第26話 運命の改変と大きな出会い

「我が主に会っていただきたく」


次から次へと一体なんなんだ……

そもそも主って誰だよ……


「主とは誰です?そもそもなんのために?」


「申し訳ありませんが主の名をここで出すことはできません。要件については直接聞いてもらいたく」


何も言う気は無いということか。

そもそもどの立ち位置の人間かもわからないのについてこいという方が無理筋だと思うんだが。


「あなたがたにメリットがある話だと約束致します」


本来ならこんな尾行してくる不審者についていくなんてもっての外だ。

でも今は情報がとにかくほしい。


「シャーロット、どう?」


「はい、この方から悪意のようなものは感じません。心を偽ることはどんなに訓練を積んでいても不可能なので敵ではないと判断してもいいと思います」


敵意は無しと……

虎穴に入らずんば虎子を得ずとも言うしな……


「シャーロットはどうするべきだと思う?」


「私はアリだと思います。今の私達に一番必要なものは情報です。行った先で何か得られるかもしれませんし」


「なるほど……わかりました。話に乗りましょう」


「ありがたく。その判断、必ず後悔はしないでしょう」


◇◆◇


僕たちは名前も知らぬ男についていく。

しばらく歩き人の少ない路地裏まで来ると一つの薄汚い建物の前で止まる。


「到着しました」


「ここにあなたの主が?」


「その通りでございます」


男は扉を開け中に入っていく。

中は外観とは違いとても綺麗に掃除され本格的な拠点として使われているようだ。

僕も一応罠が無いか警戒しながら歩くが人が一人もいないし罠も特になさそうだ。

シャーロットの魔法の有能さを改めて思い知った。


「この部屋に我が主はいます」


一体どんなやつなんだ……

世間一般には勇者の情報は殆ど漏らされていない。

あの貴族たちの様子を見ればそれは一目瞭然だ。

おそらく前もって僕が勇者に成ったと知っていたんだろう。

でなければこんな早さで接触してくるなんて不可能だ。


「入ってもよろしいでしょうか」


男が部屋の中にいると思われる『主』に問うと中から許諾の声が聞こえる。

女性の……声?

扉越しでくぐもっていたため断言はできないが男にしては高い声だった気がする。

男が扉を開き僕たちは恐る恐る中に入る。


「よくぞ参られました。アラン様、シャーロット様」


「……!?貴女様は……!」


シャーロットが横で驚いたような声を上げる。

僕の記憶に無いということは原作では中心キャラじゃなかった可能性が高い。

だとすれば誰だ?

僕は頭を回すが全く誰か見当がつかない。


「とにかく座ってください。あなたがたとは対等にお話させて頂きたいと思います」


一挙手一投足に上品さが感じられその姿は隠しようもないほど気品に溢れている。

そして輝くような金髪とシャーロットとはまた少し違うタイプの絶世の美少女だった。

良い生まれなのは間違いないな。


「突然お呼びしてしまい申し訳ございません。本来ならば私自らお伺いするのが筋というものですが私のこの髪は目立ちますし誰もいないところでお話したかったので」


「いえ、それは構いません。その前にあなたのお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


本当は構わないとは言えないくらい疑いまくってたけどこの話は言う必要はない。

そんなことよりも目の前の少女の正体だ。

シャーロットが知っているということは大貴族の子女かな?


「すみません。自己紹介をしていませんでしたね。申し遅れました、私の名前はアイリス=と申します」


アイリス=エリオット……だって……!?

その名は……この国のの名前じゃないか……

それならなぜこんなところに?

原作では隣国に留学に行きそのまま嫁がされていたはず……


「ご存知のようで嬉しいです。先日、留学を帰国してまいりました。私の配下が興味深い平民が勇者に成ったという情報を掴んだもので」


本人は他国にいるのに勇者に成ったことを掴んでいた。

独断で留学を終わらせることが可能な手腕もそもそもありえないがまとめて帰ってくるのも早すぎる。


「いつから掴んでたんです?」


「入試の日から目を付けていましたよ。何やら学生なのにフェニックスを倒した平民と聖女がいるらしいので。少し調べさせたらシャーロット様がアラン様の泊まる宿に通っていたようなのでそこに希望を見出し帰ってきました」


最後のは全く意味がわからないんだけど!?

それにしても優秀な配下を持っているな……

なぜこの人が原作では無名だったんだ?


「あなたの目的は一体なんなんです?わざわざ僕たちを呼んだ理由はなんですか?」


僕がそう質問するとアイリス殿下はその質問を待ってましたと言わんばかりに満面の笑顔になる。

その笑顔に多くの男は魅了されるはずなのに僕が感じたのは謎の不気味さだった。

本当にこの人は何を考えている?


「あなたがたに私ののお手伝いをしていただきたいと思いまして。あ、もちろんお二人にも利があることですから」


「それは一体……?」


「単刀直入に言わせていただきます。……この国、私達で盗っちゃいませんか?」


僕とシャーロットは思わぬ爆弾発言に言葉を失った。


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☆3000突破!

感謝SSを再び(タイミングが合うときに)出したいと思います!


本当にありがとうございます!

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