エピローグ

事件発生!

 とりあえず話はまとまった。

 俺はまだ琴未ことみとして生活を続ける必要があるようだ。そして、努力することで魔力を溜め、エンジェルロッドに願い事を言えるくらいに成長しなきゃならないらしい。


 かけるの姿になっている琴未ことみは残念そうな顔をしながらも、一種の納得を見せていた。

 逃げようとした自分自身への罰なんだね。そんなことを言っていたな。

 その罰は俺も道連れになるわけなんだが。


「ハァ……何か疲れちゃったよ琴未ことみちゃん……」


 沙里さりちゃんも落ち着きを取り戻している。

 口調は混乱を避けるためか、いつも琴未ことみと接しているような口調になっている。

 というか、その方が俺もやりやすい。

 いきなり仰々しい言葉遣いになったらこっちが困っちゃうし。

 だから、俺も琴未ことみの言葉遣いを真似するようにした。


「ねえ沙里さりちゃん。今日は早めに休もうか?」


「そうだねえ……今日は出前でも頼もうか……」


 何かを作る気力さえないらしい。

 沙里さりちゃんはため息をつきながら、コップの中のジュースを飲み干している。


「ハァ……。何かないかな。リフレッシュするようなもの……」


 その時、沙里さりちゃんの顔つきが変わった。

 何か閃いたのだろうか。


「あ! そういえば冷蔵庫にあったんだった!」


「冷蔵庫? それ何?」


「ふふふ……私の唯一のお楽しみ……巷で評判の甘くておいしいって評判の、私の大好物な……」


 あれ? その台詞、どこかで一度だけ聞いたような気がするぞ。


「いやー最近忙しかったからすっかり忘れてたよー。賞味期限が心配だけど、きっと大丈夫大丈夫♪」


 沙里さりちゃんはウキウキしながら冷蔵庫の取っ手に手をかける。

 そして、勢い良く冷蔵庫を開け放ったのだ。

 目をキラキラさせて冷蔵庫の中を覗く沙里さりちゃん。

 しかし、次第に彼女のキラキラは消え去っていった。


「……おかしいなあ? 何でないんだろ」


「え? 何が?」


「……まさか」


「へっ!?」


 冷静に冷蔵庫の扉を閉めて、俺を見つめる沙里さりちゃん。

 目がマジだ。少し怖い……。


「ねえ琴未ことみちゃん。正直に言ったら怒らないよ。だから教えて?」


「あ、あの沙里さりちゃん……私、まだ沙里さりちゃんが何を探してるのか分からないんだけど……」


「私ね……プリンが大好物なの。だから、高級なプリンを買って冷蔵庫に入れといたんだ……」


「へ、へー。そうなんだあー」


「でもね。ないの」


「プ、プリンが?」


「うん」


 プリン消失事件が起こってしまった。

 俺には今のところまったく見に覚えのないことだ。

 沙里さりちゃんはどうやら俺を疑っているようだが、冤罪に決まってる!

 でも、沙里さりちゃんは涙を堪え始めながら俺に訴えかけたのだった。


琴未ことみちゃんが犯人なんでしょう?」


 俺じゃない。だとしたら……犯人は誰?

 琴未ことみと体を入れ替える前に、まずはこの問題を何とかしないといけないみたいだ。











——————————————————————

応援ありがとうございました!

これで完結とさせていただきます。

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魔法少女?コトミちゃん!~魔法少女と入れ替わったが毎日刺激が強すぎる!~ 烏丸 @crow202403

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