第14話 言えば楽になれる

「緊張しますね……」


横でシャーロットが心配そうな表情で歩いている。

僕はそんなシャーロットの様子に苦笑した。


「大丈夫だって。シャーロットなら絶対に合格してる。むしろ僕の方が怪しいくらいだよ」


「そんな保証なんてありませんよ……聖女だから入学はできますけど実力で入れないと意味がないんですから……」


「シャーロットなら実力で入れるよ。間違いない」


僕たちは入試の結果を見るために学園に向かって歩いていた。

合格していたらそのまま教科書と制服、そして生徒証でもあるバッチを受け取る。

制服は入試を受ける前に採寸をして作ってもらうのだ。

不合格だとしても制服は買ったものなので受け取ることはでき平民からすればその制服を持っているだけで名誉である。


ちなみに僕の採寸は山でやった。

ヘイマンさんに採寸は早めにやれと言われたので一度家に戻ろうとしたのだが修行を中断させるのは勿体ないとのことで山でやった。

ヘイマンさんが学園に伝えておいてくれたらしい。


(ちゃんと合格してるよな……?いくら魔法の試験を受けられなくても大丈夫なはず……)


かくいう僕もめちゃくちゃ不安だった。

でもそれを表に出すわけにはいかない。


「あ、見えてきましたね……」


シャーロットの視線の先には合格者が書かれた掲示板があった。

ここに合格者が入試の順位順に上から書かれているのだ。


「あっ!二人ともありました!」


「えっ?もう見つけたの?」


「はい!見てください!」


シャーロットがそう言って指を指す。

そこには──


1位 618点 シャーロット=ローレンス


2位 587点 アラン 


僕が……2位!?

確か平民の最高記録は23位だったはず……

まさか2位なんて……フェニックスの加点、恐るべし。


「やった!やりましたよアランくん!」


シャーロットが思いっきり抱きついてくる。

この学園に二人とも通うことは僕たちにとって悲願だった。

5年前からの僕たちの夢。

それが叶って嬉しくないはずがなかった。


「うん……!僕たち合格したんだ……!」


僕もシャーロットを思わず抱きしめる。

しばらく抱き合って喜びを噛み締めていると周りの視線が集まっていることに気づく。


「ご、ごほん……制服と教科書を受け取りに行かない?」


「……もう少しくっついていたいです」


「ほ、ほら。ここには人もいるしさ、帰ったら好きにしていいから」


「本当ですか!?」


一気にシャーロットの目が輝き出した。

選択を誤ったかもしれないと思ったけど背に腹は代えられない。

いくら幼馴染といえども平民の僕が貴族で聖女なシャーロットと抱き合っているのはどこかのお偉いさんを怒らせてしまいそうだ。


「それでは早速受け取りに行きましょう」


「……うん」


僕はルンルン気分のシャーロットとともに受付へと歩き出した──


◇◆◇


「お邪魔します」


「はぁ……意外と長かったな……」


僕たちは一緒に僕が泊まっている宿屋まで帰ってきた。

シャーロットはあらかじめ荷物をメイドに渡しそのままついてきていた。


「すぐにお茶をお淹れしますね」


「あ、うん。ありがとう」


シャーロットは慣れたように道具を取り出しお茶を淹れ始める。

あれからシャーロットは毎日のように部屋に来ていた。

もはや鍵を渡しているし、僕よりもこの部屋のキッチンを使い慣れているだろう。


お茶を飲んで一息つく。

シャーロットが淹れてくれたお茶はすごく美味しい。

茶葉も良いのかもしれないけど腕がいいのも間違いなく香りがすごく良い。


「はぁ……美味しかった。ありがとね」


「いえいえ。それよりも……」


カップを置きシャーロットがすり寄ってくる。


「好きに、していいんですよね?」


「い、いやぁ……それは言葉の綾というかなんというか……」


その瞬間、シャーロットの目から闇のように光が無くなる。

なぜ毎度僕は過ちを犯すのだろうと自分を殴りたくなってきた。


「嘘を……ついたんですか?」


「そ、それは……」


「どうして嘘をつくんですか……?アランくんに嘘をつかれるのは悲しいです……」


「ご、ごめん!やっぱり今日はシャーロットの好きにしていいから!」


キラーンとシャーロットの目が光ったと思ったらいつの間にか僕は天井を見上げていた。

え……?今の動き全く見えなかったぞ……?

今までどんなに速い敵でも見逃すことはなかった。

それなのに今は気配を察知することすら出来ていない。

し、シャーロットって何者!?


「好きにしていいなら……アランくんのことを食べちゃってもいいですか?やっぱり我慢できません♡」


シャーロットが獲物を目前にした捕食者のような目で僕を見ている。

少し息を荒げながら僕の頬をそっと撫でた。

僕の体は蛇に睨まれた蛙のように動かない。


「アランくんもシたいですよね……?素直にシたいと言えばシてあげますよ」


耳元で悪魔のささやきをしてくる。

シャーロットの体はそういう魅力に溢れている。

豊満な二つの果実、プリッとしたお尻、くっきりとしたくびれ、シャーロットの体に魅力が無いところなんてない。


「ほら……言えば楽になれますよ……?」


僕はごくりと唾を飲み込んだ。


──────────────────────────

電車でこの話を書いてて隣の人に見られてないかめっちゃ不安だった……

毎回そういう系の話を書くときは周りを気にしてしまう笑


そして昨日たくさんのコメントを頂いて思った……

多分砂乃が言いたかったのМじゃなくてギャップだわ!(どんな間違いだ

本文のミスじゃないから許される……はず

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