26
見上げると首が痛くなるのは小学生の身長だからなのか。
とにかく、空高くそびえ立っている摩天楼のように、
建設当時は純白のコンクリートで固められていたのだろう。それも今は大気や雨風にさらされたせいで灰色に濁ってしまっている。
中に入ると、ご丁寧にロック式の扉があった。どうやって扉を解除するのかというと、近くに鍵穴があってそれにマンションの鍵を挿すのだ。
「ほえー、セキュリティがちゃんとしてるんだねえ……」
「そうだね
「いや、意味がないよ
「そうかな?」
それに、仮に付けるとしてどんだけの費用がかかるのか想像がつかない。
「着いたよ二人とも。これが私の家」
「へぇー……」
「
「うん。ってあれ?
「え゛!? あ、いやーちょっとね!」
「なーんだ。
「ご、ごめん
「いいよ別に。さ、入って入って」
マンション内にあるエレベーターに乗って自分の家へとたどり着き、
一方の
そりゃそうか。こっちは一軒家だからな。
だが、この二人はどうやって一軒家を手に入れたのだろうか。
いや、異世界から来てる二人だ。考えるのも無駄かもしれない。多分、超魔法でなんかかんかしたんだろう。
先に
「お邪魔しまーす」
「えーっと……そこのつきあたりが私の部屋だから」
「分かったー」
俺が先導していたため、ドアノブを捻って開ける役目は自分となる。
「……ゴクリ」
「どうしたの
「い、いきょ
「う、うん……」
緊張のあまり噛んでしまったが、
意を決して、俺はドアを開け放ったのだった。
そこには、素晴らしい光景が広がっていた。
最初に目に入ったのはベッドだった。
ただのベッドじゃない。可愛らしくファンシーな色と柄の布団。そして様々な動物のぬいぐるみがベッドで休息を取っているのだ。
内装は女の子らしく、淡い桃色の壁がこの部屋の明度を一段階上げているような気がしてくる。
「す、凄い……女の子の部屋だ……」
「
「うっ……」
「脱ぎ散らかした服とか、スナック菓子の袋が床に散乱しなければいいだけどなー」
「ぜ、善処します……」
意味深そうにジト目を向ける
先程から甘くも清々しくなる匂いは香水がかかっているのだろうか。
ふんわりと気づかせてくれる匂いがこの部屋には漂っている。
とにかく、
そんな俺の雰囲気に気がついたのか、
「
「え?」
「ほら。これだよ。匂いの正体は」
「あ……へぇー……こんなのがあるんだー……」
机もまあー整理整頓がちゃんと成されていて、どこかのおてんば娘とは大違いである。
その机に、皿が置いてあったのだ。
皿の中には汚らしい枯れた花が飾られてある。
一種類ではないようで、様々な柄の花びらがあった。
「うん。確かポプリとか言ったかな?」
「へぇー……。何か汚い感じでいい匂いなんて出なそうだけどなあ」
「
「うーん……そうするよ」
その知識は男に戻ったらどこで本領発揮するのかは分からないが、
俺は何となく
自然と俺はぬいぐるみの方に目を向けてしまっていた。
ライオン、トラ、チーターとか色々ある動物のぬいぐるみ。
これじゃ
……ある一つの考えが思い浮かんだ俺はおもむろにライオンを手に取る。
それから、胸の中でギュッと抱きしめたのだった。
よし、準備は完了だ。後は姿見があれば……。
「あ、あれ?」
「どうしたの
「そ、そう?」
「うん!
俺と同じ考えに至ったのか、
どうやら、
「
「
「うん。ここ、鏡がないね」
そう。この部屋には鏡がないのだ。
これが男の子なら問題ないだろう。しかし、
女の子ならば、鏡があるだろうと俺は思った。
差別的かもしれないが確率は女の子の方が高いはずだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます