第22話 治療

「着きましたよ。アランくん大丈夫ですか……?」


「き、気持ち悪いけどなんとか……」


僕たちはあれからゆっくり休憩を挟みながら寮の部屋まで帰ってきた。

幸いここまで吐いてはいない。


「ほら、ベッドに横になってください」


「うん……」


シャーロットにうながされ僕は自分の部屋のベッドに寝転がる。

一応僕のベッドではあるけどもシャーロットもここで寝ているため共用みたいなものだ。

初日はいきなりベッドに潜り込んできたからびっくりしたけどあの光を失った目には勝てずその日から一緒に寝ることになった。


「では魔力酔いによく効く治療をしましょう」


「どうして外じゃできなかったの?」


「この治療法はごく稀にですが副作用で強い眠気が出る場合があります。そうなった場合はきちんとしたベッドで寝れたほうがいいので」


なるほど。

すごく考えてくれていることはよくわかった。

もし眠くなったらシャーロットを抱き枕にして一緒に寝ようかな……


「それでは早速始めます。そのままうつ伏せでいてください」


「わかった」


僕はなにをされるのかと思いながら待っているとシャーロットが僕の腰辺りに馬乗りになってくる。

その瞬間ムニュッとしたお尻の感触が伝わってきた。

シャーロットはそんなことは気にもしないで声をかけてくる。


「それでは始めますよ」


「う、うん……」


シャーロットは僕の肩甲骨あたりに手を置きなにかを始める。

するとだんだん触られているところが熱くなってきてその熱が体中に巡り始めた。


「っ……何……してるの……?」


「魔力酔いは体が魔法に慣れてないときに魔法を使うと体が驚いてしまって魔力の循環が変な流れになってしまうことで起こります」


雑学?

魔力酔いが起こる原理はわかったけど結局今は何をしてるんだ?


「なので私の魔力をアランくんの体に流して少しずつ循環をコントロールしてるんですよ」


てことはこの熱さの原因はシャーロットの魔力?

確かに少しずつ治ってる感じはする、でもそれ以上に下半身が元気になりそうなんだけど。


「どうですか?気持ちいいですか?この治療法は気持ちいいらしいですから」


めちゃくちゃ気持ちいいです、とは口が裂けても言えなかった。

シャーロットは善意でやってくれてるのだ。

こんな気持ちを今抱くのは不誠実だろう。


「シャーロットはこれやったことあるの?」


「やったことも受けたこともないです。私は魔力酔いが無い体質でしたし特にやる側は好きな男性以外には絶対使うなと言われました」


そりゃあ言われるだろうな!?

見知らぬ男に善意で治療したら襲われてそいつが勇者になりました、なんて全然笑えないぞ!?


「でもアランくんは大好きな男性なので何も問題無いですよね」


「えっ?ま、まぁね……」


問題しかない気がするけど今言うことではない。

シャーロットは鼻歌まで歌いながら治療をしてくれているのだ。

これを止めるのは野暮というものじゃないだろうか。


結局僕は30分ほど耐え続けることになった。


◇◆◇


「どうですか?よくなりましたか?」


「あ、ああ。ありがとう……」


ようやく解放された僕は立ち上がって火照った体を冷やす。

もう色々と大変だった。

僕がホッと息を吐くとある悪戯心が出てくる。


「シャーロットも受けてみない?」


「えっ?でも私は魔力酔いしませんよ?」


「それでもだよ。だってこれは気持ちいい治療法なんでしょ?ならマッサージみたいなものだって。僕にやってくれたお礼も兼ねてさ」


「アランくんがそこまで言うなら……お願いします」


僕はその瞬間勝ちを確信した。

シャーロットはベッドにうつ伏せになり僕は体重をかけすぎないように馬乗りになる。

そして肩甲骨辺りに手を置いた。


「覚悟してね?」


「ふぇ……?んっ……!?」


魔力を動かす感覚はシャーロットにさっきやってもらった治療法?で大体掴んだ。

今の僕なら自由に魔力を動かすことができる。


「はぁ……はぁ……熱いのが入ってきてます……」


「まだ魔力を入れただけだよ?今から動かすから」


「ふぇっ!?ちょ、ちょっと待ってくだ……んっ……!」


僕はシャーロットの静止を待たず魔力操作を始める。

シャーロットの魔力の流れを感じそれを無理しないようにゆっくりと僕が主導で動かし始める。


「どう?」


「は、はい……自分の身体が自分のものじゃなくなっていくみたいです……」


「それじゃあラストスパートと行こうか。もっと速くするね」


僕は少しずつ魔力の速度を速めていく。

もう魔力を手足のように動かせるようになってきた。


「あ、アランくん!そんなに(魔力循環を)激しくされたら……壊れちゃいます……!」


ちゃんと限界は見極めている。

シャーロットは聖女としての魔法を使えるだけの魔力回路の強度を持っている。

これくらいは全然大丈夫なはず。


「……!?……〜〜っ!!!」


突如シャーロットの腰がビクンと跳ね痙攣する。

息も荒くなっており顔も蕩けていた。


「どう?よかった?」


「も、もう……ダメです……」


そう言ってシャーロットは力尽きてしまった。

……やりすぎたかも。



──────────────────────

一応言っておきますが治療です。

シャーロットへの施術も魔力回路が柔軟になり魔法への変換効率が良くなるという効果があります。

しかも今回でアランは魔力の動かし方を知り特訓にもなっています。

とても素晴らしい治療法なんです(圧


一旦ここで一つの区切りとし明日は☆2000感謝SSを出します。

明後日から新章?が始まります。

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