第8話 運命との邂逅

いよいよ迎えた入試の日。

僕は今、前半の項目である筆記試験を受けていた。

教科としては計算、歴史、地理の3教科。

計算は僕に頭に流れ込んできた知識が役に立ったためほとんど勉強しなくてもスラスラ解くことができた。

問題は歴史と地理。


(ノビリタス学園の入試なだけあって結構難しいな……)


だけどここではヘイマンさんの教えが役に立った。

過去問を分析してくれたり要点をまとめて説明してくれたのでほとんどヘイマンさんから教わった内容だった。

僕は心の中でお礼を言う。

その後も解き続けテスト用紙が回収されるときには確かな手応えを感じていた───


◇◆◇


「問題はこっちだよなぁ……」


ペーパーテストを終えた僕たちは先生たちの指示に従ってとある広場に来た。

そして整列させられ台の上に立つ先生の長ったらしい話を聞かされている。

今から行われるのは対魔物の実戦テスト。

もちろん命の危険が迫るようだったら教師が来るし弱い魔物しか放たれていない。

だが……


(僕が死ぬのはこのテストなんだよな)


ラノベでの僕が死んだのはこのテストだった。

強力な魔物が魔王軍の手によって内密に送り込まれ王子を狙ったタイミングでたまたま近くにいた僕が王子を守る。

護衛の人もいたけど違う魔物によって足止めされた。

結果僕は一人で戦わされる羽目になり護衛が来るまでなんとか耐えたものの死んでしまった。


僕だけなんか負担大きすぎじゃない?

物語の終盤で出てくるような魔物を僕が一人で相手するなんて……

まぁ愚痴を言ってもいられない。

僕は僕の全力を尽くすだけだ。


「では今から二人一組になれ!」


えっ!?二人一組……?

何故かラノベと試験内容が変わっていた。

僕は残念ながら学校出身ではないので知り合いが1人もいない。

周りではどんどん組ができていくのに僕は未だに一人ぼっちだ。

ど、どうしよう……!?


「ねえ、そこの君。1人かな?」


「ん?……あ!」


他人行儀に話しかけてきたのはメアリーだった。

いたずらっぽく笑っており初めから僕に気づいていたけどわざとやったようだ。


「1人なんだけど僕と組んでくれない?」


「いいよ〜!そのためにアランくんに声をかけたんだから」


こうして僕たちはペアを組むことになった。

知り合いとペアを組めたのはかなり嬉しい。


「それでは試験開始!」


先生の号令と共に一斉に生徒たちは走り出す。

試験会場であるエリアにいる魔物をどれだけ倒せるかが得点に影響するため高得点を取るためには早さも命だ。

僕は移動している生徒の中から王子を探す。


(……いた。隣にいるのはロバートかな?)


ロバートはラノベでは王子の側近でありシャーロットたちの旅に同行し貢献したキャラだ。

最終的にはシャーロットに恋心を抱くのだが親友である王子との友情と板挟みになったが最終的に王子との関係を守ることにした忠義の士だ。

本に入っていた挿絵にそっくりだからすぐに分かった。


「メアリー!王子たちを追うよ!」


「へ?あ!ちょっと待ってよ〜!」


バレないように距離を保ちながら王子たちを追う。

さて……魔物はいつ来るんだ……?

しかししばらく経っても何も起こらない。


「ねえどうしたの?アランくん」


「王子が少し気になってね。中々直に見れる機会はないでしょ?」


王子なんかに1ミリも興味はないけどとりあえず誤魔化しておく。

メアリーも納得したようで一度頷くがすぐさま呆れた顔になった。


「でも合格したら同級生じゃん」


「あ、あはは〜まぁね……──っ!?」


墓穴を掘ったかと思った瞬間、背筋が凍るかのような気配を感じた。

しかしメアリーも王子たちも気づいている様子はない。

な、なんだ……!?この気配は……!

そして辺りを見渡した瞬間、僕は王子に禍々しい気配が接近していることに気づき急いで走り出す。


「ど、どうしたの!?」


「すまん!そこにいてくれ!」


僕はメアリーにそれだけ言い残す。

もうかなり接近してきているというのに未だに王子とロバートは気づいていない。

まさか気配に気づくことができずここまで接近を許すことになるとは思わなかった。

くそ……間に合わないか……!?

明らかに間に合わない距離に僕は焦る。


そしてついにその魔物は姿を現した。

10mを超えるような巨躯、燃えるような赤い羽毛、鋭い爪。

その高い生命力から不死の名を冠する魔物、不死鳥フェニックスだった。


「やっぱりフェニックスか……」


王子たちはようやく気がついたみたいで慌てて剣を抜き始める。

しかしどう考えても王子たちの実力ではフェニックスの攻撃を一撃も受けることはできないだろう。

僕が追いつく間も無くフェニックスは激しく燃え盛る炎を吐き出した。

炎が王子たちに直撃する寸前、僕の耳に懐かしい声が聞こえてきた。


防御障壁ダメージウォール!」


白く優しい光が王子たちを包み込み炎から守り始める。

僕は慌てて声のした方を見ると少し離れた高台に長く美しい銀髪を持った少女が立っていた。


「シャーロット……」


僕はその美しい姿に一瞬言葉を失った。

それほどまでにシャーロットはとても美しく成長していた。

しかし、フェニックスは今度はシャーロットを標的にしたようで大きく旋回し加速する。


「いけない!王子はもう大丈夫そうだしシャーロットを守らないと!」


僕は急いでシャーロットがいる方へ進行方向を変えた。

シャーロットのもとにたどり着くまで少々時間がかかってしまった。

到着したときには既に戦いが始まっており少しずつシャーロットが劣勢になっていた。


「あっ……!」


フェニックスの爪の攻撃を防いだタイミングで防御障壁ダメージウォールが破壊されシャーロットがバランスを崩す。

僕は一瞬で距離を詰めシャーロットの前に立った。

そして迫りくる鋭い爪を弾き返す。


「大丈夫か?シャーロット」


「ア、アランくん……?」


見たところシャーロットに怪我は無い。

どうやら間に合ったようだ。

さあ、修行の成果を見せるときが来た。


僕はこいつとの戦いから生き残って死の運命を変えてみせる!


──────────────────────────

感謝!


蒲生 竜哉 様


おすすめレビューありがとうございました!



日間1位!!!!!!!週間2位!!!!!!!

ついに一位獲りました……!

まさか一位取れるなんて……!


本当にありがとうございます!

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