第47話 訓練……なの?

「あのクソガキめ……私はまだ年寄りと呼ばれる年ではない……!わが拳で叩き潰してくれる……!」


アレックスさんは紳士然とした姿からムキムキマッチョへと変貌する。

あのフォスター様でさえもちょっとどころかドン引きしている。


「アラン殿、はじめの合図を……」


「わ、わかりました。では……はじめ!」


その瞬間、アレックスさんの姿が消えた。

否、一瞬見失うほどの速度でフォスター様に接近する。

巨躯から放たれる横薙ぎの腕が風を切る。


(ら、ラリアット……!?どんな戦い方だよ……!)


「は、はは……面白えじゃねえか。じいさん中々やるな!」


フォスター様は苦笑いしながらそんなことを叫ぶ。

そ、その言葉はまずいんじゃ……?


「だから……年寄りと呼ばれる年ではないと言っているだろうが!」


アレックスさんはさらなる怒気をにじませる。

筋肉はまだまだ盛り上がっていく。

……何も知らない人が見たら魔物と間違えるんじゃないだろうか?

結構見た目の威圧感が半端ないんだけど……


「くらえ……!小僧……!」


「くっ……!?」


アレックスさんの振り抜かれた右腕がフォスター様を吹きとばす。

フォスター様が完全に受けの体勢をとっていたのにも関わらず、だ。


しかしそこでアレックスさんの攻勢は終わらない。

吹き飛んだフォスター様に再び接近し超近距離戦が始まる。


「どうしたどうしたぁぁぁぁぁ!私のことをジジイとぬかしやがったこのクソガキがぁぁぁぁ!!」


「強い……だが簡単にやられる俺じゃないけどなぁ!」


戦況はアレックスさんが優勢。

アレックスさんは両腕で攻撃し一撃一撃が重く確実に急所を狙っているのに対しフォスター様は体格で劣っている上に剣一本で凌がなければならない。

アレックスさんが拳に岩を纏わせることで変に受ければ剣が刃こぼれしてしまうし重い一撃のせいで毎回腕がふっ飛ばされ体勢が崩れる。

正直学生の身であの攻撃に耐えられているのは異常の部類に入るだろう。


「これでこの勝負はしまいよ!」


「……その大振り、頂くぜ。重力増加プラスグラビティ


フォスター様は冷静に、アレックスさんの岩の更に先端に密度を上げた重力増加をかける。

支点から離れた位置に急激に力を加えられればどんな力持ちでも確実に腕は下がり速度は減速する。

あんな高速で動く戦闘中で外せば負けの場面、そんなときにあの精度で魔法を当てられるのは流石フォスター様と言わざるを得ない。

アレックスさんの攻撃を躱しフォスター様が攻勢に出る。


「ぬぅ……!やりますなぁ!」


「沈め。俺の一撃のもとに」


フォスター様の攻撃は一瞬の迷いもなく人体急所の一つである首に吸い込まれていく。

いくら訓練用に刃が潰れた剣であろうと首にもろに喰らえば間違いなく気絶する。

これで勝負あったかと思ったけどアレックスさんは無理やり体を仰け反らし攻撃を回避した。


あ、あの体勢からあれを避けるとかどんな反射神経と体してんの!?


「よ、避けたっ!?」


「まだまだ甘いッ!過去、ヘイマン殿と共に数々の戦場を渡り歩いてきたのだ!簡単にはやられぬ!」


む、無茶苦茶だ……!

この人はヘイマンさんと同じくらいの実力を持っているだろう。

しかしここまで意味のわからない動き方をした人は初めて見た。

おそらく技はヘイマンさんのほうが上、だがアレックスさんはそれを補って余りある体を持っている。

アレックスさんは頭が地面に付きそうなほど体をのけぞっていたのにも関わらず手を使わず腹筋のみで体を起こしその勢いのまま右ストレートを放ちカウンターをしたフォスター様に対し更にカウンターする形でフォスター様に直撃する。


「フンッ!」


「がっ……!?」


フォスター様は吐血し一瞬でふっ飛ばされる。

だ、、大丈夫なの……?

これ訓練だけど下手したら死人出ない……?

僕がそう心配しているとフォスター様はフラフラと立ち上がる。


「だ、大丈夫ですか!?」


「あぁ……心配ねぇよ。俺は……こんなところで負けるわけにはいかねぇんだ!」


「ほう……見事」


「ここまで強いとはな……もうアレを使うしかねぇか……ホントはアランとの戦いまで取っておきたかったんだが……仕方ないな」


「まだ奥の手でもあるのですかな?面白い!正面から叩き潰して見せましょう」


なんかめちゃくちゃ熱い展開になってきてるけどこれ訓練だからね!?

なんか2人の目が輝いちゃってるし……

アレックスさんもフォスター様に劣らない戦闘狂だったなんて……


「今の俺が出せる全力だ……重力拘束グラビティキャプチャー……!」


その魔法はさっきまでとは一線を画していた。

重力の強さもさっきと比較にならないし上からの一方向だけでなく色んな角度から力を加えることで徹底的に封じる。

止まっている状態から力は入りにくいもの。

かなり強力な魔法だ。


「ぬぅ!?これは……!」


「今度こそ終わりにしようぜ……!そいつを食らった時点でもう終わりだよ!」


「本当に見事。見事としか言いようがないな」


アレックスさんがそうつぶやいた瞬間、アレックスさんは動き出す。

重力の拘束を受けたまま、腰を低く落とし構える。


「才能の原石よ。その技と覚悟に全身全霊をもって応えよう……!」


尋常じゃない魔力が一瞬にして拳に集まる。

フォスター様の魔法が抑え込むか、アレックスさんの拳が振り抜かれるか。

勝負は決着のときを迎えようとしている。


「届け……!俺の剣!」


「ゆくぞ……紳士の嗜みマッスルストライク!」


2人の影が交差する。

そして立っていたのは……


「良き若者だ。礼儀作法を学び、出直すとよい」


アレックスさんの拳が天へと突き上げられた──


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今日の午前9時05分より新作を投稿します!


タイトルは


『親友に裏切られ婚約者に捨てられた俺は好き勝手に人生楽しむことにした〜なぜかイカれた狂信者共が続々と忠誠を誓ってくるんだが〜』


https://kakuyomu.jp/works/16818093077840043595


となっております!

ラブコメではなく異世界ファンタジーを真剣に書いたのはこれが初です笑

ぜひ読んでくださると嬉しいです!


詳しくは砂乃の近況にて!


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