ってくる魔法が透明な光に包まれているのは、
小さなクリスタルの棘が俺の体を貫こうと迫る。
俺はロッドを振り回して棘を弾いていく。
「アハハッ! 防ぐだけじゃ私を倒すことなんて不可能だよ!」
「……ああ。そうかもな!」
「うぐっ! ……く、後ろから!」
「後ろには私がいるからね。
「くっ! ミリカね……!」
「魔王。あなたは
勝ち誇ったような表情を浮かべるミリカと、彼女の方を向いて悔しそうに歯ぎしりをする魔王。
俺は魔王の心の乱れを察知し、すぐにエンジェルロッドに光を集めた。
心の余裕がない時にストライクヒットを当てれば、もしかしたら魔王を浄化できるかもしれない。
それが、俺の考えた一か八かの作戦だった。
「今だ……! 喰らえっ魔王!」
「な、何っ!?」
「ストライク……ヒット!!」
ロッドの先を魔王の胸元へと突く。
その瞬間、先に集まっていた光が魔王を包んでいった。
これでいけるか……!?
まだまだ安心できない状況に俺の鼓動は高鳴り、振動している。
「ぐ……! せっかく甦ったのだ……!! たかが魔法少女如きに浄化させられてたまるか……!! ぐおおおおお!!」
「なっ――!」
苦悶の表情を浮かべながら、魔王は雄叫びを上げた。
その瞬間、魔王を取り囲んでいた光が一気に消失した。
やつは、気合で光を消し去ったというのか。
拘束から解き放たれた魔王は俺を睨みつけると勢い良く腕を振るう。俺はその衝撃によって奥の壁へと吹き飛ばされてしまった。
「があっ!」
「
「貴様も同じだ! ミリカ!」
「させな――くっ!!」
俺と同じく、魔王は腕を振ってミリカを吹き飛ばし壁奥へと叩きつける。
魔王は本気でキレてしまったようだ。下手にストライクヒットを撃ったのがマズかったのか……!?
二人とも壁で張り付けになっていることを見て、魔王は俺たちをバカにしたような下品な笑いをして挑発した。
「グハハハハ! 所詮、弱い魔法少女! この我の力に敵うものか!」
「うぅ……! 魔王……!」
「ミリカ。そう言えば、
「教えるわけないじゃない……! バカじゃないの……!?」
「その状態になっても挑発できているのはさすがと言っておこう。いや、褒めているわけではない。自分の状況が分かっていない愚か者として、さすがと言っているのだよ」
「愚か者か……。確かに、私は愚か者かもしれないわ」
「ほう?」
「でも、もう愚か者から卒業するの……! だって、
「
おい、それはアレか?
いや、落ち着け……。アレは魔王が
俺の心を動揺させる術をまだ持っているとは、魔王。お前を少しだけ褒めてやろう……。
「――貴様とは次元の違う人間なのだぞ?」
「うるさい……!
ミリカは俺を信頼している。そんな俺がこんなところで張り付けになっている暇はない。
俺は力を振り絞って壁から脱出し、再び魔王へと接近する。
「待て魔王!」
「
「思ったよ。お前の存在なんか、俺たちから見ればちっぽけな存在だからな」
「人をおちょくるのは実力が伴ってないなければ無意味だというのが分からんのか?」
「俺は諦めない。絶対に
「エンジェルロッドを使用しても無駄なのにどうやって我を浄化させるというのだ? 貴様ら二人の力を持ってしても不可能だというのに」
「二人の力……? そ、そうか……!! その手があったか!」
魔王の言うことは間違っている。俺とミリカは、まだ本当の意味で力を合わせていない。
魔力は、魔法少女は……
俺は壁にめり込んでいるミリカを助け出し、地面に横たわらせる。
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