第10話 私の王子様(シャーロット視点)

〜5年前〜


「ここがローレンス公爵の本邸でございます。聖女様」


「ここが……」


私の目の前にはとても大きな家が立っている。

どうやらここが私の受け入れ先らしい。

私は案内されるがまま、家の中に入っていく。

客間と思われる部屋に通されると私の両親くらいの年頃の男女が立っている。


「こんにちは。君が次代の聖女に選ばれたシャーロットちゃんかな?」


「は、はい……選ばれたかはわからないですけどそう説明されました……」


「そうか。私の名前はドミニク=ローレンスだ。これから君の養父になる」


「私の名前はサラ=ローレンスよ。よろしくね。シャーロットちゃん」


「は、はい。よろしくお願いします……」


正直に言ってしまうと知らない大人と話すのは怖い。

目の前の人たちは優しそうだけどそれでも緊張する。

だけど……アランくんとお互い頑張るって指切りしたんだもん。

頑張らなくっちゃ!


◇◆◇


〜数年後〜


「いいかシャーロット。聖女には聖女にしか使えない魔法がいくつもある。それは覚えてるか?」


「はい、お義父さま。元素の加護エレメントブレスなどの補助魔法や聖属性の魔法です」


「うむ。その通りだ」


今は魔法の授業。

聖女は数多くの強力な魔法を使うことができる。

私はその魔法を一つでも多く使えるようになりたい。

強くなれれば戦うアランくんを助けられるかもしれない。


(もう……あんな思いはしたくないです……)


思い出すのは自分が7歳だったとき。

自分は何も出来なくてアランくんが傷ついていくのをただ見ていることしかできなかった。


あの日ほど、自分を情けなく思った日はなかった。

あの日ほど、自分にとってアランくんがどれだけ大きな存在かを実感した日はなかった。

私はアランくんがいないと生きていけない。

だから私は強くなる。アランくんとまた会うその日までに。


「ではいつも通り元素の加護エレメントブレスの練習をしてみよう」


「はい」


元素の加護エレメントブレスは聖女が使う魔法の中でもかなり強力で難度が高い補助魔法。

効果は全ての能力上昇とその属性の付与。

しかし付与した属性によって能力の上がり幅が変化する。

火ならより攻撃力が上がり、土なら防御力、風なら速度、水なら治癒力が強化される。


(大切なのはイメージ……そこに私の想いを乗せる……!)


炎の加護ファイヤブレス!」


すると目の前に赤い光が薄っすらとだが現れる。

やった……!できた……!


