第11話 シャーロット、堕つ
俺たちはお互いの無事を喜び合った。
二人とも涙を流ししばらくして落ち着いた頃。
シャーロットが少し赤い目でニコリと笑った。
「本当にお久しぶりです。アランくん」
「うん、僕も会えて嬉しいよ」
そこからは自分たちが今までどう過ごしてきたか話した。
僕が魔の山で山籠りをした話をするとシャーロットは最初こそ驚いたもののアランくんらしいと苦笑していた。
シャーロットは「聖女の育て手」と言われるローレンス公爵家の養子になったらしい。
家の人たちはみんな良い人たちと聞いてすごく安心した。
まあラノベでも良い人たちの集まりだったから大丈夫だろうとは思ってたけど。
「アランくんがすっごく強くなっててびっくりしました。私はまだまだです……」
「いや、学園に入る前から
「……そうですか?」
「もちろん」
僕が落ち込むシャーロットを慰めていると扉がノックされる。
シャーロットが返事をし扉が開く。
「大丈夫か?シャーロット殿。おお、アランもいるのか」
「ヘイマンさん」
やってきたのはヘイマンさんだった。
シャーロットの様子を見るにどうやら知り合いだったらしい。
「アラン、よくやったな。ジェームズ王子と聖女殿を守った功績はでかいぞ」
「僕はシャーロットを守りたかっただけだから。それにシャーロットがいなかったら倒せなかったし」
「それでも、だ。フェニックスは最精鋭の近衛が10人がかりでも倒せるか微妙な魔物だ。それを入学前の学生が二人で倒すなんて本来ならありえんぞ」
そう言ってヘイマンさんは鮮やかな赤い羽を2つ取り出す。
そして僕とシャーロットに一つずつ手渡した。
「こいつも加点対象にしてくれるらしいぞ。あとは望むなら勲章もくれるらしいが」
「いらない」
「私もです」
僕たちが揃ってそう言うとヘイマンさんは苦笑する。
多分ヘイマンさんも僕たちがそう言うと分かっていたんだろう。
「お前さんたちらしいな。分かった。陛下にはそう伝えておく」
そこまで話をすると再び扉がノックされた。
返事をすると扉が開く。
「やっほー!アランくんがここにいるって聞いて来たよー!げん……き……」
入ってきたのはメアリーだった。
最初は元気だったけどヘイマンさんを見て声がしぼんでいく。
「へ、ヘイマン様!?」
「さて、用も済んだし儂はここで失礼するとしよう。それでは」
僕はヘイマンさんに手を振る。
ヘイマンさんはニカッと笑って出ていった。
本当に気の良い人だ。
「わ、私もしかして怒らせちゃった……?」
「いやどう見ても怒ってないでしょ。ただ用が済んだから帰っただけだよ」
「よかったぁ……」
メアリーはそっと胸を撫で下ろす。
やっぱりヘイマンさんは尊敬の対象なんだな。
「あ、はじめまして!私メアリーっていいます」
「はじめまして。ベッドの上からですみません。シャーロット=ローレンスと申します」
「シャーロット=ローレンスって……まさか聖女様!?」
メアリーの表情がコロコロ変わっていく。
シャーロットも苦笑して見ている。
「落ち着いてください。私はそんなに大層な存在ではありません。敬語も外していただいて構いませんよ」
「で、でも……」
「お願いします」
「わ、わかり……わかった」
メアリーは緊張していたようだったが話していくうちに表情が柔らかくなっていく。
どうやら仲良くなれそうだな。
僕は仲睦まじげに話す二人の様子を眺める。
それから30分くらい経っただろうか。
メアリーが荷物を持って立ち上がる。
「もう帰るのか?」
「うん。二人とも怪我人だし私はここらへんで帰るね」
「今日はありがとうございました」
「うん!またね!シャーロットちゃん!」
そう言ってメアリーは帰っていった。
合格できればまた会えるよね。
「さて、アランくんちょっといいですか?」
「え?うん。大丈夫だよ」
メアリーを見送るとシャーロットに手招きされる。
何かあったんだろうか。
僕はベッドに座っているシャーロットの横に立つ。
「どうしたの?わっ!?」
いきなり手を引っ張られベッドに寝転がる。
避けることも出来たけどシャーロットの行動を避けるのも何か違う気がした。
僕が仰向けになるとシャーロットが上に覆いかぶさってきた。
顔の距離はとても近く髪の毛が垂れている。
とても甘くていい匂いに包まれドキッとしてしまう。
「ど、どうしたの?」
「メアリーさんとはどういう関係ですか?」
「えっ?」
「まさか交際してるんですか?」
「そ、そんなことないよ!メアリーとは最近知り合った友達!」
何やらものすごい圧を感じたので急いで答える。
シャーロットの目からハイライトが消えていた。
「本当ですか?」
「な、ないよ!あるとしても実戦試験でペアを組んだくらいでやましいことは何もしてない!」
それを言った瞬間、自分は間違ったのだと悟った。
「へぇ……同じペアを……ですか」
「い、いや……僕がぼっちだったのをメアリーは助けてくれただけなんだ!」
なんでだろう。
何も悪いことをしているわけではないのにものすごく罪悪感を感じる。
でもメアリー以外に組めそうな人はいなかったし……
「私ずっとアランくんに会いたかったんです」
「それは僕もだよ」
「でも他の女の子とペアを組んでますよね?」
その事実はどうやっても変えようがない。
シャーロットとベッドに挟まれて逃げ場が無いしそもそも逃げるなんてやましいことをしたと言ってるようなものだ。
「どうやらアランくんは何もわかってないようですね……」
「え……?何を?」
僕が恐る恐る聞くとシャーロットは口を耳元に近づけてくる。
体の距離が接近したため甘い匂いも強くなり頭がクラクラしてくる。
香水の類ではない、これは女の人から発せられるフェロモンのようなもの。
それは年頃の男子である僕も例外なく効く。
「私はアランくんのことが大好きです。私の身も心もとっくにアランくんのものなんですよ……?」
耳元で囁かれ背筋がゾクゾクする。
そして囁かれた言葉の破壊力も高かった。
「だから……アランくんも私のものになってくださいね♡」
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ラブコメ週間一位獲得!
本当にありがとうございます!
シャーロット、闇(病み)属性に覚醒。
※
今までのストーリーに変化はありません。
そして様々な変更をすること、ここに謝罪します。
そして同時に限定ノートにて12話を先行公開!
これからも基本的に一話先を先行公開していく予定です!
砂乃にギフトくれてやってもいい、という方はよかったら覗いて見て下さい!
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