第48話 次は僕の番?

「さて、アラン殿。次はあなたの番ですな」


「え……?僕……?」


シャーロットの足元には及ばないけど応急処置程度なら僕でも回復魔法が使えるのでフォスター様の応急処置をしているとアレックスさんが話しかけてくる。


「何を言っているのですか。これは訓練ですのでアラン殿の成長にぜひ役立てていただければ」


あ、そうか。

アレックスさんとフォスター様の戦いが激しすぎて訓練ということがすっかり抜け落ちていた。

というか訓練だと理解した今でもあまり戦いたくない。

アレックスさんの温度感からただの訓練になる気がしなかったのだ。

だが断るわけにもいかず僕は仕方なく訓練用の剣を持ってアレックスさんと向き合った。


「アラン殿は礼儀正しくて好感が持てますな」


「あ、あはは……それはどうも」


よほど年寄りと言われたのを根に持っているんだろう。

年齢ネタで弄ろうなんて最初から考えてなかったけどこれからは気をつけるようにしよう。


「では、始めるといたしましょう。はじめの合図をする者がいないのでアラン殿からどうぞ」


「ではお言葉に甘えて……行きます!」


僕はアレックスさんどころかフォスター様よりも体が小さい。

だから力勝負に持ち込ませちゃダメなんだ……!

僕が勝負できるものはスピード、そして手数の多さだ。

自分の強みを最大限引き出して……アレックスさんに勝つ!


「ほう!先程の戦いをただ見るだけではなく学んでおられる!中々良い手ですぞ!」


僕がフェイントを交え横に抜け出し脇腹めがけて放った一撃目はアレックスさんの腕によって防がれる。

い、いくら刃を潰してるといっても腕で普通止める……?

自信なくなるなもう……


「まだまだ行きますよっ!」


細かい連撃で押していきたいところだけど中途半端な攻撃は筋肉の壁に防がれてダメージが通らない。

となれば手数を多く連撃したままダメージを通す必要があるわけだ。

僕は一呼吸して集中しアレックスさんに肉薄する。


「ぬぅ!こ、これは!」


僕は連撃でアレックスさんを追い詰めていく。

もちろんただの連撃じゃない。

全ての攻撃に全力を込め全て狙いを急所に定めている。

アレックスさんの体は筋肉で盛り上がっている分小回りが効きづらくこの作戦は割と成功していると言っても過言ではなかった。

当然長くは持たないが長期戦になればジリ貧になってこちらが負ける。

唯一の勝機は短期決戦での決着だった。


「これほど芯の込もった攻撃でこの速度と精度で打てるとは見事としか言いようがない!だがこの程度、防げぬほどではない!」


その瞬間、ゾクッと嫌な予感が背筋を走る。

己の勘を信じ押しているこの有利な状況を投げ捨て目で確認もせず回避行動を取る。

そして僕がいたところをアレックスさんの拳が通った。

あと少し回避が遅れていたらもろに喰らっていたかもしれない。

あんな攻撃を喰らえば気を失わずとも数秒は動きを止められその間に決着をつけられてしまう。

一発喰らえば即負けなんて理不尽な戦いだが魔族との戦いはどんな理不尽が起こってもおかしくはなく泣き言は言えなかった。


「あれを避けますか……」


「は、はは……ほとんど勘ですよ。本当に今のは危なかったです」


「この年でもうそこまでの勘を身に着けているとは……この剣術を持ちながら魔法を素晴らしい。本当にアラン殿は底知れないですなぁ……」


戦いにおいて勘は運じゃない。

様々な経験から五感ですらも読み取れていない根拠を無意識下に感じ取り考える暇もなく体が勝手に動く。

それこそが戦いの勘なのだ。


「魔法はシャーロットに貰った力ですから。誰かに誇るなんてできませんよ」


「それは違いますよ」


「え?」


「あなたはたとえ貰った力であってもたゆまず驕らず怠らず力を磨き続けてきた。そのことが大切なのでありあなたの実力だ。それを卑下する必要はないのですよ」


自分の努力を認められて嬉しくなる。

しかしだからこそ今回は剣だけで勝ちたい。

元々剣術の授業だし剣で勝つことに意味があるのだから。


「……いい表情ですな」


「魔法を褒めてもらったので剣も認めてもらおうかと思いましてね」


「何を言っているのですか。アラン殿の剣は学生離れしすぎているほどに素晴らしい。誇っていいですよ」


「僕は学生じゃなくを目指しているんですよ。シャーロットを……僕の大切な人たちを守るために」


「……その覚悟を受け止めましょう。全力でかかってきてください」


「わかってますよ。これで決めます」


僕は剣を握りしめ突撃する。

元々僕は魔法より剣の腕を磨いてきた時間のほうが長いんだ……!

だから……この戦いで証明して見せる!

僕の歩んできた剣の道を!


集中を高めアレックスさんの腕の動きを観察する。

そして、何百何千と繰り返してきた動作を行う。


「受け流し」


連撃を得意とする武闘家相手にこの技は使いづらい。

それでも僕がアレックスさんの胸元まで潜り込むにはこれしかないと感じたんだ。

今までは剣身に敵の攻撃を滑らせ受け流してきたが間合いの短い腕に対応しきれない。

ならばどうするか。

だけだ。

剣身ではなく咄嗟に剣をひっくり返し剣の柄でコツンと横からアレックスさんの腕を滑らせ受け流す。


「な、何っ!?」


「僕の……勝ちです」


カウンターに最も適した受け流しを使い振り抜いた一撃がアレックスさんにモロに入る。

確かな手応えを感じる。


「くふっ……み、みご、と……」


そう言って後ろでバタリと倒れる音がする。

あ、危なかった……

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どうやら僕はラノベ世界の聖女の幼馴染らしい、学園で数年ぶりに再会したらなんかヤンデレになってるんだけど? 砂乃一希 @brioche

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