2話 喜べない再会
キーヴァ・オドハティとヴィンスは、同じ孤児院で育った兄妹である。
兄妹と言っても血の繋がりは無く、先に孤児院にいたヴィンスが、後から来たキーヴァの世話をしていたという関係である。
だが、それも随分昔の話だ。
「元気そうで良かったよ」
「あはは……お兄ちゃんも……元気そうだね……」
「何年ぶりだ、5年ぶりか?」
「孤児院で見送って以来……かな……」
「そういえば今年、成人認定だろ。シネイド先生と話しているか?」
「う、うん、もっちろん‼」
「へぇ、何処で働くんだ?」
「え、えっと……それは……」
キーヴァの目が泳いだ。
しきりに指で唇を触る。
ヴィンスは、これが嘘をついている時のいつもの癖だということを理解していた。
少し前かがみになり、語気を強め、キーヴァに問うた。
「……本当はどうなんだ?」
「……えっと」
「本当のことをいってくれるよな?」
キーヴァは一点を見つめ、額から汗を流している。
そして、観念したように大きく息を吐いた。
「ごめんなさい……孤児院から逃げました」
「……そうか」
「もしかして、知ってた……?」
「年に1回は孤児院に顔をだしてるからな」
「そっか……最初からバレバレだったんだね……」
「……せめて一報くらい寄こしてくれ」
「……ごめんなさい」
ヴィンスは立ち上がり、キーヴァが座るベッドに近づいて行く。
「シネイド先生からお前がいなくなったと聞いた時の俺の気持ち、分かるか?」
「……ごめんなさい」
「リストでお前を見つけた時、俺がどれだけ嬉しかったか分かるか?」
「……」
ヴィンスはキーヴァを優しく抱きしめた。
「心配したんだぞ本当に」
「ごめんなさい……」
キーヴァーも優しく抱きしめ返した。瞳に僅かな涙を浮かべながら―――
「で、だ」
ヴィンスは素早くキーヴァを引き剥がし、書類を机に叩きつけた。
屈託のない笑顔を浮かべながら。
「ちゃーんと全部答えろよ?」
「……はい」
そこから長い取り調べが始まった。
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