第20話 伝説の力(王子視点)
「
その瞬間、平民の姿が一瞬にして消え激しい光と雷鳴が轟く。
「残り……6匹」
「なっ……!なにが起きた……」
見れば前衛を務めていた5人が全て倒れている。
そしてその亡骸の上にぼうっと平民は立つ。
「貴様ぁ!何をした!」
「別に答える義理はない。全員まとめて消すだけだよ」
こいつ……さっきと雰囲気が変わりやがった……!
明らかにさっきまでとは違う。
「や、やれ!」
「「「
全力を持って打ち込むが全てかわされまるで当たる気がしない。
「もう終わり?なら僕からいくよ。
そう唱えた瞬間、雷でできた巨大な弓が現れる。
雷属性なのか!?
しかし焦っている暇もなく巨大な雷の矢が現れこちらに放たれる。
「た、退避!」
しかし
「な、なぜ……お前がその魔法を使えるんだ……」
「
確かに平民が勇者と成ったことで魔法を使えるようになった事例は存在する。
それでも雷属性なんてものはあってはならなかった。
「雷魔法は初代勇者が使っていた属性で過去数百年間誰も使えなかった魔法なんだぞ……!」
雷属性は数ある魔法の圧倒的頂点に君臨すると言われその強さは聖女の魔法ですら足元にも及ばないという。
その力で初代勇者は数え切れないほどの伝説を作ってきた。
原作ですら誰も使えていない魔法だ。
それを……こいつが……!?
「こ、この化け物がぁ!やれ!誰かこいつを殺せ!」
「む、無理です……!」
「こんな奴と戦ったら死んじまう……」
後ろを見ると残った奴らは全員逃げ出そうとしていた。
「ふざけるな!」
「す、すみません殿下!」
「ひぃ!」
一喝するも虚しく近衛は逃げ出す。
な……!近衛のくせに王子の命に逆らうのか……!
「安心してよ。みんな仲良く送ってあげるから」
そう言った平民の指先から雷の弾丸が射出される。
それらは全て的確に逃亡した奴らを貫いた。
「全滅……だと……」
もう周りに味方は1人も残っていなかった。
目の前の現実が信じられず思わず膝をつく。
コツコツ、と足音が近づいてくる。
顔を上げて睨みつけると平民は無表情で見下ろしてくる。
(なぜだ……なぜこいつは……)
◇◆◇
(あれ……?俺王子になってないか?)
そう気づいたのはそう時間はかからなかった。
俺はいわゆる転生者というやつで0歳の頃からすでに自我があった。
(ということはシャーロットは俺のものに……!)
俺は原作を読んでシャーロットの挿絵を見るといつも思っていた。
こんな女が実在していたらどれだけよかっただろうかと。
こんな女を自由に抱けたらどれだけ幸せだろうかと。
(よし……!物語通りシャーロットは絶対に俺のものにする……!)
そこから俺は計画を練り始めた。
どうすればいかに楽に手籠めにできるか。
俺は努力をするのが死ぬほど嫌だった。
せっかく王子という良い身分に生まれたのに命の危険を冒しながら冒険なんてしたくないし自分で動くより人を使うほうが楽に決まってる。
「おい。少し協力しろ」
「はっ!なんですかな?王子殿下」
「銀髪の俺と同い年くらいの女をさらってこい。場所はこの街だ」
「ちなみに報酬は……」
「安心しろ。たっぷり出してやるよ」
「それはそれは……お任せを」
「ああ。頼んだぞ。バルザック」
俺は万が一を想定し本来原作でシャーロットをさらうはずだった人攫いたちを前もって捕縛し自分の手の者を送ることにした。
しかし……
「た、隊長!こいつはバルザックです!」
「な、なんだと!?ま、まさかこの少年が倒したというのか?」
(なぜこいつがこんなところにいる……原作ではたどり着けなかったではないか!)
その後にシャーロットを学園に誘っても原作では二つ返事で了承したのになかなか首を縦に振らなかった。
なんとかシャーロットを説得しアランから引き剥がすことに成功したのにシャーロットに全く接触することができなかった。
というかシャーロットが男と事務的な会話以外をしているところを見たことがない。
(まぁいい。どうせ奴は入試で死ぬ。そのときにちょっと慰めてやればシャーロットも俺のものになるだろう)
そう特に気負わずなんとかなるだろうという気持ちがあった。
しかし現実はそうはならなかった。
「僕の……勝ちだ!」
アランは死なないどころか逆にフェニックスを討ち取った。
シャーロットもなぜかこの段階で
(一体何が起こっているんだ……原作と展開が全然違うじゃないか!)
こうなったら決闘で無理やり引き剥がすしか……
シャーロットは必ず俺の手に……!
◇◆◇
「ぐっ……!?」
腹に強い衝撃を受けて吹っ飛ばされる。
もはや抵抗する力もなくただ一方的に蹂躙される。
(なぜだ……計画は完璧だったはず……なのにこいつはなぜ……)
勇者は成ってから数ヶ月は能力が著しく落ちる。
それは勇者の圧倒的な力に耐えるために器を作っているのためだ。
にも関わらずこいつは超人的な動きを見せあろうことか雷魔法すら使ってみせた。
こんなのはあってはならないはずなのに……
「シャーロットに謝れ。謝ったところで許すつもりはないけど」
「わ、悪かった……だからもう……」
「許すつもりはないと言っているでしょ」
「ブヘェ!?」
顔に強い衝撃が走り再び吹っ飛ばされる。
もう体中傷だらけで痛覚も麻痺し始めていた。
「はぁ……もういいよ」
アランのその言葉に光明が差す。
もうこの状況から抜け出せるならなんでもよかった。
「許してくれるのか……?」
「そんなわけないでしょ。もうここらでトドメをさしてあげるって言ってんの」
アランの持つ剣が高く掲げられる。
それを振り下ろされれば間違いなく致命傷どころか即死だ。
「や、やめろぉぉぉぉ!!!!!」
「消えろ」
─────────────────────────
あと1日頑張れば四連休!
砂乃も学校頑張って行きます!
あと一日だと自分に言い聞かせて……!
次の話で決闘編は終了。
王子の結末はいかに……!
あと二話投稿したらSS出します。
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