4話 明かされる計画の全容
「これなら、『魔王』ディオとマリスの目的が一致し、協力関係が生まれるはず」
仮説でしかない。
証拠も足りない。
だが、可能性だけで言えば――
「全然あるな……」
「そして、今もなおその計画は動いている……順調に――」
計画は進み続けている――
だとしたら――
「次に狙うのは……王都!!」
キーヴァの回答に、アシュリンは指を鳴らして返答した。
「その通り」
しかし、キーヴァにはまだ疑問がある。
「王都を狙うとしてもどうやって……結構警備固いよあそこ?」
「決まってるじゃない。カガヤキの魔法は人間を爆弾に変える魔法……
そして、魔王領から帰ってきた人間がまだ二人いる」
「エーデル・クラークとギアロイド・サリバン……」
ヴィンスの回答に、アシュリンは頷いた。
「そして、その二人は今のところ『本物の勇者』を名乗ってるのよね?」
ああ、なるほど――
ヴィンスは計画の概要を完全に理解した。
『偽物の勇者』騒動を起こす。
当然、全員を尋問する。
アイゼンハウアーが違うと見破られるのは織り込み済み。
しかし、爆発させることで裏の存在を匂わせる。
調査を急ぐ。
ノアという大英雄を『勇者』だと誤認する。
式典を行っている最中に、カガヤキの魔法が発動。
混乱の中に進行し、講和。
これが、正規の計画ルート。
例え、ノアが見破られたとしても、消去法でエーデルかギアロイドが『勇者』に決定される。
そうなっても、問題ない。
どちらだとしても、式典を行っている最中に、カガヤキの魔法が発動する。
だからつまり――
「そう、『勇者』なんていなかったのよ、最初からね」
アシュリンの言葉は、ヴィンスの心に深く刺さった。
だが、なぜだろうか――
今度は心が折れなかった――
その代わり、心に響いていたのはアシュリンの、あの言葉――
『貴方が希望になりなさい、ヴィンス・バーン』
ふと、アシュリンの顔を見た。
アシュリンは――笑っていた。
「さぁ、どうするの『勇者』様?」
――何とも意地悪な質問だ
ヴィンスはそう思った。
いや、アシュリンは魔族なのだから当然か――
「……行くぞ」
ヴィンスは立ち上がり、荷物を手にとってテントを出た。
不思議と笑みがこぼれた。
その後ろにキーヴァが――そして、アシュリンが続いた。
「向かう先は王都アズリンだよね、お兄ちゃん?」
嬉しそうにキーヴァが聞いてきた。
「いや、アズリンには向かわない」
「え」
「その代わり、キーヴァには伝令をお願いしたい」
「どこに?」
「西部クレアモリス城塞と、ロスコモン城塞だ」
そこにはエーデル・クラークと、ギアロイド・サリバンがそれぞれ留置されている。
「どうやら閃いたようね、副書記官長様」
アシュリンは、笑みを浮かべて言った。
「ああ、勝利の一手……いや、逆転の一手がな」
ヴィンスは笑っていた。
アシュリンも笑っていた。
「……全然分かんない」
キーヴァだけは、ちょっと分からない様子だった。
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