「ほう……!もう使えるのか……!」


魔法を使うために大切なのは使う者の心。

そう言われてどうするのがいいのかずっと考えてきた。

考えた末にたどり着いたのはやはりアランくん。

私の魔法は彼を守るために……彼を助けるために使いたい。


「待ってて下さい……私、頑張りますから……!」


私は東の故郷の街の方を向いて再び心に誓った。


◇◆◇


〜入試当日〜


「何の用ですか?ジェームズ様」


私は紙の試験が終わったあと、この国の第一王子であるジェームズ=エリオット様に呼び出されていました。

正直私はこの人が苦手です。

やけに絡んでくるししつこい方です。


「今日の魔物との実戦試験。急遽試験内容を変えてもらった」


「そうですか」


正直試験内容なんて興味がない。

自分の実力で入らないと入試の意味が無いしアランくんはどんな試験であっても合格します。

指切りをして約束してくれたのですから。


「実戦試験は二人一組で行うことになった。俺とペアを組まないか?」


「お断りします」


考えるまでも無いことだった。

私はこの人のことが苦手だし私にはもう心に決めた殿方がいる。

その人以外の男性と二人一組になるなんて絶対に御免だった。


「なぜだ?俺はこの国の王子だぞ?それなりの恩恵も得られる」


「恩恵なんていりませんので。用がそれだけなら私はこれで失礼します」


「なっ!おいちょっと待ってくれ!それなら試験が終わったあとお茶でもどうだ?王室御用達の店があるんだ」


「いえ、今日の試験後はもう予定が入っていますので」


試験の後はアランくんに会うって決めてます。

考えるだけで楽しみです。

アランくんかっこよくなってるんだろうなぁ……


「それじゃあ明日はどうだ?」


「お茶はしません。それでは失礼します」


本当にしつこい人です。

私は返事を待たずにその場を立ち去りました。


そして迎えた試験。

私は社交界で仲良くなったご令嬢とペアを組み試験に臨んでいました。


「シャーロット様!そちらに一匹行きました!」


「はい!対処します!」


私は逃げてきた魔物に向かって詠唱を始めます。


聖なる矢ホーリーアロー!」


詠唱を終えると同時に白い光の矢が現れ魔物を貫く。

私はしっかりとトドメを刺していることを確認し魔物の皮を採取しました。

この一つ一つが魔物を倒した証拠になり入試の得点になるので忘れずに行います。


「結構順調ですね。シャーロット様」


「はい。この調子なら──っ!?」


急に背筋が凍るような気配を感じた。

急いで振り返ると姿こそ見えないものの禍々しい気配が確かに存在している。

遠目をこらして見てみるとジェームズの姿を発見した。


(まさかジェームズ様を狙って……?)


そうだとしたら良い状況ではない。

あんな人でも一応はこの国の王子。

万が一のときのために魔力を練り始めると巨大な赤い鳥が現れ王子にに炎を吐いた。


防御障壁ダメージウォール!」


なんとかジェームズは守れたが今度はこちらに向かってきている。

見るからに私に勝てる相手ではなかった。

でも、アランくんにまだ会えていないのに死ぬわけにはいかない。


「逃げていてください!」


「は、はい。わかりました」


ペアを組んでいた令嬢を逃がし私は魔法の詠唱を始めます。

効くとは思えないですがやるしかありません。


聖なる槍ホーリーランス!」


光の槍がフェニックスに直撃するも傷一つ付いていない。

なんとか防御障壁ダメージウォールで防ぎながら攻撃するも全く効いている様子がなかった。

そしてついに鋭い爪が私の防御障壁ダメージウォールを切り裂いた。


「あっ……!」


もう私を守るものは何もない。

このまま爪で引き裂かれれば私は死ぬ。

死にたくない……まだ……アランくんに会えていない……

その思いも虚しく爪は無情に振り下ろされた。

目をつぶるも一向に痛みがやってこない。

恐る恐る目を開くとそこにはずっと会いたかった男の子が立っていた。


「大丈夫か?シャーロット」


「ア、アランくん……?」


そこには見違えるようにかっこよくなったアランくんが私を守ってくれていました。


ああ、やっぱり……約束を守ってくれるんですね……私の王子様……


◇◆◇


「ん……ここは……?」


目を開けると知らない天井が見えました。

体が重く頭も痛い。

あれ……私、なんでこんなことになってるんでしたっけ……


「シャーロット……!目が覚めたんだね……!」


すると横からずっと聞きたかった声が聞こえてきます。

もしかして……!


「アランくん……!」


「ああ……!よかった無事で……!本当によかった……!」


アランくんの目から涙がこぼれます。

私のために泣いてくれるんですね……

私は感極まってアランくんを抱きしめます。


「お久しぶりです。アランくん」


「うん。久しぶり……!」


気づけば私も泣いていました。


本当に……無事でよかった……



───────────────────────

ついに二人が真の意味で再会!


次回!「シャーロット堕つ」 デュ◯ルスタンバイ!



一昨日から新作投稿を始めました!


タイトルは


初恋のギャルに無慈悲に捨てられた俺、傷心していると学年で一番の美少女に拾われてお持ち帰りされた


です!


https://kakuyomu.jp/works/16818093074567389589


昨日は日間5位を頂きました!

こちらも読んでくださると嬉しいです!

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